プログラミングスクール卒が就職できない理由の考察
概要
本記事ではプログラミングスクールの卒業生が(優良企業に)就職できないのかを考察する。
ここで「スクールの卒業生」を「CSの学位を持たず、IT業界未経験の成人」と定義しておく。また、「プログラミングスクール」は「無認可校であり、Webアプリ作成の技術を教えるスクール」と定義する。
プログラミングスクールの質は多種多様だと思われるが、仮にこのスクールでWebアプリ作成の技術が身に着いたとしても、就職は難しいとよく言われる。
私はただのエンジニアであり人事ではないが、現場のエンジニア視点から何故スクール卒を避けたいのかを考察する。
優良企業とは?
ただ、スクール卒が就職できないかといわれると、必ずしもそうではない。
場所を選ばなければもちろん就職可能だ(ブラック企業に)。
しかし、スクールに通う人たちはブラック企業ではなく優良企業に勤めようと努力しているだろう。
一般的に、多くの人が想像しやすい優良企業は以下の2つがわかりやすいだろう。
1. 大手SIer
2. 高い技術力を持つベンチャー
1は大規模な開発に関われることや安定した賃金が魅力だし、2は自分たちの理想とするサービスを開発していく点が魅力だ(実際はどうであれ)。
しかし、この2つはまずスクール卒を採用することはないと考える。
派遣や協力会社として入り込むことすら難しい。
その理由は以下だ。
大手SIerの場合
まず、大手SIerの主な業務はWebアプリのプログラミングではない。この時点でWebアプリ作成に特化したスクール卒はアンマッチだといえるだろう。
大手SIerの業務は、顧客の必要なシステムを共に考え、そのシステムを納入し、適切に運用していくことだ。その中でWebアプリ作成の技術は非常に小さい割合しか占めていない。
では、大手SIerで何が求められるかと言われれば、色々だ。
金融や流通などの専門業務知識があれば非常に優遇されるし、プロジェクトの管理経験があっても喜ばれるだろう。もちろんセキュリティやネットワークに対する深い知識もいい。
しかし、「フレームワークを利用してある程度のWebアプリが作れる」というのは能力は不要だ。役に立つ場面がほとんどないからだ。
さらに言えば、その程度の知識は大部分の人が持っているともいえる。
また、身もふたもないことを言ってしまえば、大手は大抵学歴でフィルタがかかるため、書類選考すら通らないことを覚悟した方がいい。
高い技術力を持つベンチャー
こちらは大手SIerよりさらに希望がない。
そもそもベンチャーは資金に余裕がない...という大前提がある(そうでなければベンチャーとは呼べない)。
資金に余裕がないということは無駄な金を使えないわけであり、教育が必要な人員(スクール卒)を取っている余裕はないということだ。
さらに資金に余裕がないため、即戦力が求められる。この即戦力というのはWebアプリをすぐに作れる人のことではない。そもそも、数か月のスクールで身に着く技術で作成したアプリで金を稼げるほどは甘くない。
そのベンチャーがどのような方向性の戦略を立てているかによるが、人員は機械学習、IoT、画像処理など何かの専門家しか必要ないことは容易に想像できるだろう。
そして、これらの専門家はほとんどの場合、Webアプリの作成程度なら片手間にこなしてしまう人たちばかりだ(少なくともスクール卒が数か月で身に着けた技術であれば)。
ベンチャーという即戦力以外は必要ない企業では、スクール卒が活躍できる隙間はないと考えた方がいい。
誰が競争相手なのか
ここで大手SIerやベンチャー企業に入るのが難しいことを説明したが、根本的にいえば競争相手に負けているからに他ならない。
ここでいう競争相手はCSの学位を持つ学生や、現場経験豊富な中途採用者だ。
その中でも優良企業には上位層が集まると思った方がいい。
この上位層にスクール卒が勝てる要素は何か?
年齢?新卒には負ける。
技術?数か月頑張った程度では影も踏めない。
経験?現場経験0が勝てる訳がない。
やる気?みんなやる気は高い。
.....つまり、勝てる要素が何もない。本当にない。
だから、スクール卒は優良企業にはほとんど入れないという結論になる。
どこに就職するべきか
ブラック企業。
言い方を変えれば、勝てない競争相手が応募しない企業といえる。
これは非常に当たり前のことだ。偏差値がまったく足りない大学を受ける高校生はほぼいない。
だから、まったく理想としていない職場でも、その中で業務履歴を積むしかない。逆転ホームランは、そのために十分トレーニングを積んだものにしか打てない。
そもそもスクールに行かない
さらに根本的なことをいえばプログラミングスクールに行くべきではない。
確かにWebアプリ作成の技術は得られるかもしれないが、それだけだ。
学歴も業務履歴もつかない。
多くのインフルエンサーは「技術力が高ければ生きていける」と唄うが、それは技術を示せる場に立たせてもらえた場合に限る。
スクール卒はその場に立たせてもらうチャンスが一切ない点を考えよう。
そして、披露できない技術を修めるために数か月の月日と、数十万円の金を払うのは非合理的だ。
とにかく、IT業界は「フレームワークを使って簡単なWebアプリを作れる人材」を一切求めていない。それらは業務で役に立つこともあるが、中心的な業務ではないからだ。
どうしてもIT業界に行きたい場合
どうしても他業種からIT業界に来たい場合は、元職の専門性を役立てる形でIT業界にくるといい。
例えば金融の専門家であれば、関係のある企業に転職可能であり、中に入ってから研修で十分IT技術を学ぶことができる。
もしあなたが何の専門性もなければ、専門学校や大学からやり直すべきだ。
もしくは誰でも入れるブラック企業から少しずつステップアップしよう。
未経験者の競争相手は10年以上ITに関わっている専門家ばかりであり、その差を数か月程度で埋める....なんて妄想は早いうちに取り払ってほしい。
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