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<ラグビー>2024年シーズン(3月第一週)

(どうでもよい「話の枕」です。関心ない方は飛ばしてお読みください。)

〇 映画『サウンドオブミュージック』と『大脱走』で撮影された頃のスイスアルプスの風景は、映画の中に記録された映像では最も美しいものの一つだと思う。物語の進行とは無関係に、登場人物の背景に映る山々や村の風景、そして夏の緑あふれる田園は、この二つの作品が第二次大戦時の物語であることから、戦時の暗さとは正反対に、むしろより一層輝きを増すように、明るく美しく生き生きとした自然の息吹を伝えている。そういう点で、この二作の主人公は、実はスイスアルプスとその周辺風景だったと言っても過言ではないと思う。
 
〇 ナチスの軍装をデザイン・製造販売したヒューゴ・ボスは、今では免責されてスーツメーカーとして有名になっている。しかし、そのユダヤ人などを強制労働させ、劣悪な環境で死に至らしめた歴史は、決して消えることはない。いくら「ファッションだから」、「かっこいいから」という理由でも、例えばイスラエルでヒューゴ・ボスを販売したり、着用したりすることは許されない。これは音楽の世界でも同様で、イスラエルでは偉大なリヒャルト・ワーグナーの曲は演奏禁止になっている。そして、こうした「負の歴史」を忘れ去るまでには、さらに数百年かかることだろう。
 


1.リーグワン(第8節)結果

三重ホンダヒート21-50横浜キャノンイーグルス


 イーグルスSO田村優のまるでジョナサン・セクストンのような円熟のスキルが目立った一方、ヒートのデュフェンスが機能せず、前半で0-26と勝負が決まる。ヒートは後半に21-24と健闘したが、このディフェンスではディビジョン1チームには通用しない。

花園近鉄ライナーズ32-50ブレイブルーパス東京


 クーパー対モウンガの、ワラビーズ対オールブラックスのSO対決。ブレイブルーパスが圧勝すると予想したが、時折雪が舞う中で、ライナーズがクーパーの好リードで大健闘し、後半68分には32-31と逆転した。しかし、その後ブレイブルーパスに3連続トライを取られて、最後は完敗した。ライナーズNO.8セルホゼとブレイブルーパス23番セタ・タマニバルの二人がアタックで奮闘していた。

静岡ブルーレヴズ19-45埼玉ワイルドナイツ


 ワイルドナイツは堀江翔太が先発でキャプテン代行。昨シーズンはワイルドナイツが珍しく負けたこともあり、ワイルドナイツの苦戦が予想されていた。試合は、予想通りにブルーレヴズが14分までに12-7と先行したが、その後ワイルドナイツが3連続トライして、前半を12-26で折り返す。後半に入ってからも、ブルーレヴズを1トライに抑える一方、ワイルドナイツは3トライを加えて実力通りに完勝した。

 ブルーレヴズは、ラインアウトのミスが影響した他、取ったトライも相手のミスやラッキーなプレーからのものであったため、チームとしての力の差が得点にそのまま表れた結果となった。ワイルドナイツは、LOルード・デヤハーとCTBダミアン・デアレンデの南アフリカコンビが獅子奮迅の大活躍をした。なお、ブルーレヴズがクワッガ・スミス不在を嘆くのは、それだけワンマンチームであったことの証拠であり、チームとして機能していないことを認めることになってしまうだろう。「誰それがいれば・・・」は、安易な弁解でしかない。

東京サンゴリアス62-0ブラックラムズ東京


 サンゴリアスHO堀越康介がハットトリックでMOMになるなど、終始サンゴリアスがトライを重ねた一方、ブラックラムズを無得点に抑える圧勝だった。ブラックラムズはSOに入ったアイザック・ルーカスが良いランニングを見せるも、その後のプレーが続かないため、アタックにリズムを出せなかった。一方ディフェンスも崩壊しており、この症状は重そうだ。サンゴリアスは、この勢いでトップ4を維持し、優勝を目指したい。

スピアーズ東京ベイ浦安28-34相模原三菱ダイナボアーズ


 ダイナボアーズが先週のブルーレヴズに続き、またもや格上を粉砕した。前半は17-17の同点で終え、後半も点の取り合いとなったが、69分のLOウォルト・スティアーカンプの二つ目のトライで29-28と逆転。さらに72分にはダメ押しのトライを挙げて、そのまま逃げ切った。MOMになったダイナボアーズWTBベン・ボルドリッジの、スピアーズCTB立川理道のワンパターンのキックパスをインターセプトしたトライが勝利につながった。また、NO,8ジャクソン・ヘモポ、2トライのスティアーカンプがよく働いた。スピアーズは、HOダン・コールズとLOのJD・シカリングが獅子奮迅の活躍をしたが、勝利に結びつかなかった。昨年の優勝はフロックだったと言われても仕方ない内容となった。

神戸スティーラーズ59-22トヨタヴェルブリッツ


 前半は15-12と競ったものの、後半は42-10と圧倒して、スティーラーズが大勝した。特に7番FLアーディ・サヴェアが4トライの大暴れをし(以下、4.(1)のおにぎり効果か?)、SOブリン・ゲイトランドも良いランニングで2トライを記録し、チームに一層馴染んできたことを示した。また、LOブロディー・レタリック、SH日和佐篤、FB山中亮平らのベテラン勢の地道な貢献が大きかった。一方ヴェルブリッツは、SHアーロン・スミスとSOボーデン・バレットという黄金のHB団のプレーに、周囲が馴染んでいないことに加え、前半早々の反則の多さや、スクラムで劣勢だったことが勝敗に影響した。

2.スーパーラグビー第二週結果

 今週は、メルボルンに全12チームが集合して対戦するスーパーラウンド。オーストラリアでのスーパーラグビー人気新興のために企画されているもの。

ハイランダーズ29-37ブルーズ

 ブルーズNO.8ホスキンス・ソツツが「ジンザン・ブルックの再来!」と称賛される、ハットトリックの大活躍をした。ハイランダーズも、SHフォラウ・ファカタヴァ、SOリーズ・パッチェルの好プレーからの良いアタックが多くあったが、勝利は遠かった。

レベルズ48-34フォース


 お互いにディフェンスがザル状態の乱打戦。実力通りにレベルズが勝利した。レベルズSOカーター・ゴードンのインターセプトからの80m独走トライが良かった。

モアナパシフィカ39-36フィジードルア


 大接戦をモアナが勝利した。モアナは前半を15-8とリードしたが、後半55分にレッドカードで14人の劣勢になった。しかし、62分までに36-22とリードしてこのまま完勝かと思われたが、68分のシンビンで13人となってしまったため、ドルアに2トライを連取されて危機的状況に陥った。その後はなんとか逃げ切ることができたが、もし延長戦になっていたらわからなかった。両チームともに、ディフェンスが弱いのではなく迫力あるアタックでトライを取り合う、楽しいゲームだった。

クルセイダーズ24-37ワラターズ


 不調が続くクルセイダーズは、前半を10-23とリードされ、後半55分に二枚目のシンビンで、17-30まで離されてしまう。結局67分までに17-37とリードを拡げられ、73分にトライを返したものの時間切れとなってしまった。クルセイダーズは、開幕のチーフスに敗れた後、オーストラリアのワラターズにも負けてしまい、スコット・ロバートソンとリッチー・モウンガの不在が大きく影響している。ワラターズは、昨シーズンの王者に勝利して自信をつけられただろう。

チーフス46-12ブランビーズ


 先週クルセイダーズに勝利したチーフスが、得意とするアタックでブランビーズを圧倒した。SOダミアン・マッケンジーは縦横無尽のアタックをリードし、自らもトライを取るなどオールブラックスの正SO取りに向けて猛烈にアピールした。負けたブランビーズは、WTBコーリー・トゥールが良いトライを取るなど奮闘したが、総合力で及ばなかった。

ハリケーンズ38-33レッズ


 ハリケーンズSHジョルディ・フィルヨーンは、NZU20代表からスーパーラグビー入りしているが、彼の父(1970年代)と祖父はともに南アフリカ・スプリングボクスのSHだった。一方父ジョッジーは、2000年にハリケーンズでプレーするとともに、2007年にマナワツでもプレーしたが、この時からフィルヨーンのNZとの縁ができた。そして彼は、家族同士が友人であるアーロン・スミスからのサポートも得て、母国であるスプリングボクスではなくオールブラックスを目指している。

 なお、オールブラックスのSH候補NO.1のキャメロン・ロイガードは軽傷により初戦はリザーブになったが、この試合から先発に戻った。また、アキレス腱の怪我による長期離脱から復活したTJ・ペレナラは、第三週から復帰予定となっている。それまでの間、フィルヨーンはベテランのリチャード・ジュッドとの争いになる。また、12番CTBジョルディ・バレットが100キャップを達成した。

 ハリケーンズは、前半を19-19で終えた後、80分経過した後も33-33の同点となったが、その後のゴールデンポイントを87分に取って、接戦に終止符を打った。SHキャメロン・ロイガードとFBルーベン・ラヴが、それぞれ2トライを記録したが、ジョルディ・バレットが56分にシンビンからレッドカードになったのが痛かった。レッズは、最後の20分間を数的優位に戦いながら、勝ち越すことができなかった。

3.ロサンゼルスセヴンズ結果

 これまでのプレー振りを見ていると、昨シーズンまでのようなスキルとスピードでトライを取るのではなく、個々の選手のフィジカルの強さでトライを取るシーンが増えているように見える。これは、セヴンズのゲームとしては良いことではない。昔、NZなどがブレイクダウンの強さで相手を圧倒したことがあったが、次のシーズン以降はブレイクダウンでのジャッカルやオーバーに対して非常に厳しいレフェリングをするようになり、現在は15人制と比べられないほどブレイクダウンでの攻防戦がなくなっている。来シーズンから(もしかするとオリンピックから)レフェリングが大きく変更されるかも知れない。
 
 というわけで、NZの女子は順当に優勝(連覇)したが、男子は9-10位決勝でサモアに負けて9位になるなど不甲斐ない戦いが続く。セヴンズの世界で王者として君臨したトマシ・ザマ監督の指導が上手くいっていないようだ。また、NZチームには特別に厳しいレフェリングがされる傾向があり、これに対してストレスを溜めてさらに反則をするプレーが見られるので、ここは過去の成功したチームのように忍耐力を持って対応する必要がある。

 男子決勝は、フランスが21-0で英国に勝ち優勝するという、パリオリンピックを控えて北半球チームが大喜びする結果となった。また、準決勝にはアイルランドとスペインが進出しており、セヴンズを支配してきた南半球勢が不在となる珍事となってしまった(それもWRの思惑通りなのだろう)。

 一方女子は、日本代表は9-10位決勝で南アフリカに勝利して定位置化している9位となった他、完全復調したブラックファーンズセヴンズは、絶対的エースのポーシャ・ウッドマンウィクリフの力強いトライとその後継者であるミカエラ・ブレイドのハットトリックで決勝のオーストラリアを圧倒して優勝し、セヴンズらしい素晴らしいゲームを見せてくれた。男子はおかしくなってしまったセヴンズだが、女子は本来のセヴンズらしいゲームを維持しているのが嬉しい。

ミカエラ・ブレイド

4.その他のニュースなど

(1)アーディ・サヴェアが、コンビニおにぎりの食べ方をマスターする

 神戸スティーラーズでプレーするオールブラックスのアーディ・サヴェアは、家族とともに日本の生活を楽しんでおり、神戸のみならず大阪や奈良観光にも出かけている。そうした中で、ローソンで朝食としてツナ・マヨネーズおにぎりと卵焼きを買うのが好きらしく、食べている風景をSNSにアップした。しかし、最初のものはごはんと海苔を別々にしてから巻いていたため、誰かから包んであるラップを数字の順番に従って外すことを教えてもらい、次の投稿では見事にラップを外している姿を見せている。

(注1:おのぎりのラップを綺麗に取るのは、日本人でも知らない人が意外と多い。)
(注2:なお、サヴェアが「オムレツ」といって食べている卵焼きは、商品名を見ると「だし巻き卵」とあるのでオムレツとは違う日本独自の卵料理だが、だしの旨さは世界一なので、大好物になったと思われる。また、ツナマヨのおにぎりと唐揚げ、そして日本の世界一旨いマヨネーズを使った商品などは、スポーツ選手に限らず世界中から日本を訪れた人たちに絶賛されている。)

(2)ルーマニアラグビーの復活

 ルーマニアは、1924年のパリオリンピックで実施したラグビー(15人制)で銅メダルを獲得した。その後、強固なフィジカルを基盤にしたセットプレーの強さで、1960年代から80年年代までは、世界の強豪と渡りあう強さを持っていた。しかし、ラグビーのプロ化に伴う進化に取り残されて弱体化が進み、今やティア2チーム同士との対戦でも苦戦している。近年は、元イングランド代表アンディ・ロビンソンを監督に招聘するなど、復活に向けて試行錯誤しているが、国民からの根強い人気に応える日はまだ先になりそうだ。

(3)NZと南アフリカの間で、従来の遠征復活構想が浮上

 RWCが1987年に開始されるまでは、ラグビーのテストマッチは第三国で開催されることはなく、どちらかのチームが対戦相手の国へ渡航し、テストマッチ三試合を行う他、控え選手主体のチームが地域のクラブチーム(州代表レベル)と対戦する長期の遠征が通常だった。一方、現在もこの形態を維持しているのは、四年ごとに結成されるブリティッシュアンドアイリッシュ・ライオンズの南半球遠征のみとなっている。

 今般、NZと南アフリカの両協会は、この従来からある遠征を両国の間で復活させ、まず2026年にNZが南アフリカに渡航し、2030年に南アフリカへ渡航するアイディアが浮上したことを認めている。一方、毎年開催されるオーストラリアとアルゼンチンを含めたザ・ラグビーチャンピオンシップには影響しないようにしたいとしているため、スケジュール調整など多種多様な課題をクリアーすることが必要となっている。

(4)パシフィックネーションズカップ開催要領が発表

 サモア、フィジー、トンガに、日本、カナダ、アメリカを加えた六ヶ国によるパシフィックネーションズカップが、久々に復活した。決勝トーナメントを日本とアメリカで交互に開催する予定となっており、今年は日本開催となった。

 以前開催されたとき(1990年代)は、まだ日本が弱かったため、どのチームと対戦しても勝つのが難しい試合が多かったが、現在の実力から見れば、日本にとって強敵となるのはフィジーぐらいしかいないのではないか。また、最近弱体化が著しいアメリカとカナダ両チームの活性化・強化につながることが期待される。

(5)ガルビシはキックのやり直しができた

 ラグビープラネットでは、先のフランス戦で、ノーサイド直前の勝ち越しのキックをボールが倒れてために失敗したイタリア代表SOパオロ・ガルビシについて、キックのやり直しができたと指摘している。

 それによると、規則20.12、8.22及び8.27によれば、PGの終了はキックが成功したときとなっており、それまで相手側選手はPK地点から10m下がらねばならない。一方、ガルビシのPGは、60秒以内のキック時間において、ボールをリプレイスする時間があったため、リプレイスしたのちに時間が少ないため焦って蹴り失敗した。

 しかし、ガルビシがキックする動作に入る前に、フランスの選手数人が10m以内に接近していたので、レフェリーはガルビシにキックのやり直しまたは新たなPKを与えるべきであったとしている。もし、正当にルールが適用されていれば、この試合でイタリアは勝利を得ていたことだろう。

 また、元レフェリーのウェイン・バーンズとナイジェル・オウウェンスの二人も、ガルビシのキックに際して、フランスの選手は違反であるチャージを明確にしているので、ガルビシはキックのやり直しができたと指摘した。そしてバーンズは「イタリアがキックチャージ違反をアピールしなかったので、レフェリーは見逃した」とコメントする一方、オウウェンスは「イタリアはとてもアンラッキーで、フランスはとてもラッキーだった」と引き分けの結果に疑問を呈している。

(6)スーパーラグビーで最新マウスガード(マウスピース)を試行

 今期のスーパーラグビーでは、脳震盪予防のために開発された最新のマウスガードを使用している。これは、着用している選手の状況がグランドに待機している医師にブルートゥースを使って伝達されるもので、従来のものより早期かつ容易にHIA(脳震盪診断)ができるとして採用されている。なお、選手に着用義務はないが、従来通りのマウスガードを使用した場合は、早期診断はできない不利益を容認しなければならない。

 一方、先般のチーフスのゲームなどでは、ブルートゥースによる情報伝達がうまくいかない場合や、選手自身がまったくダメージの自覚がない場合など、HIAの適用が早すぎるケースが散見された。そのため、この新しいマウスガードの使用を疑問視する声も出ているが、選手の福利厚生という観点からは、しばらく試行錯誤を続けることが必要だと見られている。

(7)ジョニー・メイは、エディー・ジョーンズ以降イングランドのアタックが劣化したと指摘

 イングランド代表WTBのジョニー・メイは、イングランドの成績が芳しくないのは、エディー・ジョーンズ監督時代から現在のスティーヴ・ボーズウィック監督まで、チームとしての練習をセットプレーとディフェンスに偏重して行っており、アタックを練習していなかったことが原因だと指摘している。

 メイによれば、勝利のためにはセットプレーとディフェンスが重要であるのは理解するが、一方前監督ジョーンズのアタックは、フィジカルを武器とした衝突(コリジョン)ばかりであったため、良いものになれなかった。そして、そのままボーズウィックに受け継がれているのが、現在イングランドが不振である原因であると指摘して、ジョーンズ前監督時代からの負の遺産を強調している。

(8)WRは、ゲームのスピードアップなどを提言

 WRは、先般ロンドンでゲームの在り方に関する会合を開き、以下の五つの提言を行った。共通するのは、ゲームのスピードアップに伴うさらなるファンの拡大となっている。

1.スピードアップと一貫した流れ
 スクラム等の組み直しの制限、キックに対するショットクロック(時間制限)の適用、スクラムハーフのプレーできる範囲を拡大することで、ボールリサイクルの迅速化などを行う。
2.ゲームを見る機会の多言語化
 多言語化などの恒常的な取り組みを行うことで、世界中の多くファンがゲームを楽しめるようにする。
3.女子のゲームのファン拡大
 女子のゲームをより良いものにするとともに、ファンを拡大する。
4.選手の福利厚生
 ブレイクダウンでの危険なプレー(クロックロール:首を掴んで投げ飛ばす等)を排除するなど、選手の福利厚生に留意する。
5.規律適用方法の再考
 ルールの適用については、合理性・一貫性・ファンの理解増進に努める。


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