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【無料】兵動・小籔のおしゃべり一本勝負に話芸の真髄を見た

2020年10月24日。両国国技館にて公開収録が行われた兵動・小籔のおしゃべり一本勝負。

すべらない話でMVSを3度取った
お二人によるシンプルな話芸の一騎打ち。

とにかく、2人でステージに立ってひたすらしゃべる。
基本的には、ただそれだけの潔いリングなのだが

今回の舞台は、あの両国国技館。
おごそかな空気と独特の敷居の高さ。

国技館…

この兵動・小籔のおしゃべり一本勝負というイベントを行う上では、ある意味最適な場所とも言える。

兵動さんと小籔さん。
このお二人がおしゃべりのエキスパートであることを知る人は多いと思いますが
実際は、ただの話巧者なだけじゃない。
絶大なる安定感と共に、格式高い職人の腕を持つ。

『言葉の重み』と『確かな技術』
言葉の一つ一つに奥があり、話芸の一つ一つに匠の技がある。

ゆえに国技館が似合う。
人気先行のポップスターでは笑いのステージで国技館を背負いきれない。

以前、関西人と関東人にまつわるこんな記事を書いたのですが…

この中で、『松紳』という島田紳助さんと松本人志さんが2人でやられていた番組について触れている。

ちなみに松本さんについて書かせていただいた記事と
紳助さんについて書かせていただいた記事…

この2つの記事は途中から有料になりますが
よろしければご覧ください。

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こういった松紳のように、2人だけでトークをする形態の番組やイベントはこれまでも数多く存在してきた。

古くは鶴瓶・上岡パペポTV。
笑福亭鶴瓶さんと上岡龍太郎さんが2人きりでトークを繰り広げる伝説的番組。

当時はまだ私も小さく、リアルタイムで観た記憶はほとんど残っていないが、大人になって観ると改めてその凄さを体感できる。

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この組み合わせの妙とバランス。
鶴瓶さんがふらりふらりと寄り道したエピソードを放り込み、上岡さんがこねくり回した理屈で斬り込む。

時代も違う。今とは芸人自体の立ち位置も違う。
だが、それぞれ異なる個性の融合がそこにはあり、圧倒的な求心力があった。

鶴瓶さん、上岡さんのお2人がステージに立ってトークするだけの番組だが、どこか狂気にも近い中毒性とテレビで戦うプロの気品に溢れていた。

「テレビがおもしろかった時代」
昨今、そんな言われ方をすることも多いが
まさしくテレビがおもしろかった時代を象徴する1つのテレビ番組。

そして、そんなレジェンドの2人が組んでトークしていく流れの先にあるのが松紳。
この番組は『龍と虎の甘噛み』だと以前の記事で例えているが、この『龍と虎の甘噛み』を継承したのが兵動・小籔のおしゃべり一本勝負ではないだろうか。

パペポTVに関しては、お二人の話がクロスしていく部分に軸があり、お互いに技をかけ合う面白さがあった。
それはさながらプロレスとも呼べる見せ方。
お互いに技を繰り出し、お互いが相手の技にもかかりながら話を前に進めていく。
そこには相乗効果というものが分かりやすく存在する。

しかし、松紳にしてもおしゃべり一本勝負にしても
2人のトークがガッツリとクロスしていく部分は意外と少ない。
そのかわり、お互いの得意技を交互に繰り出しながら鋭く噛み合う瞬間が垣間見える。
決して本噛みではなく甘噛み。
相乗効果で見せていくと言うよりは、匠の技の本領発揮を随所随所に挟み込んでいく面白さ。

その龍と虎の卓越した技の応酬に酔いしれるのが正しい楽しみかただと勝手に思っております。

両国国技館での一本勝負…
兵動さんの繊細かつ完成度の高い話芸と小籔さんの思考や信条などをベースにした爆発力溢れる話芸がぶつかり合う。

そこにあるのは圧倒的なスキルと積み上げてきた芸の力。
2人の登場時の佇まいから、国技館に本物の芸人だけが醸し出せるオーラが充満する。
スーパーソーシャルディスタンスとして実施された1万人キャパの国技館に300人の観客。
普通のお笑いイベントとは何かが違う、少し張りつめた空気。

1つだけ言えることは
両国国技館で行われる大相撲が神事だとすれば…
今、笑いの神事を託すことができるのは
兵動大樹と小籔千豊以外にはいない。
それほどまでに格の高さを感じる。

今回、国技館で行われた意味合いは大きい。
神聖な空間に設営されたステージで人々を笑わせるためにしゃべり続ける2人。
会場負けしないだけの説得力を持ち合わせていなければ、舞台に立った瞬間に全てが終わってしまう。

その場に相応しいか相応しくないか?
一瞬で見破れてしまう恐さが、あの舞台には間違いなくあった。
ニセモノは立つことすらも許されないステージ。

今現在もコロナ禍という前代未聞の事態。
心の何処かに不安や恐怖を感じていない人などいない。
誰もがザワザワした気持ちを密かに持ちながら日々を戦っている。

そんなとき

誰だって本物が観たい。観たいに決まっている。

バチバチなクロスではなく、お互いの得意技を丁寧に繰り出す。
その1つ1つが味わい深く、きちんと胸に届いて笑える。

兵動さんの話の土台には
確かな人間力と芸の厚みがある。

小籔さんの話しの土台には
確かな教養と一本の筋が通っている。

これぞ間違いなく目利きの大人に刺さる極上エンターテイメント。

ごめんなさい。生意気なことを言います。

これを楽しめる大人になるべきです。


今回、言いたかったことはこれです。

誰も想像していなかったこんな時代です。

時間は有限。絶対に本物を見たほうがいいです。

本物の芸は、あなたの人生を豊かにしてくれます。

自らのセンスやレベルを高めれば高めるほど、人生は有意義なものになります。

グルメでも
本当に美味しい料理を見極められる舌を持っているほうが絶対に楽しいはず。
ファストフードも美味しいです。ファミレスも美味しいです。
でも、世界一美味しくはないはず。

どこの地方に行ってもファストフードで済ます。ファミレスで済ます。別に興味がなければ、それでいいんです。

だけど、グルメも笑いも人生を彩るエンタメです。
どうせ一度きりの人生なら本物を堪能したいはず。

だから

来年も何かしらの形で
兵動・小籔のおしゃべり一本勝負をやってほしい。

笑えて、暖かい気持ちになって、少し思慮深くもなれて…また観たい、また聞きたいと思える。

お笑いやエンタメは日本に数多くあれど
これほど様々な意味でハイレベルな話芸はなかなかお目にかかれません。

大袈裟に聞こえるかもしれませんが
これは今の日本に必要な笑いではないかと…

あなたのレベル上げをしてくれます。
あなたのセンスを向上させてくれます。

兵動さんと小籔さんが同じステージ上でトークを繰り広げていく貴重さ。
これを理解できる感性を持つ人は、きっと物事の本質を捉えることのできる人です。

生意気言わせていただいて申し訳なかったですが

良いものを知っている人が…

良いものを受け入れられる人が…

良いものを人生に運びこんでくれる。

その事実を私は知っています。

だから、この記事を読んでくれた誰かが
ここで記された言葉の意味を理解して
いつか意義深くなる日が来れば、私は嬉しいです。

もし、来年にでも『兵動・小籔のおしゃべり一本勝負』が行われるのなら
観に行ける地域の方は生で観に行ったほうがいいと思います。

話芸の真髄がそこにはあります。

よろしければこちらの記事も併せてどうぞ。

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