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ハンフィクション〜あったかもしれないB面の物語〜

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自分の周りで起きた出来事が カセットテープのA面だとしたら、 その裏では、自分の知らないB面の物語が 密かに巻き起こっていたかもしれない。 ノンフィクションでもなく、フィ… もっと読む
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#A面

知らない古書店が閉店しました。

就職して最初の研修は、テレアポ100件だった。 そういう会社があるらしいよ、というのはどこかの噂で聞いていたものの、都市伝説とかどこか遠くの国のお話くらいに思っていた。 まさか自分がそのお話に該当するなんて予想もしていなかった。 どうやって集めてきたんだってくらい膨大な顧客リスト。何千行もあるExcelファイルに唖然とした。 その長さを確かめるように、人差し指でマウスホイールを何度も転がした後、僕は途方もなく長い修行になることを覚悟し、1人1台支給された固定電話

いつもの店のいつもの席で。

人は、お決まりの場所があると安心する生き物だと思う。 いわゆる、行きつけ店がそれに当たるが、行きつけの店の中でもさらに局所的なベストポジションがある。 たとえば、ファミレス。入り口からまっすぐ進んだ右側のドリンクバーから1番近いソファ席。地元のデニーズで言えば、そこがぼくのお決まりの席だ。 空調の効き加減が絶妙で、溜まった仕事を片付ける時や読書をしたい時、お腹の弱いぼくでも長時間居座ることができる席がそこなのだ。 ぼくの場合、居心地良さは空調設定が第一条件だけれど、居

おねだりライスペーパー

我が家には、 子どもに嬉しいルールがあった。 誕生日には本人の食べたいものを 何でもリクエストしていいよ、というもの。 いつも年功序列という言葉を 巧みに使って献立を支配している兄と姉が、 末っ子である私のリクエストを 受け入れてくれる日であり、 いつも冷凍食品という武器を 巧みに使って献立を成立させている母が、 面倒くさい私のリクエストに 手間をかけて応えてくれる日である。 私は、このルールが施行される 自分の誕生日が大好きだった。 そして毎年、 我が家の食卓