『だから古典は面白い』【基礎教養部】

本記事は、J LAB基礎教養部の活動の一環で作成されたものです。

だから古典は嫌いなの

この本を選んだ理由は、僕は古典が嫌いだからである。

古典といっても、本書に紹介されている『マクベス』とか『ファウスト』とかではなく、中学・高校で学ぶような、日本の古典である。

僕は中学の頃から社会科や古文・漢文、英語が苦手であった。単純に暗記量が多いからというのが理由で、理科も生物が苦手だったので、高校では必然的に物理選択の理系にならざるを得なかった。

高校からは英語が比較的得意になった。覚えないといけない単語や文法は中学の頃から増えたはずなのだが、だんだんと英文が読めるようになってくると、英語長文の内容が面白いと感じるようになったのだ。

英語で情報収集ができるようになったことで、英語の学習はそれなりに好きになったし、大学で外国書購読をするときもあまり苦戦はしなかった。

(なおリスニングは全くできない)

一方で、社会科と古典だけは好きになれなかった。特に歴史と古文。こいつらは僕の成績を下げる足枷だった。

どうも、これらを学んでどう役に立つのかがわからなかったのだ(考えたくなかった)。

まあ、100歩譲って、歴史を学べば時代の流れを予測できる(本書でいう、背後にある運動法則を把握できれば来るべき未来がわかる)としても、古典でいったい何を学べるのかね、と思っていた。

この本を読めばそれを教えてくれるのかという期待を込めて、本屋で手にし、そのまま本棚に戻し、Kindleで買った。


まあちょっとは読んでみようという気に

この本を読んで、「まあこの本で紹介されている古典くらいは読んでもいいかな」と思うようになった。

聖書をビジネス書として捉えるとか、『戦争と平和』で経営論を学んだりとか、古典にそんな使い道があるのねぇと、感心した。

今まで意識してなかったが、そういえば世の中にはそんな本がちょいちょいある。『戦争論』からビジネス戦略を学ぶ、みたいな。コンビニに売っていたような気がする。

ビジネスに役立つかどうかは興味がないけれど、『ファウスト』を読んでゲーテの考えを読み取ったり、『マクベス』を読んでシェイクスピアの観察眼を学び取ったり、『戦争と平和』を読んで歴史の必然性について考察したりするのは大変面白そうだなと思った。

ちなみに、中高でちゃんと古典勉強しときゃ良かった、とも思わされた。

昨年度、完膚なきまでに失恋した僕は、どうやら女性の心の機微を捉えるのが苦手らしいということがわかった(Qちゃんがメンヘラなだけだったかもしれないが)。

もしかしたら恋愛学の勉強は、中高の古典でしておくべきだったかもしれない。清少納言とか紫式部とかが書いた古典を、「しょーもない色恋沙汰ばっかり書きやがって」と一蹴せずに、ちゃんと学んでおくべきだったのだ。


ちょっと好きな作品の話していいですか

ここから少し(のつもりだったが、結局長くなった)、僕の好きな作品『銀河英雄伝説』について語らせてくださいすみません。

銀河英雄伝説にハマって3年、いくつか作品の考察に役立ちそうな本を読んできた。

例えば『天才を殺す凡人 職場の人間関係に悩むすべての人へ』や、『戦争論』などを読んだ。

主人公ラインハルトの行動原理や、戦争の展開の仕方(戦略、戦術レベルで)をある程度学ぶことができたが、未だにヤン提督の性質の理解度が低いなと思っていた。

今回この本を読むことで、少し銀英伝の考察が進んだ気がするので、ここにメモしておこうと思う。

ヤンが相対するラインハルトの思惑を看破するシーンが多々あるが、これは『戦争と平和』の登場人物クトゥーゾフの特徴を取り入れたのではないだろうか。

というのも、ヤンは歴史に造詣が深く、歴史の法則を知っていたのではないかと思う。例えば以下の記述がある。

「陰謀やテロリズムでは、けっきょくのところ歴史の流れを逆行させることはできない。だが、停滞させることはできる」

銀河英雄伝説 第7巻 怒濤篇

ヤンはこの後テロリズムによって忙殺されてしまうのだが、これもある意味歴史の法則を理解していたが故の、当然の結末なのかもしれない。

更にもう一つ。ラインハルトは、武勲により階級がどんどん上がり指揮する部隊の規模が大きくなるにつれて、弱くなっているんじゃないかと思うことがあった。

アスターテ会戦ではヤンと互角レベルだったと思うが、それ以降、ラインハルトが相対的にヤンより弱かったのではないかと思われる。

それはもちろん、ヤンも地位が上がり、ヤン自身が指揮する戦力が大きくなったのもあると思う。

しかし、やはりラインハルトがナポレオンをモデルにしたという話から察するに、ラインハルトの天才的な戦争能力は、大部隊には適していないように思える。大規模な包囲網を作らずに、本当にヤンと互角レベルの戦力で戦うべきだったかもしれない。

で、なぜラインハルトが弱くなったかというと、指揮命令の系統があまりにも長くなったからだ。

ラインハルトはそれこそ皇帝にして陣頭に立つ、まさにナポレオンのような人だが、そのナポレオンの命令があまりにも遠く離れた前線に伝わる頃には、戦況が変化しているため、実行されることが殆どなかったそうだ。

「わが軍はイゼルローン要塞に傍受や謀略の機会をあたえることをおそれ、フェザーン経由で通信路を維持せざるをえなかったが、そこには当然、時差が生じた」

銀河英雄伝説 第8巻 乱離篇

このセリフは、ヤン艦隊が閉じこもるイゼルローン回廊を包囲する際にメックリンガーから発せられたものだ。この時メックリンガーの報告が回廊の反対側にいるビッテンフェルトたちに伝わるまでに、人類の住む宇宙圏をぐるっと一周しなければならなかった。ラインハルトに届くのですら半周であるから、いかに現状を把握した指揮命令が難しいかがよくわかる。


話を元に戻して

まあこんな感じで、好きな作品を考察するにせよ、恋愛に活かすにせよ、やはり古典は大いに役立つのだろう。

本書の第9章では、古典の変化しない核心を学び、「自分自身の選択基準」を作り上げるべきだとも言っている。

大量の、しかもバイアスのかかった情報に晒されているこの時代にこそ、フィルターバブルから逃れるための力を身につけるべきである、と。

AIがオススメする動画ばっかり見ている僕には、グサっと刺さる意見である。

まずは恋愛マスターになるために、恋チャンネルとか恋愛系YouTuberの動画の視聴をやめて、『アンナ・カレーニナ』と源氏物語でも読もうかしら。

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