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[全曲レビュー] Jonathan Richmanの「Rock'n'Roll With The Modern Lovers」を聴いた。

 いいかげん卒論を書かなくちゃいけないんだけど、メルカリで注文した参考文献の書籍が届かない、やる気が出ない、そもそも何を書いたらいいのか分からない。と、色々と問題を抱えているので、今日は諦めてNoteの方を書きます。まだ提出まで1ヶ月あるんで…

 今日紹介するのはJonathan Richmanの「Rock'n'Roll With The Modern Lovers」です。今年の8月にトルコへ旅行に行った際、イスタンブールのレコード屋でこれを買いました。値段は350リラなんで、だいたい1750円くらいです。ディスクユニオンとかで買うと結構高くつくので安く買えてよかったです。僕が持っているのはオランダの初版で音も結構良くて気に入っています。


・Johnathan Richmanとは

・僕が知っていること

ソロアルバム「I,Jonathan」のジャケット

 例によって、彼の詳しいことは僕はあまり知らないので、今回は僕が知っていることを書きます。詳しく知りたい方はWikipediaをご覧ください。

 70年代初頭、彼は自身の地元ボストンで「The Modern Lovers」を結成しました。ライブなどで徐々に人気を高めていた彼らは、71年に1stアルバム用のデモテープ制作に取り掛かります。デモテープは好評で1stアルバムの販売は約束されたものだろうと彼らも確信していました。
 しかし、プロデュースは難航しなかなかアルバム発売までに至らず、結局アルバムが発売されたのは、なんと76年になってからでした。
 また不幸なことにアルバム発売時には既にバンドは解散しており、そのためバンドとして商業的成功を納めることはできませんでした。 

1st album オリジナルジャケット

 不幸な形で幕を閉じた「The Modern Lovers」Jonathan richmanですが、現在では元祖パンクバンドとしてしっかり評価されており、さまざまなアーティストに絶大な影響力を持っています。
 例えば現クロマニヨンズ甲本ヒロトさんは良く彼らのアイコンが印刷されたT-shitsを着ていたり、ラジオやインタビューで彼らからの影響を公言していたりします。また、ハイロウズ時代にはジョナサンと対バンまでしています。僕自身も甲本ヒロトさんのインタビューで彼の存在を知りました。


色違いを3枚くらい持っている気がする。

 また海外ではUSインディの代表格Mac DeMarcoが影響を公言しています。

 そんなこんなでバンドを解散したジョナサンは、解散した後も違うメンバーでモダンラヴァースを復活させます。何枚かアルバムを出し、77年に発表したのが今回取り上げるアルバム「Rock'n'Roll With The Modern Lovers」です。 

・メリーに首ったけ

 時代が前後してしてしまうけど、90年代のジョナサンリッチマンの姿を映画内で見ることができます。その映画がファレリー兄弟が監督・脚本を務める「メリーに首ったけ(原題:There's something about mary)」です。ここでジョナサンは流しの男として出演しています。
 セリフはないですが、独特な歌声と存在感に胸打たれ、ここからジョナサンのファンになった人も多いのではないかと思います。僕もその一人です。
 
 この映画では…
・There's Something About Mary
・True Love Is Not Nice
・Let Her Go Into The Darkness

の3曲を聴くことができ、後者2曲はオリジナルアルバムに収録されているやつとは別のバージョンの録音です。個人的には「True …」のアコーステックバージョンは、アルバムバージョンよりも優しさとメランコリックな感じが強調されてて、大好きです。
 また全体的にこの映画のサントラは良い曲が多いので、機会がある方はサントラの方も買ってみるのもオススメします。

 余談ですがこの映画はコメディ映画としても、ものすごく完成度が高いと思います。豆とソーセージのくだりや7分エクササイズの話、有名なヘアジェルなど何度見ても笑えるシーンがたくさんあります。今度違う時にこの映画の感想を書こうと思います。
 
 また、監督を務めるファレリー兄弟の作品はどれも面白いものばかりで、ジムキャリーを一躍有名にした「ジムキャリーはMrダマー」や、ジャックブラック主演の容姿を題材にした映画「愛しのローズマリー」などどれも名作です。
 「赤ちゃん泥棒」「ファーゴ」「ビッグリボウスキー」を監督したコーエン兄弟にしても、「ブル〜ス一家は大暴走!」「アベンジャーズ」シリーズの監督を務めたルッソ兄弟にしても、兄弟監督には面白い人が多い気がします。不思議…



・Rock'n'Roll With The Modern Lovers

・概要

 前置きが長くなったけど、これからしっかりレビューをやりたいと思います。
 
 先述の通り、ジョナサンは第一期モダンラヴァースを解散させ、1976年に新たなメンバーで新生モダンラヴァースを結成しました。同年にアルバム「Jonathan Richman & The Modern Lovers」を発表し、1977年8月に今回のアルバムを発表します。
 
 時は77年ラモーンズやピストルズなどパンクロック全盛期の年。激しい音楽が中心の時代に、今作は真逆のサウンドで50sを彷彿させるようなロックンロールな楽曲ばかり。
 これは想像だけど、モダンラヴァースのカバーをしてたピストルズは、当時相当複雑な心境だったのではないかと思います。「お手本としていたラウドなバンドが今はこんなのやっている」と。
 
 当時のジョナサンはカリプソに傾倒していたり、演奏の音量を極端に下げたりと、自分のスタイルを1から見つめ直していた時代らしいです。またどこかのインタビューで「幼児の耳を壊すような音楽はしたくない」と発言していたのを聞いたことがあります。その結果、ドラマーのデビッドロビンソン(後にThe Carsのドラマーとなる)は今作を作る前に脱退してしまいました。

 メンバーは…
・Jonathan Richman – vocals, guitars
・Greg 'Curly' Keranen – bass, vocals
・Leroy Radcliffe – guitar, vocals
・D. Sharpe – drums, vocals
こんな感じです。

このアルバムはイギリスのアルバムチャートで最高50位をとったらしいです。イギリスでウケたのは意外…

・曲紹介

1.Sweeping Wind (Kwa Ti Feng)
オープニングはいきなり中国民謡のインストカバーから始まります。
元ネタは「刮地風」という曲らしく、中国では費玉清(Fei yu-ching)という方がカバーしたバージョンが有名みたいです。
銅鑼やポコポコ鳴る太鼓(?)を駆使して作ったサウンドは、当時の他のものとは全く違い、このアルバムの個性が良く出ていると思いました。
それにしても、中国の民謡までカバーしているなんて、このときのジョナサンがいかに音楽の探究を行なっていたかがよくわかるような気がします。
動画は中国のテレビで放送された、費玉清バージョンです。


2.Ice Cream Man
この曲はアルバムで一番大好きな曲です!!
Ice cream manとはキッチンカーなどでアイスクリームを売っている人のことで、アメリカの夏休みとかを想像すると真っ先に浮かぶアレのことですね。
冷たいアイスを配る大人をどこかヒーローのように感じ、憧れを持つ人が多いのはよくわかるような気がします。
多分ジョナサンもその一人だったのだと思います。
曲の歌詞では彼への愛を余すことなく出し切っています。
本人も気に入っているのか良くライブで演奏していて、動画は77年のライブ音源で、盛り上がったのか、8分くらい演奏しています。


3.Rockin' Rockin' Leprechauns
木箱を叩くようなパーカッションから始まる、ロックンロールな一曲です。
途中にジョナサンが吹いていると思われるサックスのソロがあって、歪みが気持ちよくかっこいいです。
Leprechaunsとはアイルランドの妖精のことで、捕まえると宝のありかを教えてくれるらしい。


4.Summer Morning
ここまでのコードをかき鳴らす曲から一転して、ここでゆったりとしたナンバーが入ります。
タイトル通り、夏の朝を感じるような曲になっていて、最初の部分ではフィールドレコーディングかのようなギターと打楽器の音を聴くことができます。
また全体を通しても演奏する音の数が少なく、ベースに関しては長く伸びるオルガンベース(?)、ギターは優しく爪弾くだけとなっています。
僕個人的にはアルバムの中で一番落ち着く曲だと思います。

5.Afternoon

曲はマイナー調の曲で、フラメンコのような印象を受けました。
正直、個人的には印象の薄いナンバーです。
何度も聞いたら味が出てくるのかもしれない…


6.Fly into the Mystery
曲調はA.4のように落ちついた感じで、ルート音を弾くベースとギターのアルペジオという、最小限のアレンジとなっています。
後ろで微かに聞こえる椅子の「ギー」という音がいい味となっていますね。
Modern loversの頃から演奏していたみたいで、動画は71年のライブ音源です。
ここでA面が終わります。


7.South American Folk Song
この曲は民謡からのインストカバーで、本アルバム二つめのカバーになります。
途中のギターソロのヨレヨレな感じが良いですね。
バックで微かに聞こえホルンのような音が、何を意味しているのか。
こちら側の想像力を掻き立てます。
ライブではテンポをあげたバージョンを演奏しています。
オリジナルのテンポで慣れてるとすごい違和感…


8.Roller Coaster by the Sea
軽快なウォーキングベースが印象的なかわいいナンバーです。
今更ですが、この曲も含め今作はコードの繰り返しを多く使った曲が多く、楽器を始めた子でもすぐにカバーできるのが特徴ですね。
アレンジが複雑化している最近の曲に比べ、シンプル過ぎで面白くないと思われがちですが、誰にでもできる曲というのはすごく大切だし必要なものだと僕は思います。
この曲は、後で紹介する"Egyptian Reggae"のシングルB面らしいです。


9.Dodge Veg-O-Matic
このアルバムの中では最も激しいロックンロールナンバーです。
でも、歪みのないチャカチャカしたギターだったり、ハイハットの代わりにポコポコ太鼓を使ったりなど、やっぱりどこか優しさが抜けてない曲だと思います。
エンディングが近づくとどんどん演奏が激しくなっていきます。


10.Egyptian Reggae
ここで本作の中で一番有名であろうナンバーが登場します。
この曲はエドガーライト監督のアクション映画「Baby driver」でも聴くことができます。
僕はこの曲は彼のオリジナルだとずっと思っていました、ですが元ネタがあるみたいですね。
元ネタはEarl ZeroNone Shall Escape the Judgementらしいです。

ただ聞いてみても同じなのは最初の2小節の繰り返しくらいで、インスパイアの範疇なんじゃないかなと思います。
エジプトのレゲェなんて聞いたこともないのに、なぜか納得してしまう。すごい曲だと思います。
動画はトップオブザポップスの映像です。ダンスが秀逸です。エジプトが強いです…


11.Coomyah

いきなり「熊熊熊熊熊イエーイエイ」と言われてびっくりしますが、これは"Coomyah"と言っており、ジャマイカ語らしく空耳でもなんでもないみたいです。たまにあるタモさんがそのまんま過ぎて笑わないやつです。
この曲もカバーで元ネタはジャマイカの歌手Desmond Dekkerによる楽曲です。
正直僕は元ネタの方が好きです。


12.Wheels on the Bus
有名な童謡をここでは、エルビスのブルースウェードシューズのようなロックンロールでカバーしています。
冒頭のデスボイスや最後の叫び声のように全体的にラフな感じで演奏しているのがとても聞いてて面白いです。


13.Angels Watching over Me
この曲も童謡のカバーみたいです。
このアルバム唯一のアカペラの楽曲ですね。
天使が見守っているという歌詞はすごく大好きです。
とっても優しい曲だと思います。

・まとめ

 書くことが全く見つからないですが、まとめると、このアルバムはすごく良いということです。シンプルなアレンジにシンプルな曲構成。かわいいコーラスと優しいドラミング。そしてジョナサンの独特な歌声。これらが合わさった奇跡のようなアルバムだと思います。これをきっかけにジョナサンリッチマンにハマってくれたら嬉しいです。
 もっとしっかりまとめられるように、これからも好きなアルバムをレビューしていきますので、どうぞよろしくお願いします。
 間違った情報や感想があればコメントで教えてください。拙い文章でございますが、ご清覧いただきありがとうございました。

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