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「理想の相手を見極める力」よりも重要な「運用スキル」の話

「いつもパートナー選びに失敗してしまうのですが、どうしたら理想の相手に出会えるでしょうか?」とご相談をいただくことがあります。

世の中には「理想の相手と出会う方法」「結婚相手を見極めるコツ」という記事や本が溢れていて、パートナー選びさえうまくいけば…と思ってしまいますよね。

もちろん自分に合う・合わない相手は一定いると思うものの、「正解の相手を選ばねば」と思い込みすぎるのもよくないのではと感じます。

今回は、理想の相手を見極める力よりも磨いていきたい「運用スキル」の話をします。

「良いパートナーに出会えればうまくいく」という幻想

結婚といえば「いいパートナーを見極めなければ…」と思いがちですが、愛の本質を分析した心理社会学者エーリッヒ・フロムは、以下のように語っています。

愛には学ぶべきことなど何一つない、という考え方の底にある第二の前提は、愛の問題とはすなわち対象の問題であって能力の問題ではない、という思いこみである。

愛することは簡単だが、愛するにふさわしい相手、あるいは愛されるにふさわしい相手を見つけることはむずかしい――人びとはそんなふうに考えている

著書『愛するということ』 より

多くの人は、自分がパートナーとうまくいかないのはパートナー選びが悪いからだと考えているが、それは勘違いである、と。

私も目から鱗だったのですが、どんな相手も尊重し、ありのままを受け止める技術がないと、長続きはしないと言っているのです。

社会現象を巻き起こしたドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』でも、主人公みくりさんの母が夫婦関係についてこんな名言を残しています。

「無償の愛なんて注げないわよ、他人なんだし。運命の相手ってよく言うけど私はそんなのいないと思うのよ。運命の相手に"する"の。意思がなきゃ続かないのは仕事も家庭も同じじゃないかな」(第8話より)

運命の相手に「出会う」のではなく、運命の相手に「する」。良いパートナーと付き合ったら自動的に運命の相手になるのではなく、パートナーシップの継続には強い意思とコミットメントが必要だと教えてくれているんですよね。

大前提として、暴力を振るったりモラハラをしてきたりと、パートナーが自分を傷つけるような行動をする場合は、別れた方がいいと思っています。(これはパートナーが良い・悪い以前の問題です)

ただ、夫婦関係に関するいろんな悩み相談を見てて思うのは、ふたりの関係性がうまくいかくなってしまう大抵の理由は、「パートナー選びが悪かったから」ではなく、「お互いに向き合う努力を諦めてしまったから」というパターンが多いのではないか、ということです。

パートナーと向き合う時に大切な「質問責任」と「説明責任」

パートナーと向き合う努力とはどういうことか。参考にしたいのは、「質問責任」「説明責任」という向き合い方です。

サイボウズには、「質問責任」と「説明責任」を大事にするという文化があります。

社内制度や人間関係、誰かの発言などに対してモヤモヤしたことがあれば、小さなことでも質問・意見する責任があり、また、質問された側にはちゃんとそれに対して答える責任がある──。モヤモヤしているのに直接言わず、隠れて居酒屋などで愚痴を言うことは「悪」とされます。

(中略)モヤモヤしたことがあれば、すぐにその場で解消する──。これは、チームで気持ちよく仕事する上でとても大事な姿勢なのではないでしょうか。
https://cybozushiki.cybozu.co.jp/articles/m005313.html

これは仕事におけるチームの話ですが、関係性を一緒に作っていくチームメイトであるパートナーにも同じことが言えます。

たとえば家事の分担でモヤモヤした時や、相手の口調にイラっとした時。

「質問責任」を果たして、自分が感じたモヤモヤを我慢せずに、小さなことでもきちんと伝えているか。それを受けたパートナーも「説明責任」を果たして、ふたりが納得するまで議論できているか。

これはかなり骨の折れる作業でもあります。たとえば我が家だと、食洗機のお皿の入れ方について意見が異なった時に夫と2時間以上議論したことがあるのですが、それを人に話すと「え、そんな小さなことで2時間も?」とびっくりされます。

正直お互い仕事で忙しいし、険悪な空気になりたくないから、指摘しないで見過ごすほうが100倍楽。でも、お互い不満が溜まっていったら、いつか関係が壊れてしまうかもしれません。

つい相手と向き合うのを諦めて、「パートナー選びを間違えた…」と第三者に愚痴ってストレス発散したくもなるでも、もしかしたら見直すべきは「パートナー選び」ではなく、「運用スキル」なのかもしれません。

見極める力よりも、関係性をメンテナンスする「運用スキル」を

このツイートを見て「それだ〜!」と思ったのですが、パートナーと良い関係を築き続けていくのに大切なのは、「いかに良い相手を見極めるか」よりも「メンテナンス・運用スキル」なんですよね。

どんなに素敵な相手に出会えたとしても、価値観の違いは必ず発生します。そのたびに「自分には合わなかった」と切り捨ててしまうよりも、違いを乗り越える「運用スキル」が重要になってきている気がします。

パートナーシップの維持をしてくための運用スキルとしては、

・小さな違和感を見過ごさずに解決に向けて動く
・お互いを尊重して建設的に議論する


あたりが大切で、これはとても高度なスキルです。

とはいえ、パートナーシップにおける運用スキルの大切さなんて誰も教えてくれないですし、建設的な議論や問題解決の手法も学校では習いません。「できてたら苦労しないよ…」という声もごもっともだと思います。

そんなわけで、パートナーとの対話を大切にし、長期的な関係を築きたい人のための会員制コミュニテイ「ふたりの教室」で、対話スキルや家庭運営に関して勉強会を開いているので、よかったらのぞいてみてくださいね!

「パートナー選びさえよければOK」から、「相手を尊重して違いを乗り越えるスキルを高めよう」という文化になるように。

そう思える体験をたくさんのカップル・夫婦に提供できるよう、サービスを磨いていきたいと思います。

ということで、理想のパートナーを見極める力よりも「運用スキル」を磨くほうが本質的かもよ、というお話でした。

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