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わたしはあの時、命を手放せなかったのです。

ベランダに続く大きな窓と
ベットの横にある小さな小窓を開けると
ふんわりと涼しい風が吹いてカーテンを揺らした

日中はまだまだ暑いけれど
ほんの少しずつ秋の足音は近づいているのがわかる

道路沿いに咲く百日紅の木の麓が
花びらで染まり始め
コンクリートの隙間から顔をだす
名前の知らない小さなお花は
そこで健気に息をしていた

それはまるで
あの日の私みたいだと思った



いつもひとりぼっちだった

わたしはきっと変なやつだったからだと思う

弱くて根暗で泣き虫で
自分が惨めでしょうがない

わたしは生きているようで
生きていなかったのかもしれない

いなくても良いのに
学校に行く意味もわからなかった


わたしはきっと変なやつで
いつだって笑いもの

誰も見てやしないのに
視線が怖くて私は俯いて
誰も何も言っていないのに
話し声が怖くて私は耳を塞いだ

どうしたの?話してごらん?って
あの人は言う

話すことなんて何もないよ

前だけを見て進めとあの人はいう
後ろを振り返るなとあの人はいう

未来なんて見えやしないのに
何を言っているんだとわたしは言いたい

布団から出ることで精一杯で
両親に笑顔で接することで精一杯で
世間の邪魔にならないように生きることで精一杯で

どうやったら楽に死ねるかっていつも考えてる

楽に死ねる方法なんてないのに

死ぬことにすら怯えているわたしが虚しい

高いところから下を見下ろして目を瞑り
不気味に光る刃を手に持って震えた

来る日も来る日も
わたしは死を選べずにいた




今これを読んでいる死にたいキミへ

いや読んでいないかもしれないけれど

死ぬことを選べたキミはとっても凄いよ

自分で選べたんだ

進むことを

わたしは死ぬことが怖くてさ

選べなかったんだもん

そんなに凄いのにさ
死んじゃうの?

わたしなんかより
もっと強い意志を持っているのに

キミは生きながら
充分なくらいに地獄を見てきたんだよね

本当によく生きたね

じゃあさ
死んでもいいんだけど
最後に自分の好きなものを
思いっきり食べてみない?

好きなところにも行ってさ

今日1日だけでいいから
明日1日だけでいいからさ

それだけで1日を生きることを
選らぶこともできるんだ


生きることに意味なんて必要ないんだよ

誰かのためじゃなくていい
何かを成し遂げなくたっていい

”生きていればいつか良いことがあるから”

そんな投げやりな言葉
いまのキミには伝わらないのも知ってる

生きることに向き合わなくていいよ
だって死にたいんでしょ?

それなら反対にさ
死ぬことに向き合ってみてほしい

明日死ぬために何かしたいことはない?

できるだけ多く考えてみてほしい

それをしてから死ぬのも遅くないと思うんだけど
どうかな?


由佳

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