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広報がいない!一人目の広報を採用する時にきをつけたいこと

この2ヶ月、サービスローンチの広報PR戦略のご相談や、広報部門の立ち上げ方、広報採用方法など広報にまつわるご相談を立て続けに20件近くいただきました。中でもズレが大きくて深刻だなと思っている「採用」について、スタートアップや中小企業経営者の方や人事担当者の方向けにまとめてみたいと思います。


攻めの広報と守りの広報がある

経理・財務に、資金調達やM&Aといった攻めと、財務報告や内部統制といった守りの攻守両面の役割があるように、広報PRにも「攻めの広報」と「守りの広報」があります。
例えばメディア周りの役割を切り出すと、攻めの広報は、メディア露出を積極的に獲得しに行く活動を指します。これに対し、ネガティブなメディア報道を最小限に食い止めるのが守りの広報です。

数千〜数万人の従業員規模となる大手企業ともなると、毎日のように情報発信がされ、株主をはじめとした様々なステークホルダーへの説明責任が発生し危機管理広報が重視されますし、数十人の広報チームがあり分業されており対象のスキルに長けています。一方、私が今関わっているようなスタートアップ企業となると、社内にメディアリスト資産もなく、こちらから開拓し発信しないと存在を認識されないため、営業のように新規開拓を繰り返す攻めの広報となります。まさに以前呟いたセールスPR。

さて、今回ご相談が続いたのはベンチャー企業や中小企業の方からで、まとめると下記のようなものでした。

・広報を採用したいけど、どうやったら良いのか
・広報を採用したいけど、優秀な人はどこにいるのか
・広報を採用したいけど、何を見たら良いのか
・広報を採用したいけど、ひとり採用するほどの仕事はない(気がする)
・社内の人を兼務で広報にするのも良いと思っているがどの部門が良いか
・広報の業務スコープをどこで切ったら良いのか
・広報を採用する際の求人票のMUST・WANTをどう書いたら良いか

これを考えるにあたり、一先ず記載したいのは「広報PR」と「広告AD」です。プロモーション・PR・広報などはその専門職にいないと混在されがちですが、明確に違いがあります。
以前社内用に作ったザクっとした内容なので、雰囲気で捉えてもらえたらと思います。

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広報は戦後日本に導入された概念で、英語のPublic Relationsが翻訳されたもの。その略語のPRが日本ではいつの間にか「プロモーション」や「キャンペーン」と同義的に使用された結果、「宣伝」や「販促」のイメージが強くなったという歴史背景がありあます。
広報の本来の役割は「企業として関連する社会と良好な関係を構築・維持すること」になります。

こう定義されていながらも、以前いた通販化粧品会社では、広告宣伝部が三つの課に分かれ、そのうちの一つ広報部の中で所属したチームはメディア周りと記者発表会を担当し、タイアップ広告も担務になるほど線引きが曖昧になります。(他のチームは協賛専門だったり本当に切り方がまちまちです)

ここで改めて、広報の役割に含められる(含められてしまう)業務を書き出してみます。

【広報業務とされやすい一例】
・ブランディング・見え方の策定
・リリースのネタ作り
・インタビュー企画広報企画/関係者調整
・社内情報収集
・クリッピング/モニタリング
・プレスリリースライティング/配信
・企業HP/SNS更新
・ブログやオウンドメディアライティング
・寄稿
・記者対応/メディアリレーション
・記者リスト作成・更新
・媒体情報チェック/新規開拓
・イベント/セミナー/ユーザー会運営
・社内情報発信
・社内資料・登壇資料作成
・FACT BOOK作成
・展示会出展
・アワード応募
・採用広報/社内インタビュー・ライティング
・プレスキット作成
・各種サービス画像作成
・危機管理広報
・製品説明文
・満足度アンケート
・効果測定指標策定/効果検証
・協賛/スポンサー対応      など

かなり幅が広くなるのと、どれも水面下で実行する極めて地味な作業が中心となり、いわゆる「メディアに取材され露出する」という経営に期待されがちな業務はこれらの積み上げのごく一部の成果となっています。

貴社の課題はどこか

あらためて自社の採用を考えた際に、上記を見ていただくと、全部ひとりでできるスーパーマンのような人を探すような発想にはならない(でいてほしい)と思うのですが、仮にそういう人を見つけて酷使すると間違いなくその人は潰れてしまいます。
広報は数値化が難しいと言われている職種の一つで、KPIを無理くり数字でおくと、本質的なPRブランディングから外れたりします。実際に私は3社本業で広報を、数社副業で広報を携わってきたのですが、ある一社は「全て取れ・量質スピード全部」とのことでかなり疲弊しました。

では、採用要件を定める際にどうするかですが、「絞る」ことだと思います。具体的には会社のフェーズや経営課題に照らして、何にフォーカスするか・何を捨てるかを明確にした上で、そこが強みの人を募集することだと思います。

参考)下記は「スタートアップ・ベンチャー企業を成功に導く広報戦略 ――経営戦略と広報活動の一体化の重要性」(真鍋順子氏)の広報活動の変遷▼

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経営課題に即した、採用要件を定義する例

「人がいれば事業は伸びる。採用課題が経営課題である」
といった場合、自社の知名度を伸ばすと同時に採用サイトのコンテンツを充実させる経験がある人を重視する。

「人は充足している。サービスの競合も増えてきている中で、早くマーケットを押さえにいく必要があるのでサービスPRを重視したい」
であれば、プロモーションの企画やネタ造りが得意、メディアプロモートが得意な人を探すのも手かもしれません。

「最近の法改正で炎上リスクが高まってしまい、SNSなどの発信含め統制し的確な対応をすることが望ましい」
であれば、危機管理広報の経験やSNSの中の人を経験しているような人を採用ターゲットにするのが良いのかと思います。

よくあるミスマッチ例

関わらせていただいた企業さんは、大手メーカーとハイブランド責任者をご経験されていた方を採用したところ、製品説明文や会社説明文、ブランドストーリーのクオリティがググッと上がったのですが、一方で新規のメディア開拓は苦手で取材件数などは一気に落ちてしまいました。
その企業はまだまだ世の中で知る人ぞ知るブランドをどうにか認知を上げていく(予算は少ないので大規模プロモーションはできない)段階だったので、もう少し攻めのPRを担える人が必要だったのかもしれません。

ひとりPRを経験しているからなんでもできるだろう、とか、広告代理店出身だからPRと言われる部分は企画戦略(ここ得意な方多い)だけでなく実行もできるだろう、とか、BtoC広報経験10年もあるからBtoB広報もできるだろうとか、このような憶測による採用は、双方の不幸を招きかねません..!

あとは「コミュニケーション」にまつわることだから全て広報に、や、社内で宙ぶらりんになった業務を「表に出るものだから全て広報に」と言った話にも遭遇しています。ここでも集中と選択が鍵だなと痛感します。

終わりに

色々書きましたが、広報PRは誰かに「自社の事業やサービスのことをもっと知って欲しい!」と愛を持ってする仕事になりますので、とにかく事業への共感や、サービスへの愛が必要不可欠なものだとつくづく思います。
そこが薄いときのピッチはやはり、どこか嘘臭く胡散臭いものになっていると自分でも気づきますし、メディアの方にはすぐに見抜かれてしまいます。
そういう意味では、上記のような「捨てる」「優先順位を立てる」プロセスに加えて、愛がある人材が一番いいなと思います。
もし新規採用をせずに、社内人材を兼務させることでスタートする場合は、個人的には営業領域か人事の方がおすすめです。特にメディア開拓を優先したり、サービスPRに重きを置くのであれば営業を、コーポレートPRで企業の認知を伸ばし採用を促進したいのであれば人事かと思います。

何かの参考にしていただけますと幸いです!

広報のことも(たまにワーママ系としょうもないことw)も呟いていますので、各種SNS含めフォローいただけたら嬉しいです♪
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