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手術が先か、抗がん剤が先か、それが問題だ【乳がん体験談 7】


乳がんの精密検査を終え、いよいよ治療計画の段階に入った。

前回の記事はこちら

わたし的には、当然、全摘手術をしてから抗がん剤を打つものだと思い込んでいた。

しかし。

手術がめちゃくちゃ混み合っていて、手術が3か月待ちだという。


悪性度、進行度ともに高い上に、リンパ節転移もしているので、先生からすると、その3か月がもったいないということで、

「術前化学療法」を薦められた。

要は、先に抗がん剤を(約6か月)打ってから手術をするということ。

正直、聞いた瞬間、


「え?順番逆じゃない?」

と思った。

患部を切り取って、それでも取り切れてなかったり、リンパから回っちゃってるかもしれないガンのタネをぶち殺すための抗がん剤なんじゃないか?と。

けれどこの当時、ですでに
「術前化学療法」は割とポピュラーになっていたらしく

抗がん剤を打ってから手術するのと、
手術してから抗がん剤を打つのと、
その後の予後はデータ上変わらないという研究結果が出ているらしい。

でも正直それを聞いて思ったことは

「そんなわけないだろ」

だった。


データ的にはそう出ているのかもしれないが、気分が違う。

気分が違う、では理由になりにくいと思って、
術前抗がん剤について自分なりにネットで調べた。

すると私の調べた範囲では、

術前化学療法はもともと
腫瘍が大きくなりすぎて手術ができない場合に、抗がん剤で小さくしてから手術する目的で始まった治療法であり、もとは手術後に抗がん剤という順番であったらしい。

それが研究が進み、手術前に抗がん剤やってからでも予後が変わらないというデータが出てきて、術前抗がん剤は割とポピュラーになっているというのだ。

でも私からすると、それは私のように患者が増えてきて、手術待ちの期間が長くなってしまい、その「つなぎ」みたいな感じで、6か月かかる抗がん剤を打っておけば手術も確約できるし、ちょうどいい、みたいに受け取れてしまった。

なんかモヤモヤしていたし、
主治医の先生が超優しくて、不安なら解消できるまで質問してくれていいよ、と時間を取ってくれたのでいろいろと聞いた。

そこで知ったのは

抗がん剤というのは、実は「絶対に効く」ものではない。なので、手術前に打って、腫瘍が小さくなるという保証はない。それと同じで、手術後にまき散らされた種を撲滅すべく抗がん剤を打っても、それが本当に撲滅されたかどうかは分からない、らしい。

逆に術前でもし腫瘍が小さくなれば「あ、効いてるね」ってのはわかる。ただし、効かなかった場合に落ち込むのは目に見えている。

抗がん剤は、とんでもなく強い薬で、打つと禿げ散らかすし、白血球の数は地に落ちるしと、身体に結構なダメージがある割に、その効果は割と不確かだと知った。

ただ、データとしては、ある一定のステージや状態の人には医学的に「大きな意味がある」というデータが出ているので、わたしの場合はやはり「おすすめ」だということだ。


いまの状態だと、確かに3か月もがんを放置するのは怖い。
だから「術前化学療法」が今のベストなのは理解できる。

だがわたし的には、どうにも納得がいかなかった。

すでにリンパ節転移があるわたしの乳がんの親玉が、全身にがん細胞をまき散らしているのなら、先にそれを取るのが順序だと思う。

さらに、術前に身体の抵抗力が落ちまくる抗がん剤をして、体力を落とし切ってから手術するのは、元気なうちに手術をするのと回復の速度が違うと思ったのだ。

予後、というデータだけでは、そういう細かい比較までは分からない。
だからこそ、そこは想像力を働かせて考えて、納得が行くようにしたかった。

そうはいっても、現実は、3か月手術待ち。
術前抗がん剤が嫌でも、放置プレイというのも怖い。

と悶々と悩んでいたある日、主治医の先生から電話があった。

術前抗がん剤に難色を示していたわたしのことを覚えてくれていて、手術にキャンセルが出て、そこの枠を押さえれば、2週間程度で手術ができるという。どうしますか?と聞かれて、即決で先に手術をしていただくことにした。

結果、希望通り、手術をしてから抗がん剤という順番で治療を受けたのだが、わたしの場合はこれで良かったと思った。

というのも、やはり回復を早くしたい理由に「フラメンコの発表会に意地でも出たい」というのがあり、

(詳しくはこの記事で)

また手術後の話は別で書くが、

乳がん手術は腕が上がりにくくなるため、腕をちゃんと上げるようになるにはリハビリが必須なのだが、

フラメンコに出たいがために、手術直後から痛いのをこらえて腕が上がるようにし、退院して3日後にフラメンコのレッスンに出たので、これはやはり、抗がん剤をしないで、抵抗力を保ったまま手術をしたからできたことかな、と思う。

その後、抗がん剤治療が始まったが、意地でも風邪をひかないように気合で乗り切り、結局抗がん剤治療の真っ最中に、ウィッグを付けてフラメンコの発表会に出ることが出来た。

これはわたしの考えであり、現在の研究では「術前化学療法」でも「術後の化学療法」でも、予後は変わらないというデータに基づいて治療が行われている。

もちろん術前化学療法で問題なく治療している人もたくさんいる。

なので、これが正しいとかどうではなく、自分が納得いく方法で治療を受けることができればベストだよね、という話である。

がんになってみて思うが、これだけインフォームドコンセント(術前の情報提供と同意)が当たり前になった今、病気の治療は自分の選択、決断力がめちゃくちゃ試される。先生の言いなりになろうが、自分の意見を貫こうが、ぜんぶ自己責任だ。だからこそ、自分なりに調べて、自分の納得がいく方法で治療をするのが、あとあと一番後悔がないような気がする。


わたしの体験が誰かの役に立てればとても嬉しいが、
あくまで個人の体験と感想なので、ぜひご自身で判断していただきたい。


本日もお読みいただきありがとうございました!

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