見出し画像

40億年前。宇宙。深海。研究国立科学博物館「海」展でわたしたちの起源を見つめる。

毎回長い休みには恒例となった国立科学博物館。今年も行って、またまた目からうろこを大量に落としてきたので感動冷めやらぬうちにレポートする。


1.国立科学博物館に通う親子



息子が小学校低学年の頃から、毎年夏は上野の国立科学博物館の特別展に行っている。

息子は3歳くらいから恐竜にハマり、あちこちの恐竜展を探しては連れて行っていた。年齢的にまだ化石はリアル感がないので、動く恐竜的なやつがある子供だまし的なのが強いほうが喜んだが、とにかくこういうイベントが好きなのだなというのは分かった。

国立科学博物館(=科博)デビューのきっかけは2015年の特別展「生命大躍進」。

恐竜にハマったのを皮切りに、そこから危険生物だの深海生物だの古代生物だの変わった生き物が大好きになった息子が、NHKスペシャルでやっていた「生命大躍進」という番組に夢中になり、狂ったように見ていた。

2015年といえば、息子は8歳。小3。もう狂ったように何度も一緒に見ようとねだられ、四六時中リピートしたこの番組に紐づいた企画展があるとのことで付き合わされただろう。

わたしはもともと自然科学とかあんまり興味がなくて、息子に付き合ってあれこれ見せられていたのだが、この「生命大躍進」展は、生命の起源に迫るダイナミックな展示が面白く、感動してしまった。

そこから毎年企画展に行くようになった。2016年には恐竜博も開催されて息子大興奮。夏だけでなく冬の企画展も見に行くようになり、そこから「海のハンター展」「深海2017」「昆虫」「恐竜博2019」「大地のハンター展」「植物展」「宝石展」「化石ハンター展」「毒展」とバラエティ豊かなラインナップにせっせと足を運んだ。

さすが国立科学博物館、最新の技術と研究の成果がここに「ドヤ!」とばかりに登場する。いままで知らなかった自然界の不思議を最新の研究で解き明かし、分かりやすく展示してくれるので「ほほう」とうなるし、その研究に日々向き合う人たちの情熱が伝わってきて、すごくエネルギーがもらえる。

2.今回の展示は「海」!

そんな楽しみな特別展、今年は「海」。

深海でもなく「海」となると広すぎて焦点がぼやけるのではないかなと思ったが、今回はその「海」の起源をたどるのがテーマ。

毎回借りるイヤホンガイド、今回のナビゲーターは、桝太一。元来海好きだった東大卒の元アナウンサーの桝さんはダッシュ海岸とかほかの番組で海好きに覚醒してしまい、アナウンサーをやめて現在同志社大学の助教授。さすが東大。そんな桝さんのナビゲートに心も踊るよね。

2-1.海の起源をたどる

そもそも地球には水があるから生命が生まれたわけで、水がないとそもそも始まらない歴史。そういわれてみればそうだね、と足を踏み入れると、どうも地球に水がきはじめたのは40億年ほど前らしい。

その水の起源を探るヒントとして、「はやぶさ2号」が小惑星イトカワから持ち帰った石を研究したら、その石に水が含まれてたとかで、それが地球に水をもたらした起源をひもとくキーワードだとか、科学に無知なアラフィフおばちゃんのわたしはギリギリ「はやぶさ2号」しか知らなかったけど、なんであんなに騒がれていたか今日知ったわ。

2-2.深海は面白い!

ところ変わって深海。深海はまだまだ解明されていないことが多すぎるんだけど、生命が生まれるきっかけになったのがこの「チムニー」と呼ばれる高温水の湧き出る場所だったんじゃないかってことになってるらしい。

何千メートルもの海底に、こんな景色があるってのがもう幻想的すぎるのに、生命の根源なんて聞くと「ぬおお」とうなる。

しかしこのあたり、科学も化学もサッパリなわたしは説明を読んでいてもいまひとつ入って来ない。ガスとか鉱物とか分からんのよ。

息子に「これ何言ってるか分かる?」って聞いたら「まぁわかる」とのこと。そっち系の話は強いのね。だけど学校の成績は「ん?」ていう感じなのはなぜだろうと思いながらも、おおわかるんだすげぇ。とちょっと息子を尊敬。

詳しく知りたい人はこれ読んで

で、水の中に酸素ができたそうで。これも読んでてもちんぷんかんぷんだったんだけど息子いわく「シアノバクテリア知らないのやばいっしょ」とのこと。さすが教科書の範囲をきれいに外して、古代生物、深海生物、危険生物とかばっかり読んでるだけある。

2-3.魚類って割と昔から完成されている

海ができました。バクテリアが増えました。あたりまではちんぷんかんぷんだった私も、生物の進化のほうに入るとだいぶ分かりやすく「おおー」とみられた。

生命の起源は海からで、そこから始まる物語「生命大躍進」を狂ったように見せられたので、海に生物が大量に生まれた「カンブリア爆発」とかそのあたりはなんとなーくわかるし、そこからどんどん魚の進化などに入って、やっとついていけるようになった。

魚って割と昔から完成された形だったのよね。と毎回思う。(これ確か4億年前くらいの魚)

生きた化石といわれるシーラカンスは、ほんとに古代の姿からほとんど変わっていないらしい。そう言われても実際ピンと来なかったのだけど、海展ではシーラカンスが泳いでいるレアな映像を見られるのでなんとなくわかった。泳ぎ方が独特なんよね。腹びれを使って、四つ足で歩いている感じ。なんとなく四つ足動物を彷彿させる動きだったなぁ。

そしてこのインドネシアシーラカンスは、何か知らんけど魚市場にうっかり出てて「これシーラカンスじゃね?」となって、それ以前まではインドネシアではシーラカンスが発見されていなかったので改めて「インドネシアシーラカンス」になったんだとか。食べられるのかね、これ。

2-4.海は広くて深い。

海は地球の70%。なんか私たち陸で生活してるので気づきにくいけど、地球って「ほぼ海」じゃんね。

一時期深海が大ブームになって、いまでは深海の魚も「常識」になりつつあるけど、それでも深海は謎が多すぎるし、やっぱりその生き物を見るのはすごく面白い。

深海は暗いし寒いし水圧がとんでもないしで超ハードな環境。そこで住んでいる魚は、上の方から落ちてくる魚の死骸なんかを食べて生活しているのだそう。

今回フィーチャーされていたスネイルフィッシュくんも、よくぞこんなところでいらっしゃいました。そしてなんだか可愛い姿でいてくれてありがとう。

2-5.最新の研究でわかることにビックリ

あと面白かったのが、シロナガスクジラが海面と海中を行ったり来たりすることで、実は海の中のプランクトンを混ぜて食べやすくしているとか、

回遊魚とかの目玉や耳石を顕微鏡で見ると年輪のようになっていて、それを一枚一枚はがして調べると、その魚がどこをたどって来たかがわかるだとか、もう研究が最新すぎてビックリする。

そこまで知りたいという情熱もすごいし、やっちゃうのもすごいし。
世の中にはそうやって不思議を解明したいという情熱を持つ人がたくさんいるんだな、と毎回そこが胸アツポイントだ。

2-6.古代の人の海との付き合い方

そしてこれまた視点を変えて、古代からの海洋技術。
いまの日本は島国なわけで、どうやって人が来たんだい?というのを研究している人もいるらしい。

あれこれ遺跡はあるものの、海を渡る船とかはまだ出土していないらしく(それにも驚き)、それを突き止めるために、旧石器時代で使える技術で、船を作って実際に渡ってみようという研究をしている人もいてビックリ。

なんでも実際に草を束ねた船、竹の皮の船、丸太をくりぬいた船を作って実際に手漕ぎして台湾から与那国島まで行ってみたのだとか。まだ航海技術もなくてコンパスもなく、星の位置だけを頼りにひたすら漕ぐ。潮の流れにやられて草と竹の船はムリだったそうで、唯一丸太の船で、まる二日かけてなんとかたどりついたのだそう。

生きてたどりつけるかもわからず、どこかの島に渡ったところで、そこで生きていけるかもわからないのに海を渡るって、昔の人どんだけ度胸あったんだか。

しかも男だけで渡っても繁栄しないわけで、最初は少ない人数しか乗れない船に女性も一緒になって漕いで行ったんじゃないかと想像されるとか。

いやはや、昔の人にインタビューしてみたいよね。

そして魚を食べるとかの生活になってくると、必要になるのが「道具」。息子がゲームで良く「黒曜石黒曜石!!!」と叫んでいてなんのこっちゃと思っていたけど、出ました黒曜石。

黒曜石を見る限り、たぶん刃物とかヤリとか釣り針とかとがったものを作るのに最適そうだよね。貝とか木でも作ってたみたいだけど、こっちのほうがいいよね。って何も知らないけど見ただけで分かる。とがってるもんね。

昔の人がさまざまな冒険とか工夫をして、それをつないで今に至ってて、こんなに便利に生活させてもらってる。

ほんと昔のみなさん、ほんとにありがとう。歴史とか勉強とかって、みんなの工夫や研究の積み重ねだもんね。そうやって「やってみよう」という人がいたから今があるんだよね。

2-7.日本がリードする海の最新研究

さて今度は海の最新研究。日本は海に囲まれているし、災害大国だけあって海溝も多いから、海洋環境の多様さもあり、海の研究が世界の中でもかなり進んでる方らしい。

そして今もグイグイ進めている研究。このハイパードルフィンてのはロボットアームが使える無人探査機で、4500mまで潜って、そこの海底の砂をグイっと持って来たり、そこの生物を掃除機みたいなのでギュイーンと吸い取って持って来たりと素晴らしい活躍をしてくれるのだそう。

さらに南海トラフの地震と津波を常時観測・監視するために、海底に構築された観測システムを作ってたり、ちょっとこのハイパードルフィンの活躍がやばいということもわかった。

今回太っ腹に実機が展示されてて、本体についている傷や汚れがリアル感満点。


また、深海以外でも研究は進んでて、北極海周辺も水中ドローンでいろんな研究が進んでいるのだとか。

このCOMAIって「氷下魚」っていう北海道出身の旦那が食べてた、かなり地味な魚の名前で、「メイドインジャパン」感がすごい。


しかし、こういうロボットやドローンの活躍を見ていると、ロボットとかAIって、こういうのに使われるのが一番いい気がする。

この海展の帰りにバーミヤンに寄ったけど、ネコ配膳ロボットがノロノロとビールを運んできて、ビールの泡と冷たさにこだわりたい私としては「人間が持って来ないと泡が消えるやんけ」と思うほうだし、隣の席の老夫婦はネコロボットに戸惑って結局店員さんが持ってきてたし、こういうわざわざ人間ができることにロボットを使わないで、深海に突撃するとか、絶対人間はムリーなほうに全集中して使うほうがいいと思うんだよねぇ。

2-8.やっぱり深刻、海洋プラスチック

あとは海洋プラスチック問題。こういった教育はSDGS世代のうちの息子がたっぷり教育を受けているものの、わたしのほうがあんまりピンと来ていなかったのだが、クジラの胃とかウミガメの胃から出てきたプラスチックがそのまんま展示されていて、うわーこりゃひどい。ごめんなさい。と思った。

プラスチックって分解されないし、劣化すると粉々になっちゃって、それが魚の体内の脂肪に蓄積されて、それをわたしたちが食べて、、、って濃縮されていくので、たぶんわたしの身体もそうとうプラスチック要素が強くなっているのかもしれない。

すぐには変わらないけどなんとかしようと取り組む人もいて、カニの甲羅で作る容器とか、なんとかこの海洋プラスチック問題を解決しようと動いている人がいるんだなぁ、とまた胸アツ。


最後には桝さんが覚醒したダッシュ海岸の展示もあった。

今回の展示に関わった方々。ほんとに毎回尊敬しかありません。


結構難しいこともあったし、派手さもそんなになかったけど、とにかく海って分からないことだらけで、今まで分かった最新のことを見せてくれ、まだまだ研究するからね!という情熱を感じた展示だった。

3.オリジナルグッズ販売も楽しみのひとつ


展示が終わったら毎回お楽しみのグッズ販売へ。
科博ならではのマニアックなぬいぐるみに、ついつい手が出てしまうので困る。

今回は「チムニー(茶色)、ダイダラボッチ(えび)、スネイルフィッシュ、ミジンコ、ナマコ」などが並ぶ。

ミジンコが気になってたんだけど、わたしの知るミジンコ(教科書のやつ」とちょっとイメージが違ったのでやめて、息子推しのダイダラボッチ、スネイルフィッシュ(小)をゲット。

どっちも深海。もうひとつ深海の「ラブカ」欲しいと言い出したけど高かったので却下。相変わらず深海好きな息子。

毎回図録を買うんだけど、手元に置くと安心して意外と読まないので今回はやめといた。そしたらこの記事を書くときに見返したくなり、やっぱり買っておけばよかったーと思っているなう。

そして今回わたしは展示中に目を奪われた写真家さんの写真集をゲット。

こんな感じでなんだかんだ、息子と10年近く科博に通っていることになる。

プライベートで友達と会わない息子は、相変わらずわたしと一緒に博物館に来ているが、可愛いような微妙なような、とも思うが、息子がこういうのに行きたいと言わなければ一人ではいかないし、あちらもわたしにたかれてラクだし、と利害が一致してるのかも。

だんだん息子のほうが賢くなっていって、そういうのを聞くのも楽しいし、長い休み恒例で息子と行く科博は、わたしの中の知的好奇心が刺激されるいい機会なのかもしれない。

上野は死ぬほど暑かったけど、ぜひぜひ足を運んでみてほしい。

ありがたいことにライター仕事も忙しくて久々の更新になってしまったけど、今日もお読みくださりありがとうございました!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?