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原田マハさんイチ押しの専門書「美術の物語」が、めちゃくちゃ面白くてビックリした件


以前、NHKの「あさイチ」という番組で、原田マハさんがゲストに登場したことがあった。


そこで、マハさんのおすすめ本を紹介するコーナーがあって、あまりに大絶賛するので、思わず、その本を予約してしまったわたし。


この番組が放送されてすぐに、この本が完売になったようで、商機とにらんだ出版社が即追加生産を決め、予約を開始していた。それにわたしがまんまと乗っかり、予約。ちなみに、1万円近くする美術の専門書だ。冷静だったらきっと買わない金額。

あれから2か月ほど、当然、予約したことさえすっかり忘れていたわたしだが、ある日いきなり、とてつもなく分厚くて重い本が届いた。

忘れてた!!!と思い、すっかりその当時の熱が冷めたわたしが箱を開けると、びっくり仰天な重さと厚みのある本が登場。

大きさはA4より少し小さいくらいの大判


ビックリするほど分厚いです。
乗っかりビジネス丸出し。こういうの嫌いじゃないです。

あまりの分厚さに圧倒されたが、マハさんが「美術をあまり知らない人でも、最初の1ページで引き込まれる」と言っていたので、とにかく本を開いてみた。

本の大きさに対して、字はかなり小さい。そういえばこれって専門書。
けれど、その世界に引き込まれるかどうかは、読んでみなければわからない。とにかく数ページ読んでみようと読み始めた。

すると確かに、これだけ重厚で難しそうな本、感を出しておきながら、冒頭から著者は、とても敷居を下げてわたしたちを美術の世界にいざなってくれる。

この本は分厚くて敬遠されがちだけれど、できるだけ専門用語を使わず、図版に乗っていない作品については語らないことに注意して作られていると書いてある。そして、できるだけ図版と解説文が同じページにあるように配慮してくれてあるそうだ。

こうやって、読み手のことを徹底的に考えてくれている、というだけで、この人がめちゃくちゃいい人だとわかる。難しいことを難しい言葉で説明するのはいくらでもできる。

それよりも、難しいことを、できるだけかみ砕いて分かりやすく、不特定多数の相手に分かるように視座を合わせて話すことができることが重要だと思っている。原田マハさんが、この本の著者、ゴンブリッヂ先生を尊敬しているのは、美術の知識だけでなく、こういう人間性もあるのだろうと思った。

こういう配慮のおかげで、美術についての知識がなくとも、読み進めていけば、昔から今に至るまでの美術の歴史をこれ一冊で知ることができる。

著者ができるだけフラットな視点で、歴史的に、かつ美術的に重要な作品を厳選し、解説しているそうなので、わたしたち人間の歴史の上で、転機となる作品については、ほぼ網羅されていると考えてよいのだろう。

そして、美術は「分かった振りをしている人」のためのものではなく、万人のもので、善し悪しを決めるものではない。それを前提に書かれているのも嬉しい。美術を楽しむのに正解はいらない。だけど、知識なしに鑑賞していた作品が、多少の知識を得ることで、全く別のものに見えてくる場合がある。そんな瞬間に立ち会わせてくれるのが、この本だということだ。

基本的にこの本は時代順に解説されている。まだ最初のほうしか読んでいないが、すでに「おおお」と目からウロコな発見があったのでご紹介してみよう。

わたしが大塚国際美術館で見た、「将棋をさすアキレウスとアイアス」
紀元前530年ごろに作られた(つまり2550年前!)この壺。

大塚国際美術館で見たときは、「2500年も昔にこれが作られたことはすごいけど、なんでわざわざこの壺が歴史的価値があると思われているのか分からない」という状態で見た。

なので、正直、感想は「ふーーん」で止まっていた。




けれど、この「美術の物語」によると、この壺に描かれた絵は、従来のエジプト様式で描かれていた「見えるものを全部平面に描き出す」手法から大変革が起こり、横向きの人間を見えたままに描く」という絵の描き方の歴史の分岐点にある作品だそうだ。

古代エジプトでは、人は死んでも肉体が残れば生き続けると考えられてミイラを作ったりしていた。絵に関しても、肖像を残しておけば生きられると考えられていたようだ。

だから絵画にしたためるときにも、人間の腕は2本、足は4本の完全体で残しておかなくてはならなかったらしい。横向きの人間を見たまま描くと、腕は1本、足も1本に見えてしまうのでご法度、ということ。

そう言われてみれば、顔が横向きだけど身体は正面で、足は横向きだよね。

けれど、この壺ではその「横向きの人間を見たまんま描いちゃいました」をやっているので、革命的だというのだ。

そう言われたら、なんかすごいものを見たような気になってきた。

確かに、とっても写実的。横向きで将棋をさしている姿、そのまんま。おお、すごいじゃん。

と、こんな感じで、美術館に並んでいる重要な作品は、然るべく理由があってそこに選ばれているわけで、わたしたちは、その中から心に響くものを見て感動したりするのだけれど、ほんの少し知識を得るだけで、もっともっと深い理解と感動が得られる体験をしてほしい、というのがこの本の主旨。

見た目がいまいちな絵でも、実はこんな事情があってこうなりました。という裏話を聞けば面白くなるし、そうやって美術をもっと楽しんでみませんか?という著者の優しい誘いがとても嬉しい。

けっこうな分厚さで、できれば集中して読みたいので、いつも息子があれこれやかましい我が家ではなかなか時間が取れないのだが、少しずつ読み進めていこうと思う。

とりあえずまずは第一報、この本は、原田マハさんが絶賛するのもわかる素敵な本だろうとわかった。見た目は重厚で、お値段もなかなかだが、美術に興味がある人は購入してみる価値があるのではないかと思う。

わたしはわたしで、また読み進めて新しい発見があればシェアしていこうと思う。

今日もお読みくださりありがとうございました!

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