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思い出は8cm

 CDを買った。たしか音楽データをCDの形で買ったのは去年が1回、今年がすでに2回目なので、もう去年の2倍である。発売年としては新旧織り交ぜ、といってもそれらはさすがに8cmではなく、大きさとしては『よく見るタイプ』の12cmなのだけど。
 なんだそれだけの話か、と思った人にばちょっとばかりお待ちいただきたい。『CDを買った』、このシンプルな文言で即座に銀色の円盤をイメージできた人は、今の段階で少なくとも『大人』ではなかろうか。いくぶん幅のある括りにはなるが、18歳の新成人がギリギリ入るか入らないか、くらいのところのように思う。なんでわざわざそんなこと言うのかって、もうそろそろこの『CDを買った』が通用しなくなってきている、CD自体をよく知らない、よく分からない世代に移ってきているからに他ならない。

 XなどのSNSを使っていると、自分が思っているよりも多種多様な、様々な環境だったり世代だったり……といった人々と交流できることがある。「CDって何?」自分の知識の中に存在しない謎の単語について、素朴な疑問を発した相手は中学生の方だった。リプライに画像を付けて簡単な説明をしていた人もいたが、「CDってDVDのこと?」と、写真だけ見てもどうにもピン、とは来ない様子だった。そりゃまあ、自分で使ったことがなければ分からないのも無理はない。見た目おんなじディスクだし。

 コードやカセットテープがそうなってきたように、CDもそろそろ『昔はコレで音楽を聴いていたんだよ』みたいな話をする時代になってきただろうか。それでもレコードプレーヤーやカセットデッキのように、CDプレーヤーやCDラジカセが『レトロ』とまで呼ばれるにはもう少し時間がかかる気が……いや、スマホでデータそのものを読み込むタイプでないメディアなんて、知らない世代にとってはどれも似たようなものかな。

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 めてCDを買ったのは90年代の中頃、おそらくCD全盛期――ディスク以外のオマケが付いてなくても、アーティストによっては100万枚200万枚と売れていた時代だ。アルバムが12cmでシングルは8cm、その小さなシングルCDだって1000円くらいしたものだから小学生にはそれなりに大きな額である。買うにあたっておカネを貯めて、『コレだ!』と決めて手に取ったのは……これまでも一度お話しているとおり、

Give a reason/林原めぐみ

 原めぐみさん、それに自分にとっての様々なきっかけが凝縮されたスレイヤーズだ。氏についてよく知らない、という方には、エヴァの綾波、コナンの灰原、ポケモンのムサシの声のヒト――といったあたりがイメージしやすいだろうか。
 この頃から文章家の素養があった、とか何とか今となっては好き放題に自称できるが、前向きな詞に惹かれて買ったのはウソではない。主役の声優さんが(キャラとしてでなく)オープニングを歌うのも、いくらか珍しかったように思う。で、ここでハマってからしばらくの間、林原めぐみさんの出演作品を追うようになり、歌っていたオープニングテーマのCDを買いに行き、ラジオも聞き……と、青春時代をそれら作品群と過ごしていくことになったのは良い思い出だ。それで友達もできたし。

 ころで冒頭で買ったと言ってたCDは何かというと、

Starting again/保志総一朗

 ロスト・ユニバース。『スレイヤーズ』をよく知る人ならこちらもほぼもれなくご存じのことだろう、同原作者による別シリーズのアニメ化。まあ、このCDは後年になって発売されたものではあるが。
 こちらももちろん好きには違いない……んだけど、リアルタイムでVHSに録画してまで見ていたら、唐突にあの衝撃的な画を目の当たりにすることとなったのは、また別のお話🦀

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