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【映画】「ボヘミアン・ラプソディ」凄かった、でも収まり切ってない感じ。

Queenといえば大学生の頃に見ていたキムタクの「プライド」というドラマを思い出す。主題歌の「I WAS BORN TO LOVE YOU」に乗せて繰り広げられるアイスホッケーシーンと純愛。そののマッチングにやられてよく分からないままにCDを買ってしばらく聞いていました。

映画館で見た予告編が感動的で、そういえば、と引っぱり出してきたQueenのCDを何となしに聞いていたら、当時ただのミーハーだった自分が気づかなかった音楽としての魅力がダイレクトに伝わってきていても立ってもいられず、公開を待ちわびて映画館に走ったのでした。


オープニングのフレディが朝起きてライヴ・エイドのステージに立つまでを追う映像にはゾクゾクした。フレディがメンバーにエイズを告白する時のセリフは感動的で力強くて何度でも聞きたくなった。

Queen、フレディ・マーキュリーという人の生き様、才能、カリスマ性を見せられて確かな感動はある。でも映画としてはエピソードがコマ切れでまるでダイジェスト映像を見ているみたいで、想像していたような高揚感とか忘れられないような感動は得られなかった。

描き方の問題だと思う。例えば、豪邸を建てて恋人のメアリーを隣の家に住まわせながら、彼女を差し置いて夜な夜な大勢でパーティー三昧してたらそりゃメアリーの心は離れていくし、それで孤独を嘆くなんて相当自分勝手でただの自業自得に見える。けどきっと事実はそうでも、真実はそうじゃない。「家族で見られる映画に」と作られたそうだが、そのやり方が映画を骨抜きにしている感じがした。ハードゲイの描写、ドラッグ、エイズの描写が、一瞬映る室内の荒れた様子から「察してください」程度のもので、ぜんぜん深刻に伝わってこない。本当はもっと酷い状態だったはず。

フレディの見る者を一瞬で魅了するライブパフォーマンス、時に語りかけ、笑い、観客を鼓舞する感情豊かな歌声と力強くロマンティックな歌詞は、彼の激しさや衝動や繊細さから生まれているはず。絶対に直結しているはずの、彼の本当の生き様と創作が渦巻く様子をもっと見たかった。


彼はミュージシャンだ。だから本当のことは全て、曲と歌詞の中にある。彼が確かに残したもの。伝えたかったもの。全力を注いだ対象。全て。

今からもっと、本物のQueenを聴こうと思う。

© Twentieth Century Fox Film Corporation

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