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【第1章-社会構造-第3節】社会インフラとプラットフォーム


IT系のベンチャー起業で成功を目指す若者たちは、「スティーブ・ジョブズ」「マークザッカーバーグ」「ジェフベゾス」などの創業者に憧れる。なぜベゾスやジョブズは、これだけの名声を獲得し、世界有数のお金持ちになることができたのか?

その秘密は「社会インフラ」と「プラットフォーム」という2つの視点から、社会構造を見ていくことで、その仕組みを理解することができる。企業やサービスの名前を知っているだけでは意味がなく、「仕組みと構造」を理解することではじめて、彼らに近づくことができるのである。なぜプラットフォームを作り出すことが重要であるのか、解説していく。

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《社会インフラ》

私たちが日常生活を送る上で必要不可欠なものを考えみよう。先進国に住む私たちの誰もが「電気」「水道」「ガス」「携帯電話」「インターネット」「鉄道」「飛行機」「ガソリン」「道路」「流通」「コンビニエンスストア」などを利用しているはずだ。これは「社会インフラ」と言われるものであり、国家の隅々に張り巡らされた「インフラストラクチャー(下部構造)」である。

私たちは必ずと言っていいほど、毎月の給料から一定額を「社会インフラ」への支払いを行なっている。「電気代」「水道代」「電車賃」「携帯電話」「ガス代」など、あげたらキリがない。

[社会インフラの収益性]

社会インフラを構築する上では、膨大なコストが必要であるが、一度整備してしまえば利用者から毎月料金を徴収し、継続的かつ安定的に収益を上げることが可能となる。そのため、民間企業でありながら公務員にように安定した地位に就くことができる上に、上位企業においては平均年収も高い。

インフラ系の企業名を挙げると「JR東日本・西日本」「JAL/ANA」「NTT東日本・西日本」「Au」「日本郵船」「SoftBank」「石油資源開発」「東京電力」「東西日本高速道路」などが、あげられる。

これらの大企業は投資家からも支持されており、安定した収益と配当金を得られるため、利回りを目的とした長期投資を行う上では、外すことのできない企業である。だが、福島第一原発事故のような、予測しないトラブルが発生した場合には、株価は暴落する。「東京電力」の場合には、「4,140円(2007年)」から「125円(2012年)」に大暴落した。

「電気」「上下水道」「ガス」については、生活の根底に関わる社会インフラであるため、公営企業が中心であった。しかし近年では、公営企業の採算が悪化していることから、「運営管理の民営企業への委託(民営化)」や、「消費者が電気ガス会社を選択する自由化」にシフトしている。

[ゼネコン]

しかし、社会インフラは経年劣化と技術革新により、定期的なメンテナンスや修繕(増築)が必要となる。これを担当するのが「ゼネコン(General Contractor)」と呼ばれる大企業である。代表される企業としては「鹿島建設」「清水建設」「大成建設」などである。

ゼネコンの業務は国家から発注された、ダムや道路、高層ビルなどの建設を「請け負う」ことである。実際に現場作業をするのは、ゼネコンから仕事を依頼された「下請け/孫請け」の中小企業であり、建築業界においても明確なピラミッド社会が構成されている。

国家や企業がゼネコンに工事を発注する場合、「入札」「談合」が付き物である。工事を依頼する側は「なるべく安く建てたいが、質を落としたくはない」という希望がある。

そのため、品質の維持に最低限必要な「予定価格」を計算し、ゼネコンに対して「競争入札(オークション)」で競わせる。「予定価格」はゼネコンに対して伏せられており、「予定価格を超えており」「最も安い予算」を提示したゼネコンが受注に成功する。

しかし、国家や企業の発注担当者が、ゼネコン側に「予定価格」をリークし、入札を有利にする代わりに「キックバック」を受け取る「談合」という行為が秘密裏に行われている。

[商社]

物理的なプラットフォームを解説上で欠かせない存在が「商社」という存在である。高学歴エリートの象徴とも言える「商社マン」。彼らが勤務する商社(総合商社・専門商社)においては、どのようなビジネスが繰り広げられているのだろうか?商社においては「貿易」「金融」「情報」の3つの事業が主軸であるが、日本においては「あらゆる商品を輸出入し、取引の仲介を行う総合商社」が有名である。

「鉄鋼、石油、天然ガス(原料や資源)」「コーヒー豆、農産物、小麦粉、医薬品」「繊維、精密機械、加工品、自動車」などを海外から輸入および販売ルートの確立、日本の製品を海外へ輸出する際の取引に関わり、国内における物流や小売店での販売をサポートする。

著名な商社を例に挙げると「三菱商事(通称:商事)」「伊藤忠商事(伊藤忠)」「丸紅」「三井物産(物産)」「住友商事(住商)」「豊田商事(豊通)」「双日」の7社がメインであり、いずれも年間売上高は1兆円を超える大企業である。

私たちが日常的に利用している「コンビニエンスストア」は、商社を深い関係を構築している。例えば「セブンイレブン」で知られるセブン&アイホールディングスは「三井物産」が1.8%出資しており、前身であるイトーヨーカ堂がセブンイレブンを日本で開業する際には「伊藤忠」が米本社との仲介役を果たした。

「伊藤忠商事」は「ファミリーマート」は「伊藤忠」の子会社でもあるのだ(出資比率50.1%)。さらに、「ローソン」は「三菱商事」が2017年に「ローソン」を子会社化しており、商社ではないが「ミニストップ」はイオングループの連結子会社である。

商社は私たちの物理的生活を支える根源であり、日本と海外をつなぐ「橋渡し役」であると言える。商社が存在しなければ私たちが生活を送ることは不可能であり、食品・医薬品・原料・資源など、文明を維持する上で必要不可欠な物資のネットワークを握っているのだ。

《情報社会におけるプラットフォーム》

私たちが利用している中で、最も身近な社会インフラは「インターネット」と「スマートフォン」であろう。これまで解説した社会インフラについては、物理的なインフラである。だが現代においては、情報社会における社会インフラ同士の激烈な競争が行われている。

例えばパソコンやスマートフォンを考えみよう。これらのデバイスにおいては、PCやスマホなどの「ハードウェア」、WindowsやMacintoshなどの「オペレーションシステム(OS)」、TwitterやLINEなどの「アプリケーション」が存在しており、それぞれにおいて個別の「プラットフォーム」が存在しており、ユーザーと開発企業が対立している。

[ゲーム機におけるプラットフォーム]

「プラットフォーム」という言葉を聞いて若い世代が思い浮かべるのはコンピュータゲームであろう。任天堂、SONY、Microsoft、の3社が、「ファミコン、64、GameCube、Wii、DS、Switch」「PlayStation」「XBOX」というハードを発売している。しかし、ソフトがマルチタイトルではない場合には、他社のゲーム機で遊ぶことはできない。

ゲーム機を開発する企業は、ゲーム機の開発および一般家庭への普及を負担する代わりに、自社のプラットフォームでソフトを発売したい、開発会社からライセンス手数料(およそ15%)を徴収する。

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「みずほ銀行産業調査部:コンテンツ産業の展望」より引用

[IT企業の目的はプラットフォームの独占]

情報社会においては、これと同様のシステムが「OS」「検索エンジン」「ショッピングサイト」「アプリ販売」「音楽/動画配信サービス」「比較サイト」「配車サービス」「漫画雑誌」など、あらゆる場所で構築されているのだ。IT企業の目的は、自社のシステムを「一般社会のありとあらゆる場所」に浸透させることであり、社会インフラの独占を目指すために、競合他社と競争を繰り広げている。

[OSとアプリケーション]

OSの場合には「Window」「Macintosh」「Linux(基本的に無料)」「iOS」「Android」「FireOS」が主要なOSである。パソコンやスマートフォンを販売する企業は、OSを開発する企業にライセンス料を支払う必要があり、私たちがハードウェアを購入する代金の一部に含まれている。MacとiOSについては、開発元であるAppleの製品にしか搭載することができないため、競合他社はAppleにソフトウェアを提供する。

iOS(AppStore)やAndroid(PlayStore)については「GameOfWar」「Minecraft」「ポケモンGo」などのゲームアプリや、生活を便利にするアプリが配信されている。

多くのアプリは無料で提供されているが、「有料アプリ」や「アプリ内アイテム」をユーザーが購入した場合、売上金のうち「30%」が開発元である「Apple」「Google」に支払われる。

アプリの開発元は、多くの利用者を抱えるプラットフォームにおいて、提供を容易にできるというメリットがあり、デバイスの開発や普及のコストを負担する必要がない。

[ショッピングサイトと手数料]

ここまでインターネットが普及した社会においては、ネット通販やオークションサイトが当たり前のように利用されている。Amzonの場合には、自社で販売する商品以外にも「FBA」「マーケットプレイス」と呼ばれる出品代行サービスが存在している。

FBAは商品をAmazonの配送センターに預ければ発送はAmazonが行うというものであり、マーケットプレイスは出品者がAmazonに出品した商品を自信で発送するというものである。利用者は古本、CD、Blurayなどを販売する個人出品者から、自社製品である家電、アクセサリなどを出品する法人など様々である。

出品者は買取ショップや、自社サイトで販売するよりも、Amazonという「プラットフォーム」に出品した方が人目に付きやすく、容易に商品を売ることができる。しかし、売り上げのうち「8%〜15%」ほどをAmazonに支払う必要があり、Amazonはプラットフォームを貸し出すだけで、莫大な手数料収入を得ることができる。

なお余談であるが、創業者のジェフベゾスがマーケットプレイスの構想を発表した時、社内から猛烈な反対が巻き起こったそうだ。しかし、現在では「EC事業の売り上げの半分」を占めるまでに成長している。プラットフォームを独占することが、どれだけビジネスに影響を与えるかを示す好例だろう。

[AmazonとAWS]

少しだけ話が脱線するが、実はAmazonにおける利益の10%は「EC事業(物理的商品の販売)」ではなく、「AWS(Amazon Web Services)」というクラウドサービスが稼ぎ出している。

AWSはサーバーを利用する頻度に応じて利用料を徴収するサービスであり、「NTT東日本」「NTTDocomo」「KDDI」「ANA」「HIS」「nintendo」「SHARP」」「日経新聞」「cookpad」「フジテレビ」など、錚々たる大企業が利用している。AWSを導入するメリットは、自社サーバーの構築やメンテナンスにかかるコストを抑えることができる点にある。

(2018年 東京多摩市で三井不動産が受注し、請負企業である準ゼネコン「安藤ハザマ」が施行中のビルが炎上したが、これはAWSのデータセンターであると言われている。)

[出品形式のショッピングサイト]

国内最大のECサイトである「楽天市場」においては、全国の店舗や個人が商品を出品している。恐竜の化石から1億円のビンテージワインまで、あらゆる商品が出品されている。利用者には「月額出店料:2万円〜10万円」「販売:2.5%〜5.5%」を楽天に支払う必要がある。

古着や使い掛けの化粧品などを販売する「ヤフオク」「メルカリ」については、売り上げに対して「約10%」が徴収される。また、メルマガや小説を直接読者に配信できるサービス「note」においても「10%」の手数料が徴収される。

[商品売買を加速させたアフィリエイト]

「Amazon」「楽天市場」「ヤフオク」「メルカリ」すべてにおいて、「アフィリエイト」と呼ばれる仕組みが用意されている。これは商品を所有しないネットユーザーが、ショッピングサイトで販売されている商品を、第三者に紹介することで売り上げの「1%〜8%」を紹介料として入手できるシステムである。

販売者は自ら宣伝にかける手間が省け、購入者は存在を知らなかった商品の情報を得ることができ、サイトの運営元はより多くの売り上げを獲得することができる。そのため、インターネットでアフィリエイトを生業にするフリーランスも多く存在している。

しかし、アフィリエイトで紹介される商品に必ずしも価値があるとは限らず、この仕組みを悪用してボロ儲けする人物も数多く存在している。(詳しくは「第4章:裏社会」で紹介する)

[検索エンジンと広告]

インターネットを利用する上で欠かせないのが、「検索エンジン」「比較サイト」である。ネット検索を行う際には「Google」「Yahoo!」といった検索エンジンを必ず利用している。例えば「iPhone」と検索した場合には、検索結果の最上位に「広告」と小さく表示されたリンクが表示される。これはサイトを運営する企業がGoogleに「広告料」を支払うことで、優先的にサイトを表示させているのだ。

Googleの場合には、検索結果に表示される「検索広告」、サイト上にバナーを表示する「ディスプレイ広告」、Youtubeの再生時に広告を表示する「動画広告」、アプリ上に表示する「アプリ広告」などがある。

料金については、バナーやリンクのクリックに応じて払う場合、ユーザーが電話で問い合わせを行なった場合、など成果が無ければ料金を支払う必要がない。また、「1日1,000円」など自由に予算を設定することが可能であり、多くの検索ユーザーを抱えるGoogleは、「広告」により収益を上げている。

[Youtuberと広告収入]

Youtubeへの動画配信のみで生計を立てているYoutuberについても、動画に表示される広告によって収益を得ている。動画が1再生される毎に支払われる広告収入は、「約0.1円」と金額は低いが、動画は同時複数的に視聴者が閲覧するものであり、過去に投稿した動画についても自動再生などにより、繰り返し視聴される。動画100本×10万回再生された場合には、単純計算で「100万円」の収入となるのだ。

1000本を超える動画と、何百万人のチャンネル登録者(ファン)を抱える、有名Youtuberについては、年収数千万〜数億円を稼ぎ出している。日本でもっとも有名なYoutuberである「HIHAKIN」は、ただのスーパーの店員に過ぎなかったが、趣味と宣伝を兼ねた動画配信により、芸能人を遥かに凌ぐ収入を得ている。

また、「フィッッシャーズ」「PDS株式会社」「HIKARU」「Kan&Aki's」「プリンセス姫スイートTV」「HIMAWARIチャンネル」など、10代の若者や、一般家庭の主婦がお遊びで投稿した動画で、莫大な収入を得ているというのが現実である。もちろん収益をあげるまでには2〜3年といった、長いスパンが必要であり、Youtuber同士の視聴者数争いが熾烈である。

なお、1再生あたりの広告収入は、「動画の再生数」「チャンネル登録者数「広告の種類」などにより異なる。また、日本におけるYoutuberは、「UUUM」「NEXTSTAGE」「GENESIS ONE」といった事務所に所属している。

Youtuberが事務所に所属するメリットは、撮影スタジオの利用や、税金などの管理、企業からYoutuberに依頼される「企業案件」を事務所を通して受注できるという点にある。2006年〜2009年頃にかけては、10代の学生がニコニコ動画において犯罪行為や、バカな動画をアップして叩かれまくった時代からは、考えられない状況であるが、これが現実なのである。

何よりも重要なポイントは、莫大な収入を得ているYotuberであっても、広告料はまず「Youtubeを運営するGoogle」に支払われており、Youtuberは「そこから分配された掲載料を受け取っている」という点である。

[プラットフォームとメディア]

広告については検索エンジンに留まらず、民法テレビ局、ラジオ放送、2ch、Blog、Twitter、Facebook、NAVERまとめ、LINE、などのサイトにも掲載されている。マスメディア、掲示板、SNS、ブログ、キュレーションメディアを無料で運営できる秘密は、広告収入にあるのだ。

「プラットフォーム」という言葉には、「基盤」「環境」「駅」という意味が含まれているが、現実世界の駅や電車においても、「掲示広告」「中吊り広告」などが掲載されており、人が多く集まる場所には必ず広告が掲載されるのだ。広告が人間に与える影響には計り知れないものがあり、詳細は「第2章:お金と仕事の仕組み」「第3章:人間の仕組み」で解説する。

[比較サイトは広告そのもの]

検索エンジンと同様に、私たちが調べ物をする場合には、日常的に「比較サイト」を利用している。飲食店の情報を掲載した「食べログ」、宿泊先の情報を調べる「じゃらん」、結婚式の情報を集めた「ゼクシィ」、家電製品の最安値を比較できる「価格com」....

転職先の求人情報を集めた「リクナビ、indeed」、アパートや住宅の家賃情報を集めた「SUUUMO」、中古車の価格情報を集めた「Goo-net」、美容室の検索と予約が可能な「ホットペッパービューティ」、アルバイトやパートの情報を掲載した「タウンワーク」などの比較サイトが存在する。

ご存知の方も多いだろうが、「HOTPEPPER Beauty」「じゃらん」「SUUMO」「TOWN WORK」「リクナビ」「indeed」「ゼクシィ」などの著名なメディアは、すべて「リクルート」が運営しているだ。

リクルートは「人生の転機」にフォーカスをしており、進学・結婚・転職・出産など、これまで情報が不足していた業界の情報を提供することで、ニッチな業界においても利益の獲得に成功している。まさに「揺り籠から墓場まで」を実践する企業であるといえる。

[比較サイトが収益をあげる仕組み]

これらの比較サイトにおいては、店舗や宿泊先の情報が一覧で表示されており、利用者は掲載された店舗情報やレビューを参考にして、評価の高い店舗を選択する。サイトを解説した当初は、サイト側が無断で店舗情報をかき集め、掲載量を徴収せずにユーザー(閲覧者)を集めることに専念する。

しかし、ユーザー数が増えればサイト側の立場が強まり、代金を支払ってでも掲載をしてほしいという店舗が現れる。

この段階に突入すると、営業マンによる店舗への売り込みが始まる。「このサイトに掲載すれば売り上げが増大しますよ」「多くのユーザー様にご愛用いただいており、集客率工場に繋がります」。このような売り文句で店舗から掲載量として「毎月:1万円〜20万円」の掲載料を徴収するのだ。

高評価の店は、売り上げが上がり、高額の広告料を支払うことができるため、掲載順位が上位に表示される。掲載順位が高い店舗はさらに注目を集め、さらなる売り上げ増加を見込めるという好循環に突入する。レビューも低く、掲載料を支払えない店舗は、掲載順位がどんどん下り、やがて閉店に追い込まれるという悪循環に陥る。

そのため、新店舗を開業するオーナーは、これらの掲載サイトに高額の掲載料を支払い、なるべく人目に触れるために経費として代金を支払うのだ。運営サイトは自社で店舗を運営せずとも、広告を掲載するだけで安定した収入を得ることが可能となり、掲載店舗の数が増えれば増えるほど、ユーザー数も比例して増加する。このようなビジネスを「ストック型ビジネス」という。

《デジタルコンテンツにおけるプラットフォーム》

インターネットの普及以前においては、「書籍」「音楽」「映画」などのコンテンツは、書店、CDショップ、映画館などに物理的に足を運んで、パッケージを購入する必要があった。

しかし現在においては、「Kidnle/iBooks/Kobo」「iTunesSotre/AmazonMusic/LINE Music」「Amazonビデオ/NetFlix/DMM.com」など、メディアをデジタル配信で視聴するサービスが利用できる。

これらもプラットフォームの1つであり、コンテンツは映画会社に所有権があるが、それを配信する場所を用意することで、コンテンツホルダーから手数料を徴収する。

利用者にとっては、わざわざ映画館やCDショップに足を運ぶ必要がなく、販売会社にとっても、パッケージの製造や配送を行う必要がなく、低コストでメディアを配信することができる。

プラットフォームを用意するAmazon・Apple・SONYなどは、運営サーバーを用意するのみで、各社のデバイスに対応した受信用アプリケーションを用意するだけで、コンテンツを所有する必要はない。コンテンツホルダー、ユーザー、プラットフォーム提供元、すべてがWin-Winの関係であるが、TSUTAYAやHMVなどの小売店は大ダメージを受けている。

たとえばAmazonは、「電子書籍:Kindle」「映画・ドラマ:Amazonビデオ」「音楽:AmazonMusic」といったサービスを提供しており、自社デバイスである「Fireタブレット」をはじめ、「iPhone」「iPad」「AppleTV」「Androidスマホ/タブレット」「PlayStation」などで、コンテンツを受信することが可能である。

[Amazonとライバル企業における闘争]

(iOSアプリでAmazonのコンテンツが購入できない理由)

不思議なことに、Appleが提供する「iOSデバイス」の無料アプリからは、あらかじめ購入したコンテンツを「受信」することはできるが、アプリ内から「有料コンテンツを購入」することはできない。

なぜなら、iOS向けに提供されるAmazonコンテンツを受信できるアプリが無料である場合でも、コンテンツが有料である場合には、「アプリ内課金」とみなされ、AmazonはApppleに売上の30%を支払う必要があるからだ。

Amazonは自社の利益率を優先するため、iOSアプリについてはアプリ内課金を無効化している。(Safariを経由すれば購入できる)

Amazonとライバル企業の対立は、Googleとも勃発していた。GoogleはデジタルコンテンツをTVで受信できる「ChromeCast」を発売しているが、このデバイスに対しては「Amazonビデオ」が提供されておらず、Amazonビデオを受信するためには「Amazonデバイス:FireTV」「Appleデバイス:AppleTV」を利用するしかないのだ。

これが原因でGoogleは、FireTV向けに提供されていた「Youtube」の視聴アプリを、突如無効化し、FireTVでYoutubeを視聴するのを不可能にした。Amazonはこれに対抗し、「Silkブラウザ」「FireFox」というWebブラウザを急遽リリースし、ブラウザを経由することで、FireTVでのYoutubeの視聴を復活させた。

[プラットフォームにおける企業間競争]

このように、プラットフォームを提供する各社において、激しいユーザーの競争合戦が繰り広げられている。MicroSoft、Apple、Google、Amazonは、ともに自社デバイスやOSで凌ぎを削っている。日本においては、Docomoが世界に先駆け「iモード」を普及させ、着メロ、株価情報、占い、壁紙、などのコンテンツを配信するプラットフォームを整備した。

しかし、スティーブ・ジョブズが発表したiPhoneが全てを変え、モバイル先進国であった日本の携帯電話は「ガラケー(孤立したガラパゴス諸島では、独自の生態系が形成されており、それを揶揄した言葉)」と呼ばれるまでに失墜した。

SNSやブログにおいても、かつては「2ちゃんねる」「mixi」「Amebaブログ」「前略プロフ」などが、インターネットの主流であったが、2018年現在においては「Facebook」「Twitter」「Instagram」「Youtube」などが、おもなWEBサービスとなっている。

現在主流となっているこれらのプラットフォームも、やがては消え去る運命となり、IT企業においては、「次世代のプラットフォーム」を作り出そうと、ベンチャー起業家たちが凌ぎを削っているのだ。

[クレジットカードと電子決済]

「クレジットカード」と「電子決済」においても、プラットフォームと言える存在である。クレジットカードは、ホテル・レストラン・宿泊施設など、ありとあらゆる店舗で利用することが可能である。私たちは手元に現金がなくても、クレジットカード1枚で代金を支払うことが可能である。

しかし、加盟店は売上金から「4%〜7%」の手数料を支払う必要がある。これは「クレジットカードで支払いを行える利便性」を加盟店側が享受していることに対する手数料である。クレジットカードの利用額に応じて、「1%〜2.5%」のポイントやマイルがたまるサービスが多いが、これは加盟店から徴収した手数料を、利用者に還元する仕組みである。

「楽天Edy」「WAON」「nanaco」「Suica」などの電子決済についても、まったく同様であり加盟店は売上に対して「3%〜4%」の手数料を運営側に支払う必要がある。中国においては偽札や盗難防止、利便性などの理由で、電子決済が急速に普及している。

「WeChatPay」「AliPay」「UnionPay」が中国における三大電子決済である。電子決済は支払いをスムースにし、ATMやキャッシュレジスターの複雑化に繋がる「小銭」の取り扱いを無くせることから、キャッシュレス社会は、今後日本においても間違いなく普及するであろう。

ちなみに「LINEpay」は、この市場を開拓するために、3年間手数料を無料にするキャンペーンでプラットフォーム競争に参入している。

【社会インフラとプラットフォームの総括】

このように「プラットフォーム(社会インフラ)」は、現代社会のありとあらゆる場所まで浸透しており、私たちの生活を支えている。逆に言えば、私たちは「プラットフォーム」に支配されており、「インフラを牛耳る者が世界を牛耳る」と言えるのではないだろうか?

例えばユダヤ陰謀論において必ず名前があがる有名な「ロスチャイルド家」であるが、彼らも社会インフラの整備に深く関わっている。ウィーン家のソロモンは「フェルナンド皇帝鉄道」を建設したが、これはヨーロッパ大陸初の鉄道である。また。パリ家のジェームズは「ヴェルサイユ鉄道」「北部鉄道(フランス国鉄の母体)」を作り上げたことでも知られている。

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インフラとは「仕組み」そのものであり、一度「仕組み」を作ってしまえば、半永久的に利益を獲得し続けることが可能である。これこそが「金儲けの本質」であり、「インフラを利用する側から作る側」に回る事で、支配者になることが可能なのだ。

現代社会においては、ありとあらゆる「ピラミッド型社会」が形成されているが、このピラミッドの頂点に立つのが「インフラを作り上げた人物」である。

Googleの創業者であるラリーペイジ、セルゲイブリン。Amazonの創業者ジェフベゾス。Facebookの創業者マークザッカーバーグ。Appleの創業者スティーブ・ジョブズ。ソフトバンクの創業者 孫正義。Alibabaの創業者ジャック・マー。

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彼らはみな、ベンチャー起業で奮闘する若者が憧れる人物であるが、あなたが「世界一のお金持ち」を目指すのであれば、「社会インフラとプラットフォーム」という視点を忘れてはならない。もう一度繰り返すが、「仕組みを作ったものが世界を支配する」のだ。


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