事業は人なり。事業の前に人を育てろ

「また赤字会社を立て直す事は、簡単ではありません。至難です。救急治療のようなものです。スピードが命です。直ぐに矢継ぎ早な手を打たないと出血多量でアウトです。」(松村謙三会長, Hazuki Company)
「新しいビジネスを自分の頭で考えて、勝負しないとダメです。(中略)立て直しを覚悟した者1人が寝食も忘れ、夢にうなされながら、自分の頭で考え抜いた閃きこそが唯一の成功の道です。」(松村謙三会長, Hazuki Company)

モンスト以前のミクシィどん底時代に朝倉さんの元でCOOをしていた経験から、松村さんがおっしゃる再建がスピード命というのはものすごくわかる。

企業が倒れるか倒れないかというのは、人でいうと生きるか死ぬかに近い。

そして、企業再生というものは、大事故・大災害におけるトリアージと極めて近いのだと思う。生きるか死ぬかに対して順位をつけて対応するということだ。

赤字を垂れ流して再生が極めて困難なようにみえるどんな不良事業だったとしても、経営者の本音は「全ての事業を残したい、全ての事業を再生させたい」なのだ。その事業が今の会社の成長を支えた創業事業であればなおのことだ。

しかしながら、赤字事業からの出血が止まらず、その手当のためのリソース、例えばそれは人員数であり、資金や設備等となる。それらが圧倒的に足りない。しかし、経営者は会社を潰すことは許されない。

会社全体での出血を止めて、利益を出すことは、ロジック、決定力、それを支える胆力があればできる。

しかし、ロジックで事業を生むことはできない。あまつさえ、経営者だけで事業を生むこともできないというのが私の考えだ。

事業は現場の人間が生み出すものである。事業の種は日々の不満だったりするかもしれない。それらを積み重ねた上でのロジックを踏まえた計画もでてくる。経営者から見たら最初の計画というのもは見るに耐えないものかもしれない。

でもそれ以上に思い込みや根拠の薄い自信、そういうものをひっくるめた「狂気」に経営者は圧倒されて、事業は成長していくことが多いように思う。

経営者の仕事は、どんなに苦しい状況でも、人を見出して、信じて、育てて、任せること。自分にない現場の狂気を感じてそれを活かすこと。

そのために、経営者はダウンサイドのリスクについては徹底的なヘッジをしておくことが必要だ。経営者は多くの失敗をしてきた人であろう。そして多くの困難な意思決定を一番してきた人だろう。だからこそ、失敗のヘッジは自分の経験と人脈で社内の誰よりもできる。失敗しても死なないようにすることとも言い換えられるかもしれない。

仲良し小好しで事業は生まれはしないし、当然合議制でも決まらない。だが、経営者だけが事業を生み出すことができるというのは私は幻想だと思う。

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