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未来の私へおくる、1歳の終わりの娘との日々


朝、少し先に起きて娘の寝顔を見ている。ぷっくりしたやわらかいほっぺを、長いまつ毛を、少し突き出た唇を、焼き付けようと見ている。

その視線に気づいたように娘が起きる。
笑いかけると、くすぐったそうににっこり笑い返してくれる。しばらくゴロゴロしながら微笑みあってギューする、最高のボーナスタイム。

そんな時間は割とすぐ終わる。
むくりと起きておもむろに彼女は振り付きで歌い出す。
「トントントントン、アンパンマン。トントントントン、食パンマン。ママも!」
「はい」
手遊び歌のアンパンマンバージョン。振りの角度が少しでも違うと、厳しい指導が入る。
「ちがん(違う)。こう!トントントントン…」
少しでも間違えると曲頭からやりなおしなので、こちらも緊張感を持って取り組む。
5回ほど通し練習をするとようやく気が済み、
「あっちであそぼ?」
とリビングにいざなわれる。そして1日が始まる。


最近服ぜったい着ないマンの娘は、昨日も大癇癪のすえにパジャマのズボンを伸ばせるだけ伸ばして、肩出しオールインワンのようにして寝た。私は夜中3回以上布団をかけなおした。
今朝ももちろん
「着ーなーい!ぬぎたい!」とオムツ一丁でのお散歩を要求。さすがに許可できない。
ママは貼りなおしすぎて粘着が弱弱になったアンパンマンシールをシャツに貼る。黄色いメンディングシールで雑に貼る。
「あれ?これってアンパンマンシャツじゃない?素敵!ママ着よっかな」
すると、すかさず
「娘ちゃんの!!」と着ることを快諾。
同じことをトップス、ズボンそれぞれ繰り返す。
お着替えに、毎回見込んだ時間の8倍くらいかかる、誇張じゃなく。


今日はパパは美容院のため、AMはママと近くの図書館風の遊び施設へ。 
ぜったい歩く、と固く誓いベビーカーを拒否した娘は、20歩くらい歩いたところで恥ずかしげもなく言う。
「抱っこ。」
また騙された…と思いながら13キロの娘を抱えて駅まで歩く。満足そうな顔で「ずっと抱っこ。」と要求する娘、やわらかくてあたたかくて可愛い。でも重い。

遊び施設について、たくさんの絵本を読んで満足した娘は1時間くらいで
「お外行こっか。」
と言う。帰りたくないー、とぐずぐずせずほっと一安心。そうだね、帰ろうか。とママが靴を履き、娘にも片方靴を履かせ…たところで彼女は脱走した。

片足靴を履いた状態で、全速力で館内へ戻っていく娘と一瞬呆然とする私。
34歳にして全力ダッシュで追いかけ、確保し、抱えて館内を去る。

帰り道も当然のように「ずっと抱っこ」とのご所望だったので13キロを抱えて家までの道を歩き、昼ごはんの焼きうどんを作ってたら若干腕が震えていた。


ここまで書いて寝落ち。



また別の日は、隣町の遊び場へ。
地域のお話会をやっていてそれに参加する。
いつもめちゃくちゃおしゃべりで、「まあるいたまごぱちんとわれてー、バイキンマンでてきてからー、ほんとー、やられて、やられた。ほーんと。うん、うん。 」など熱心にお話ししてくれるんだけど、知らない大人や子どもたちに囲まれてお利口モード発動。じっと本を見つめて、おとなしーく固まってた。「はじまるよ、はじまるよ、にー、とにー、でにんじゃだよ、ニンニン!」みたいな手遊びも、指一つ動かさない。後に家に帰ってから得意気に披露してくれた。

公園に寄って帰る途中、いち、に、さん!でママとパパに引っ張られてジャンプするのがお気に入りで、何度もせがむ。

途中で地面にへたり込む娘。そしてやっぱり「だっこ。おんぶ。」
明らかに抱っこ紐からはみ出まくっておんぶされる娘、夫が撮った写真を見るとめちゃくちゃ幸せそうな顔してた。
あたたかいなぁ、でもまじ重いなぁ、と背中の熱を感じながら、13キロを抱えて隣町の家までなんとか到着。

家に着いてから、ヨギボーに倒れ込んで娘と私が交互に寝たふりをする、という謎の遊びを延々とする。
私が寝たふりをしていると熱烈にほっぺにチューして起こし、キャキャキャ!と大笑い。
娘ちゃんも!と言い、娘が寝たふりをすると、今度は私が娘のほっぺに熱烈にチュー。キャキャキャ!これを飽きもせず20セットは繰り返す。もうお風呂洗うよ、あー楽しかったね、と言ってお風呂場に行くと、「あーたのしかった」と着いてくる娘。
その間皿を洗う夫。


私の鼻にできたニキビを見て、
「ママ、これ痛い?」と心配してくれる。うん、痛いのと返すと、「シールぺったんしてあげるね」とドキンちゃんのシールを貼ってくれる。やさしい。


家族3人でスーパーへ買い出しへ。店内からずっと握りしめてた立派なバナナを一本食べ終えてすぐ、キッチンにいる私に「バナナおかわりかーしーて…」と気まずそうに切り出す。許されざる願いだとわかってはいる感じ。
もちろん夕飯前にバナナ2本与える親などいない。おかわりなーいーよ、と伝えると、大粒の涙を瞬時に流して「バナナおかわりかーしーてー!かーしーてー!」と訴える。こんなことに涙を使うな。
無理だとわかるやいなや、「チーズかーしーて」と要求をチェンジ。切り替え早い。仕方なく、ベビーチーズを一粒あげる。


夜、一緒にお風呂に入る。
肩まで使って10までかぞえる。英語バージョンも覚えて、テンまで数える。うちの子天才なのでは?といつも思う。
ママあっち向いて、と言われ背中を向けると、ほっぺを何度も私の背中にくっつけてくる。
「ママは娘ちゃん大好きー、ママは娘ちゃん大好きー🎵」という、300回は歌ってきたオリジナルのラブソングを背中に向かってまた歌う。


お風呂から上がって、鏡の反射でできる光の模様を「歯磨きしないと消えないおばけ」に見立て、なんとか仕上げ磨きをやり遂げる。
お水をのんだら、鏡をそっと裏返して、むしばおばけ消えたねぇ、歯磨きできたからね。えらかったね。と小芝居。いつまでこの方法で切り抜けられるかな。

同じ絵本をなんども読んだ後、ぎゅーっと娘を抱きかかえた格好で一緒にウトウトする。
重いかな?と手をどけようとすると、「こう」と戻される。必要としてくれてるね、かわいいなぁ、幸せだなぁ、ありがとねーって思う。

なんか色々書いたつもりだけど、もう9割忘れてる気がする。
もっと娘のかわいい瞬間も憎たらしい瞬間も面白い瞬間も山ほどあるはずなんだけど、次々起こるいろんな出来事に上書きされてしまうのよ。

少しだけ、雑だけど数年後の私に届けます。
もうすぐ終わってしまう、一丁前だけど小さいかわいい1歳の娘との時間はこんな感じだよ。
大変だしクタクタだし面倒だけど時に最高です。
少しでも思い出せますように。

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