三菱UFJ(8306)の未来は?マイナス金利解除の影響を探る
三菱UFJ(8306)は銀行業界のトップランナーとして常に注目されています。時価総額では銀行業界首位を誇り、新NISA買付ランキングでも堂々の2位に位置しています(2024年1月時点)。しかし、最近では株価が軟調に推移しています。
3月中旬以降、三菱UFJの株価が上昇しないのはなぜでしょうか?マイナス金利解除の期待から株価が上がると予想し、現在の動向に疑問を抱いる方も多いのではないでしょうか。この記事では、三菱UFJの株価の動向や業績について分析し、マイナス金利解除の影響に焦点を当てて、今後の値動きについて予測していきます。
※投資は自己責任でお願いします。
はじめに
三菱UFJ(8306)の企業概要
三菱UFJ(8306)は、日本の3大メガバンクの一つで、銀行業界の時価総額ランキングトップです。2005年に三菱東京フィナンシャルグループとUFJホールディングスが合併して設立されました。主に銀行業務、証券業務、資産管理、保険などの金融サービスを提供しています。時価総額は18兆円に及びます。
直近の株価の推移
2024年からの株価の推移は以下の通りです。
2024年の年明けから、三菱UFJの株価は着実に上昇していました。しかし、3月中旬になると、市場はマイナス金利解除の可能性に注目し、期待が高まりました。それにもかかわらず、株価は軟調な動きを見せ始めました。さらに、解除が発表された3月19日には、一時1500円を割るなど、株価は乱高下しています。このような値動きの背景には何があるのでしょうか?そして、今後の株価の展望はどうなるのでしょうか?
銀行業について
銀行業界は、我々の日常生活に深く関わる重要な役割を果たしています。しかし、その仕組みや利益の出し方は一体どのようなものなのでしょうか?
金利差益
銀行業は一般的に、長期金利と短期金利の差である金利差益を利用して利益を得ることがあります。これは、銀行が短期の預金を受け取り、それを長期の貸し出しに回すことで利益を生み出す仕組みです。そのため、長期金利が高くなると銀行業は利鞘を伸ばすことができます。マイナス金利解除で業績が良くなると思われてるのはこの金利差益によるものですね。
手数料収入
銀行は、口座維持手数料、ATM手数料、クレジットカード手数料などの手数料を収入として得ます。
投資収入
銀行は自己資本や預金を使って投資を行うことがあります。例えば、株式や債券、不動産などへの投資によって収益を得ることができます。
金融政策の近代史:バブル崩壊
失われた30年間
日本は、バブル崩壊から30年が経過しましたが、なおもデフレの影響から抜け出せずにいます。金融緩和政策により、長期金利は低水準を維持しており、これが金融業界にとっても課題となっています。長期金利の低水準であることにより、金利差益の恩恵を受けることが難しくなります。その結果、バブル崩壊後、銀行業界全体の株価が低迷していました。
異次元緩和政策
日本は、通常の金融緩和政策では目標とするインフレ率である2%を達成できないため、2016年に黒田東彦総裁のもと、異次元緩和政策を採用しています。その中でも、特に注目されているのがマイナス金利政策とイールドカーブコントロールです。
異次元緩和の出口?
2022年より、日本は徐々にイールドカーブコントロールの条件を緩和し、2024年3月18日にはついにイールドカーブコントロールの撤廃及びマイナス金利政策を解除しました。現在の日本銀行の総裁である植田幸弘氏は、「2%の物価安定の目標が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況になった」と述べ、長いデフレからの脱却を示唆しています。
三菱UFJの株価推移
2016年~2022年11月(異次元緩和期)
この期間は黒田総裁により異次元緩和政策がとられ、金利が低迷しており業績も悪く、業界の将来性も見通せない状況でした。株価は500円~700円程度と現在の半値以下で推移しています。
2022年12月~2024年3月(異次元緩和の終了まで)
この期間は異次元緩和の出口に向かっていることの期待から、銀行業全体の株価が大きく上昇しています。三菱UFJは2012年12月12日の終値の761円から2024年3月上旬に1640円を超すなど、大きく株価を上げました。
2024年3月19日前後(異次元緩和終了)
2024年3月19日にマイナス金利解除の思惑が高まるなか3月8日に1645.5円を付けるなど非常に堅調な値動きを続けていましたが、それ以降軟調な動きが続き、マイナス金利が解除された3月19日に一時1479円をつけるなど、マイナス金利による株価上昇を期待する投資家を裏切る結果となりました。
三菱UFJの株価動向解析
2024年大発会から30%以上の上昇
この2024年の大発会から300円、30%以上も株価を上げていました。この値動きは確実にマイナス金利解除の思惑が大きく寄与していたと推察します。
マイナス金利解除の実態
三菱UFJはマイナス金利解除の影響について以下のように語っています。
実は三菱UFJの2023年度最終益は1兆3千億を予定しているため、プラス500億であっても、業績への影響は4%程度と限定的です。
マイナス金利を解除するだけでは30%の株価上昇を正当化できる根拠にはならないのです。
PBR一倍割れ問題
次に業績についても考慮していきます。三菱UFJをはじめとするメガバンクは長い間PBRが一倍を割れており、東証より改善指示が出ています。これに対応するため亀澤社長は日経の記事で2024年にPBR1倍を超える予想を語っています。
三菱UFJ亀澤社長一問一答「PBR1倍、24年内に達成へ」 - 日本経済新聞 (nikkei.com)
この目標のとおり、2024年3月現在PBR1倍を超えており、市場にはある意味目標を達成した、という認識が広がっている可能性があります。
配当利回りの低下
三菱UFJの2023年度の配当は41円としており、株価が1600円を超えると配当利回りは2.5%程度と高配当とは言えない水準になります。
PERの上昇
三菱UFJは長らくPER10倍未満の企業でしたが、1600円を超えると14倍程度となり、バリュー株とは言えない水準になります。もちろん成長が持続すればまだまだ割安ではありますが、今までのPER水準から大きく離れることになります。
欧米諸国の利下げトレンド
欧米諸国ではインフレが落ち着きをみせ、これから利下げする方向へと進めています。日本のメガバンクは海外でも金利差益を得ていることを意識しなくてはなりません。つまり、日本はこれから金利が上がっていくかもしれませんが、一方で利下げをする海外での収益が減ってしまう可能性があります。
結論:小さいバブルが弾けた?
マイナス金利の思惑があったとは言え、短期的に株価が上がりすぎた三菱UFJ。長らくホールドしていた株主からすると過熱感を感じていたのではないでしょうか。マイナス金利解除が実態以上に評価され、目標であったPBR1倍を超え、PER14倍にも達したため、利確売りがさらなる売りを呼びマイナス金利解除を待たずして雪崩が起きてしまった、というのが実態ではないでしょうか。また、バリュー高配当株としての魅力が減衰し、需要が減少したとも言えます。言い換えればマイナス金利解除による業績成長思惑、小さいバブルが弾けて業績水準にサヤ寄せした、と言えるでしょう。
今後の株価動向について
需給面の分析
3月19日現在において、株価は1500円台前半で推移しています。3月19日には一時1400円台をつけましたが、その後すぐに戻して下髭をつけたことから、1400円台ならまだまだ需要が強いことを示すものと思います。一方、1500円台後半以上で高値掴みしている人が多く、需給面では上値が重くなりやすいため、すぐに1600円台に戻すことは考えにくいかと思います。また信用買いも多く、しばらくは1550円前後の値動きになるのではないでしょうか。
業績面での分析
三菱UFJは配当性向40%を目指しているため、利益が増えれば配当金も増えることになります。三菱UFJが出している業績予想から2024年度の一株益は110円程度で4割で配当は44円になります。しかし、この3Qの時点でこの業績予想をほぼ達成していることから一株益は130円以上を目指せるのではないでしょうか。このことから来期も同程度の業績であれば、配当金は50円まで上げる可能性が高いと思います。最低でも45円まではあげるのではないでしょうか。もし50円まで上げた場合、配当利回り3%の水準まで買われて1667円となるため、次回の業績発表が出た後にそのあたりの価格帯を目指す可能性は高いと思います。
結論
これからの株価の動きは以下の通りと予測します。
・直近の値動きは1550円前後で推移
・来季の業績予想が出て配当金が50円程度になったら1650-1700円程度を目指す展開
おわりに
三菱UFJを取り巻く過去、マイナス金利解除の影響や株価の推移について説明しました。この記事が少しでも皆様の投資の参考になればうれしいです。
※これより下は有料部分ですが中身はありません。募金のお気持ちで購入いただけますと幸いです。
ここから先は
¥ 100
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?