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世の中に絶へてコロナの無かりせば―引きこもり大学生活―

 世の中がコロナコロナ自粛自粛カネがない仕事がない政治家は何をやっているんだカネをくれ補償をくれというムードになったのはいつからだろう。わたしはだんだんと水温が上がっていっていることに気づかず茹であがってしまったガエルよろしく、いつの間にか世界レベルの緊急事態の渦中にいた。

 少なくとも年が明けたばかりのころは、いや大学の春休みが始まったころは、まだ新型コロナウイルス感染症という言葉はそれほど身近ではなかったはずだ。中国のある都市がやばいらしい、クルーズ船がえらいことになっているらしい、くらいの認識しかなかった。そのころは、アジアが危なくなってきてもヨーロッパに逃げれば生き延びられるだろうかと考えていた。今考えると滑稽だ。いつのまにか、コロナウイルスはとても身近な存在になってしまった。あまり詳細を書くと居住地が特定されかねないので詳細は伏せるが、だんだん感染者情報が近づいてくるのをニュースで知るのが怖かった。留学に行っていた友人は当初は折角来ているのだし、しばらくの間現地で生活する、と語っていたが、帰国便が無くなるのを恐れて結局帰ってきたそうだ。

 世界中どこにいてもこの感染症から逃げることはできない。世界中どこに行ってもこの騒動から逃げることはできない。だれもがこの感染症とこの感染症が引き起こしている問題の当事者なのだ。そのことが自分は今一番恐ろしいと思っている。

 大学の試験で思っていたよりも悪い点数をとっても、それは私個人(とスポンサーたる保護者?)の問題であり、電車で隣に立っている名も知らぬ彼には全く関係のない話だった。人間関係の悩みも、恋人とのすれ違いも、小学校の時崩壊気味だったクラスも、全部一歩そこから踏み出せばそんなことは問題じゃないと思える別の世界があった。何とか生き延びていくというのは、そうやってちょっとだけ逃げ込むことを許してくれる、小さな世界を増やしていくことだと思っていた。

 でも、今回ばかりは逃げ場がないのだ。大学の友達も、家族も、年に一度だけ会う友達も、外国にいたはずの知り合いも、恋人もTwitterで仲良くしてくれている方々も、みんなコロナの話をしている。そのことが本当に恐ろしい。物理的にも不要不急の外出を控えるべきだというのでほとんど家から出ずにいるのに、心理的にも6畳の一室に閉じ込められているような気分になる。

 いつか世界がまたバラバラになる日が来るために、今はもう少しだけ皆で力を合わせなければならない。

 今回イラストのテイストを変えてみました。暇だったので……。

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