田窪行則

引退まじかの言語学者>引退した言語学者になりました。思いつき段階の言語学ネタのメモや韓…

田窪行則

引退まじかの言語学者>引退した言語学者になりました。思いつき段階の言語学ネタのメモや韓国ドラマ、歌謡曲ネタなどを投稿します。

マガジン

  • 歌謡曲の言語学

    歌謡曲、J-POPを言語学的に考察します。これを読んでも特に歌がうまくなるわけではありませんが、すこし楽しみが増します。というか、書いてる自分は楽しい。

  • 韓国日記

    大学院博士課程を終えて韓国の大学に日本語教師をしていた時の思い出を書いています。新婚時代のエピソードが中心。

  • 夫婦の会話の言語学

    日常的な夫婦の会話を見ながら言語学的テーマを見つけます。基本は創作ですが、我が家がモデルなので、なんちゃって大阪弁で話します。私の心の声は岡山弁になることがあります。

最近の記事

キノコる先生の呪いーダジャレおじさんとルー大柴教授における抑制と活性化

このあんまり内容が無いお話は、恒例の松浦氏主催の「言語学な人々」というアドベントカレンダーの12月24日用に書いた物です。昨年は出遅れて書けなかったので、参加2回目になります。  旧題「内容が無いような話」は、内容をあまり反映していないので、「キノコる先生の呪い」と変えました。ご本人と出版社の許可を得て川添さんの本の書影を使わせていただきました。 はじめに我々研究者は科学研究費の申請書を書く時期になると、みんなそろってSNSで、「科研が書けん。」といって嘆き、書いた後は「内

    • 奥村チヨ「終着駅」

      奥村チヨの歌った「終着駅」という歌を歌っていたら、実は結構不思議な歌だということが分かった。 「終着駅」千家和也作詞、浜圭介作曲 奥村チヨ歌唱(https://www.uta-net.com/song/2500/) この歌は女の人が恋に破れて旅に出るという、定番の歌詞(「津軽海峡冬景色」とか)かと思っていたら、この「終着駅」は「悲しい女の吹きだまり」で、一人でなく、一人、また一人と「悲しい」女が汽車から下りてくるという。しかも、「真冬にはだしは冷たかろう。大きな荷物は重た

      • 宮古島のオトーリと挨拶文化

         宮古島のオトーリをご存じだろうか。宮古島ではオトーリと呼ばれる酒席での交流の儀式があり、広く行われている。似たような儀式は琉球弧の各地で行われており、与論では与論けんぽうと呼ばれるものがある。どちらも酒を飲む前に挨拶を行い、注いで酒席を同じくする人たちに、酒を注いで回る儀式であって、いろいろな作法がある。    宮古島のオトーリはもともと貴重だった酒を皆ですこしずつ分けて飲むということから始まったらしいが、豊かになった現在では泥酔するまで飲むようになってしまい、酔って路上で

        • ハワイ滞在記1977年その2

          1.マコーリー先生の授業マコーリー先生の授業は大教室で、学生以外にたくさん先生方も受けていました。語彙意味論といったもので、killとcause to become not aliveを結び付ける話や、「止める」と「止まらせる」はどう違うかなどです。「止める」は通常のキーなどを使った止め方、「止まらせる」は例えば、キーをエンジンに投げ込んで止める場合でも使えるなどという話です。そんな気もするけど、そうとも言えないなどとみんなで議論しました。だって、いま「キーを投げ込んで止める

        キノコる先生の呪いーダジャレおじさんとルー大柴教授における抑制と活性化

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          6本

        記事

          夫婦の会話の言語学:言語学者の家庭変6 カムカムエブリバディ、語用論的関数

          以下は創作です。大阪弁はなんちゃってです。岡山弁はふらつきます。カムカムエブリバディのドラマの進行に合わせて、大杉正明さんが、天野ひろゆき、歌手のAIと一緒に英語のラジオ番組やってます(これは事実)。 夫:カムカム明日最終回やで。 妻:ひなた英語うまいなあ。でも最初は英語は最後の回だけでてくるて言われてたらしいで。なんかあって台本変わったんちゃう。 夫:え、そんなん、途中で台本かえたりせーへんやろ。 妻:でも、このまえひなたがラジオで言うてた。ラジオのカムカムイングリ

          夫婦の会話の言語学:言語学者の家庭変6 カムカムエブリバディ、語用論的関数

          夫婦の会話の言語学:言語学者の家庭変5 外延と内包

          以下は創作です。大阪弁はなんちゃってです。 夫:今日たくさんあるいたね。寒くなってきたし、かえってなんかあったかいものたべたい。 妻:あったかいものてなに? 夫:何があるの?冷凍のタコ焼きチンするぐらいかなあ? 妻:それやったら「冷凍のタコ焼きチンして食べたい」ゆーたらええやないの。 夫:そんなん、タコ焼き食べたいわけやないんやから、そんなん言われへんよ。 妻:わたしも疲れてるんやから、なんもよう作らへんよ。 夫:だから、冷凍のタコ焼きでいいねんけど、タコ焼き食

          夫婦の会話の言語学:言語学者の家庭変5 外延と内包

          夫婦の会話の言語学:言語学者の家庭変4

          以下は創作です。大阪弁はなんちゃってです。 妻:スイデンのなんちゃらってあった? 夫:え、なんのこと? 妻:よだれが垂れるやつ。 夫:よだれ??? 妻:なんか、うらやましいとかすばらしいとかあるやんか。 夫:垂涎(すいぜん)のこと?よだれが垂れるという。垂涎の的とか垂涎のまなざしとか。なんでそんなん知りたいの。 妻:サークルのみんながハイキング行くていくてゆうてんねんけど、私はいけへんから、うらやましいなあとか言うのをスイゼンやなあて言えるの。 夫:そら言えへ

          夫婦の会話の言語学:言語学者の家庭変4

          Hawai'i滞在記1977年-その1

          韓国滞在記が終わったので、今度はHawaiiの話をすこししようかと思います。こっちも45年前の話なので、記憶が定かではありませんが、いろいろ書けないこともあったので、当たり障りのないところで何回かにわけで書いていくことにします。 1.最初の海外旅行1977年、博士課程の1年の時にに初めてハワイに行きました。初めての海外旅行です。中学校3年か高校1年の時に英検2級を受けたときに面接官からハワイのことを聞かれて、ハワイと発音したら、Hawai'iであると言われて、減点されてそれ

          Hawai'i滞在記1977年-その1

          夫婦の会話:言語学者の家庭変3

          以下は創作です。大阪弁はなんちゃってです。 妻:**の渚の*ーチって**本でるらしいわ。読んでみたいわ。 夫:渚のビーチ。何の本やねん。渚のビーチって、「渚の渚」やんか。Lake Tahoeとか、Sahara Desertとか。 妻:何言うてんの? 夫:Lake TahoeのTahoeはlakeのことなので、Lake TahoeはLake Lake、湖湖(みずうみこ)となるし、Saharaはdesertのことやから、砂漠砂漠ってことになる。ビーチって渚のことやんか、な

          夫婦の会話:言語学者の家庭変3

          夫婦の会話の言語学:言語学者の家庭変その2

          以下は創作です。関西弁はなんちゃってです。夫は心の中では岡山弁になることがあります。 新婚夫婦の会話1981年編 妻:市場でリンゴが売ってたから買ってきたわ。 夫:(おお、動的述語の対象ガ格の使用例じゃが。こんなに自然に聞けるとは)リンゴが売ってた?そう言うの、「リンゴを売ってた」の言い間違いじゃないの? 妻:なんやの。「リンゴが売ってた」言うたらあかんの? 夫:いや、言い間違いやないんやね。そう言うんやね。 妻:なんやの。「リンゴが売ってた」は「リンゴが売ってた

          夫婦の会話の言語学:言語学者の家庭変その2

          夫婦の会話の言語学:言語学者の家庭編(言語学者の家庭変)1

          以下は創作です。実話ではありません。関西弁はなんちゃってです。 夫:(やかんを指して)これ水? 妻:水ちゃう。いっぺん沸かしてる。 夫:水を沸かしてさましたものは水やないの? 妻:生水でないことを言いたいだけやないの。 夫:水は水や、お湯やない。さゆも水。「さゆを沸かす」と言ったら、お湯と違って、結果目的語でなくて、普通の目的語やないの。 妻:あんたうるさい。わかってるんやったら「これおさゆ?」とでも聞きなさい。 夫:これおさゆ? 妻:そう、昨日沸かしたさゆ。

          夫婦の会話の言語学:言語学者の家庭編(言語学者の家庭変)1

          夫婦の会話の言語学:「それより」

          以下は創作です。大阪弁はなんちゃってです。 (朝、「妻」がコーヒーを入れるガラスの容器を割ってしまった) 妻:肉まん食べる? 夫:食べる。それより、コーヒーのガラス容器、ニトリに買いに行ってくれるの? 妻:肉まん、要らんの? 夫:「要る」ゆーたやん。 妻:「それより」ゆーたやん。 夫:「肉まん」の答えは「要る」でしまい。それで次の話題に移ってる。 妻:そんなん、勝手に話題替えられたら困るわ。 夫:肉まん、食べるかどうかに深い議論は必要ないやん。「食べる?」「

          夫婦の会話の言語学:「それより」

          偉い先生との対話

          1.とってもえらいD先生の場合友人のA氏:(私がD先生のところで打合せをしていると知っているA氏が急用でD先生の研究室に電話) A氏:D先生のおへやでしょうか。 D先生:はい。 A氏:田窪さんいますか。 D先生:はい。 A氏:(え、「はい」でしまいかい。どうしよう、機嫌が悪いのかなあ)。あの、その、この、呼んでいただけますか。 D先生:田窪さん、誰かから電話です。 2.おなじくらいえらいK先生の場合事務から電話:田窪先生、K先生から国際電話がありました。折り返し

          偉い先生との対話

          言語と計算-- 生成文法の立場から

           1.言語の習得我々は、計算の実行を繰り返すとそれほど努力なしで計算ができるようになる。たとえば、暗算や珠算の名人は、大変な速度で四則演算ができる。どのようにしてそのようなことができるのか我々にとっては非常に不思議である。しかし、考えてみると言語を話し、相手の言うことを理解できるということははるかに不思議なことである。どう考えても言葉を話すことは、暗算や珠算よりも複雑そうである。 暗算や珠算は名人にしかできないが、日本語を話すことは、すべての正常な日本人には、3、4歳までに

          言語と計算-- 生成文法の立場から

          韓国日記(おまけ)ー韓国で出会った人たち

          韓国で出会った人たちについて韓国生活は二年しか行かなかったけれど、日本人だからといっていやな目に会ったことは一度もなかった。日本人であるまえに、客人であり、教師である方を重んじてくれた可能性もある。あまり人前で日本語で話すこともなかったし。 僕が会った韓国の人は極端にいい人と、普通の人、かなりひどい人の割合が、3:6:1ぐらいの比率だったかな。極端にいい人の割合は日本より多いかもしれない。 SK先生主任のSK先生はいまでもなにかあるとお祝いをくれるし、韓国にいる間、とても

          韓国日記(おまけ)ー韓国で出会った人たち

          大学教師と学生との会話の言語学序章

          大学教師と学生の会話を言語学的に考察します。夫婦喧嘩の言語学と関連します。こちらの会話も創作です。モデルはありますが、多少(かなり?すごく)デフォルメされている場合があります。 大学教師と学生の会話(第一回目のトライ) 教師:T君、それってどういう意味? T:え、あ、済みません。直します。 教師:いや、その、間違ってるとか、悪いと言ってるわけじゃなくて、意味が分からなくて聞いてるんだけど。 T:あ、書き直します。 教師:いや、直せというんじゃなくて、意味が分からない

          大学教師と学生との会話の言語学序章