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人としての手触り感

昨日、お客さんである鉄道会社さんの研修センターに向かった。鉄道会社さんは、その路線の始点・終点に拠点を持っていることが多い。此度も行ったことのない遠い場所。長い時間、電車で揺られていく。

研修センターの横に、車掌さんたちが出勤する建物がある。今回は特にそういった方々にお会いする予定ではなかったのだけど、多くの方を見かけた。

いわゆる車掌さんに僕たちが普段会えるのは、基本的に駅や電車の中だ。改札の横だったり、ホームの上だったり、電車の最後尾だったり、車内のアナウンスもそう。そのどんなシーンでも、みなさん、いつも丁寧で真面目だ。きっかり決められた時刻に電車を走らせる。1分でも遅れるとお客さんから怒号が飛び交うこともあるし、酔い潰れた人の相手をすることもある。見るだけで大変な仕事のように感じる。

自分がかつて車掌さんと最も話したのはいつだろうか、、、そんなことを思い返すと、小学1〜2年生の頃な気がする。生まれ故郷の秋田、その奥地から県庁所在地である秋田駅まで約3時間。真冬の雪が強く降りしきる日だった。吹雪の影響で電車も遅れるし、乗り換えの時の駅のホームがさむくて、だんだん暮れてゆく街並みや点灯する街灯を見ながら「ほんとに着けるかな」と1人心細かった記憶がある。でも、そんな僕に優しく話しかけ、安心させながら連れて行ってくれたのは、車掌さんたちだった。あれから僕の中では、彼ら彼女らの温かさを探していたのかもしれない。

昨日の朝、最寄駅から研修センターまで歩くと、みなさんが出勤する建物が見えた。その駐輪場の横を通ると、3人の車掌さんが「昨日のあのシーンがさー」と笑いながらドラマトークを繰り広げている。その近くでは、ベンチで足をぶらぶらさせながらドロリッチを飲み空を眺める車掌さんがいる。

そんなシーンを見たときに、思わず「これだよこれ!」と嬉しくなってしまった。いつも見かける真面目で、丁寧な車掌さん。彼ら彼女らは職務を遂行するために、いつだってかっちりしてる。けど、1人の人間なのだ。それぞれ仲の良き人がいるし、家ではドラマも観るし、甘い飲み物を飲みながら空を眺めてぼーっとすることだってある。

駅や電車で見かける車掌さんたちには、そういう日常の手触り感をあまり感じない。そういうものなのかもしれないけれど、業務遂行のためにどこか無機質さすら感じられるその仕事ぶりに対し、そんな人間味を感じるシーンはどこか強烈に僕の脳裏に焼きついた。そんな人間味が思わず出ちゃう電車や駅も、あっていいんじゃないかな。

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