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あるカップルに酷く嫉妬した話。

「愛してるよ。」
「結婚したら、子ども何人欲しい?」
「もう、一生離れたくない。好き。」

色んな言葉で愛を囁くカップルたち。

言葉を発しなくとも、近距離で見つめ合ったり、キスをしていたり、抱き合っていたり、様々な表現で愛を確かめ合っているカップルがいる。

特に東京に来て、その色んな愛の伝え方には驚いた。

そんな彼らをみて、爆発しろ、とか見っともないと言って腹を立てる人もいれば、微笑ましく見守る人もいる。

僕は後者のタイプで、幸せそうでいいね!といつも心の中で思っているから、ジェラシーを感じることはほとんどない。


しかし、この統一地方選挙直前の昼下がり、僕はあるカップルに嫉妬してしまったのだ。

自宅近所のコンビニへサンダルを引っ掛けて歩く僕。

まもなくコンビニだというところに僕らの住む自治体の候補者パネルが立っている。

彼らはそこに立って2人で候補者を吟味しているのだ。

見るに僕と同じ世代の20代後半くらいと見受けられた。

この何とも言えない感情はなんだろう。
そのまま通り過ぎるのも良かったのだが、半ばスキップ気味に早足で歩いていた僕は歩みを緩めた。

結局この感情を言語化出来ぬままコンビニで買い物を済ませた帰り道、割と昼飯を迷ったというのにまだパネルの前にいるじゃないか、例の男女の姿がまだそこにあった。

僕はやっとこの自分の中に渦巻く感情を整理できた。

それは「嫉妬」だった。


どんな愛のある言葉より、
どんな肌の触れ合う愛情表現より、

自分たちの住む街の未来を作っていく旗振り役となるであろう選挙候補者をしっかり2人で話している姿は、僕にはすごく羨まく見えた。

「結婚したいね。」なんて直接将来を指し示す言葉でなく、

そんなことは当たり前かのように、もっと先の未来を描いていた2人の姿がとても美しく、そしてカッコよく見えた。

長い目で見て、2人が一緒になった後何年も先の未来を見ている2人の背中。

間も無く一緒になって、すぐ子どもをもうけるかもしれない。育児もしながら働く必要もある。いや、育児の前には産休、育休も取らないといけないし、産まれるまでの不安も沢山ある。
そして、やっと産まれても大人ふたりだけでなく、生まれた子どもにとっても住みやすい街だろうか。

自分たちが住むこの街はどんな未来にするべきか、自分たちが理想に掲げる未来を同じように高らかに語り、実現できそうな市議は誰か。
そんな風に、単なる未来の妄想でなく、未来を担う当事者として会話をしている彼ら2人の姿に激しく嫉妬した。

すごく素敵だった。

「誰に投票したって変わらないよね。」
「選挙なんてよくわかんないよ。」
なんて言ってる若者たちよ。

すごくダサいかもよ、その発言。

未来は僕らの手で作っていこうではないか。
まずは投票に行って意思表示をしようではないか。

(正直、一応口だけ人間は嫌だから投票には行ってるけど、頭の中じゃ僕らの一票で変わんないと思ってた節はあるように感じる。そこがまた、彼らの姿をみて恥ずかしく思ったのだ。)


そうだ!選挙、いこう!


終わり

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