見出し画像

杉並公会堂に響く日本フィルの音色

先日、twitterで
荻窪の杉並公会堂で
日本フィルハーモニーオーケストラの
公開リハーサルが行われると知りました。
 
「なぜ杉並区で、日本フィルが?」
と思ったのですが、
杉並区は1994年に
日本フィルハーモニー交響楽団と
友好提携を締結。
 
区は練習会場の確保協力などで支援し、
日本フィルはオーケストラコンサートや
区役所でのロビーコンサート、
公開リハーサル、
出張コンサート等の活動を行うことで、
区民のみなさんが
身近なところで質の高い文化に触れる機会を
提供しているのです。
 
昨日4月22日も
4月23日・24日にサントリーホールで行われる
日本フィルのコンサートの
公開リハーサルが行われました。

事前にそのことを知った時には
「そんな直前のオーケストラの
リハーサルを見学できるなんて!」
とびっくり。

杉並区民でなくても応募できたため
応募して楽しみに待っていると、
めでたく当選(^^) 

コロナ禍、もちろん考えました。
でも、心の洗濯も必要。
しかも、めったにない機会です。
 
昨日の午後、
有給休暇を取って出かけました。
 
荻窪までは、
吉祥寺まで歩いて、
それから電車でふた駅。
 
駅からてくてく歩いていくと、
どーんと立派な公会堂が。

いつ建て替えられたのか、
とても綺麗で新しく見えました。
 
参加人数が絞られているだけでなく、
全席座席指定
(誰がどこに座ったかわかるので
万一感染者が出ても
把握できるようになっているのでしょうね)
という対策も取られていました。
 
わたしの席は
大ホールの1F席の真ん中の少し後ろ。
 
といっても、1Fの舞台に近い
前半分は立ち入り禁止になっていたので
実質ほぼ一番前。
 
隣の方との間には1席ずつ
空席が設けられていました。
 
ちなみにこの大ホールの音響性能は
日本フィルの楽団員さんたちからも
その他の国内外の演奏家からも
「海外の著名なコンサートホールにも
勝るとも劣らない」
と高く評価されているそうです。

わたしがついたときには、
楽団員のみなさんが
すでに自主練習をしていました。
 
ああ、生のオーケストラの音を聞くなんて
いつぶりだろう?
 
あたたかくて優しい音色に
じーんとしながら
席に着きました。
 
オーケストラの演奏というと
みなさん正装されている
イメージがありますが、
昨日はリハだったので、
ジーンズとポロシャツ、
といったカジュアルな服装。
 
指揮者はロシア人指揮者、
アレクサンドル・ラザレフ氏。
 
若い時から
カラヤン国際指揮者コンクールで優勝し、
ボリショイ劇場や
BBC交響楽団などで指揮を行うなど、
幅広く活躍されてきた方です。
 
現在75歳のラザレフ氏は
2008年から
日本フィルハーモニー交響楽団の
首席指揮者となり、
2016年からは
桂冠指揮者兼芸術顧問として
長いご縁が続いているのだとか。
 
4月23日・24日のコンサートでの
演奏曲はグラズノフの
「交響曲第7番《田園》」と
ストラヴィンスキーのバレエ音楽
「ペトルーシュカ」。
 
公開リハーサルで聞けたのは「田園」。
(ペトルーシュカも聞きたかった‥)
 
わたしはグラズノフという音楽家のことを
知らなかったのですが、
彼はロシア人の作曲家・指揮者で
ペテルブルク音楽院の院長を
十年以上務めた教育者でもありました。 

「交響曲第7番《田園》」は
ベートーベンの「田園」を
意識した曲と言われているそうですが、
昨日はリハーサルだったので、
通して聞けるわけではありません。
 
指揮者のラザレフ氏は
「では、ここから」
とオーケストラ全体で
少し演奏させてみては、
気になるところがあると止めます。
 
なんせ本番前日ですから、
ある程度
「チェックしたいところ」
が絞られていて、
そこを追っているのだろうな、
という気がしました。
 
ある楽器だけを演奏させて
「ダダダ、ダーダー」
などと歌って手本を見せて
もう一度演奏させ、
「明日・明後日が本番なのに
まだこんなに丁寧に指導するんだな」
と驚くくらいに
かなり細かく指導していました。
 
時には
「スズキサン」などと
個別の演奏者に指導したり、
「君たちはこの曲を
そんな風に演奏したいのかい?
そうだね、私だってそんな風にはしたくないよ」
などと会話をしたりもします。
 
少しずつ進み、問題ない部分については
「はい、ここは大丈夫、
次に行こう」
のように進んでいくので
細切れではあるのですが、 
「ああ、あの重厚な音のうねりは、
こうやって音を重ねて出来上がるんだな」
ということを目の当たりにできて
とても新鮮でした。
 
ちなみに、ラザレフ氏は
ほとんどの指示は
英語で出されるのですが、
母国語がロシア語なので、
立ち入り禁止の1階席の前の方に
念のために通訳さんが座っています。
 
ラザレフ氏が英語では説明しにくいことは
通訳さんを通して楽団員に伝えられるのですが
印象深かったのは何度か
「もっと強く!もっと!」と指導した後で
通訳さんを通してこうおっしゃったこと。
 
「みなさんはステイホーム期間中、
思いっきり音が出せなかったかもしれません。
でも、今はコロナなんて忘れて、
思いっきり大きな音を出してください。」

・・・そうですよね。

楽団員さんたちだって
演奏の機会が減るだけでなく
練習だってご近所に気を使いながら
されているのでしょう
(全員の方が完全防音の戸建に
お住まいなわけでもないでしょうしね)。
 
「楽団員のみなさんにとっても、
このホールでこんな風に練習ができること、
サントリーホールで本番を迎えること、
きっと本当に嬉しいことだろうな」、
と思いつつ
一時間半余り、楽しませていただきました。
 
(もちろん、公開リハーサルの前後も、
オーケストラの皆さんのリハーサルは
続いていたのです)
 
昨年コロナ禍になってから
ラジオやCDでクラシックを聴く時間も
増えましたが、
生のオーケストラの演奏に触れられたこと、
音楽を愛するみなさんと
同じ空間で音楽を楽しめたこと、
本当に「こころの洗濯」のような
貴重な時間でした。
 
先行きの見えない
このような状況だからこそ
心を平静に保つために、
そして「世界はやはり美しいのだ」
ということを忘れないために、
このようなアートの力に触れることが
本当に大切だと痛感しました。 

帰る途中、公会堂の近くに
荻窪白山神社があることに気がついて
お参りに。

この神社のことは
聞いたことがあったのですが、
お参りに伺ったのは初めて。
 
「これも何かのご縁かもしれないな」
とお参りさせていただきました。


緊急事態宣言もまた発令されることになり
巣篭もりの日々がまた戻ってきます。
 
思いっきり笑ったり、歌ったり
思うように遠出ができる日が
早く戻ってきますように。
 
今回も最後まで読んでいただき、
ありがとうございました。
 
*電子書籍新刊
「1997〜英国で1年暮らしてみれば〜Vol.5」
https://amzn.to/2PbEgoJ

カフェで書き物をすることが多いので、いただいたサポートはありがたく美味しいお茶代や資料の書籍代に使わせていただきます。応援していただけると大変嬉しいです。