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魔女の宅急便を三幕構成で分解してみた

大人気映画『魔女の宅急便』をSAVE THE CATの三幕構成に基づいて、私の主観で分析してみた。私は映画後半のウルスラとキキが語り合うシーンが一番好き。この二人が同じ声優さんだっていうのが今でも信じられない。


■オープニングイメージ

草原で寝転びながらラジオを聴く主人公・キキ。「素晴らしい満月の夜になるでしょう…… 明日は晴れでしょう……」

■セットアップ&きっかけ

キキの旅立ち

ラジオの天気予報を聞き「今夜に決めたわ 出発よ!」と、お母さんの元へ走っていくキキ。キキの突然の旅たちについ寂しさを表すお父さん。母からは箒を、父からはラジオを受け取り、みんなに見守られながら空高く飛んでいくキキ。

【この時点で分かること】

  • 魔女は13歳になったら、親元を離れて修行をすること。

  • キキの母も魔女で、キキとは同じような道を歩んできた。

  • 今住んでいる街には大切な家族や友達もいて、いろんな関係性を立ち切って、新しい街へ出かけること。

■第一ターニングポイント

キキが修行をする街、住む場所が見つかる

空を飛びながらどの街で魔女として修行をするか考えるキキ。海に浮かぶ街「コリコ街」が気に入って降り立つが、街の住人たちにあまり魔女は受け入れられない様子……。唯一少年のトンボがキキに興味津々。

そんな中、となりにいた女性が坂の下を歩いている乳母車を押した女性に向かって、大声を出しているのに気付くキキ。その人は赤ん坊のおしゃぶりを持っているが、乳母車の女性は全く気づいていない。女性の元に持っていこうとする女性は、なんと妊婦。キキは自分が渡しにいくといい、空を飛んで女性の元へ届けた。

その後、妊婦はグーチョキパン店というパン屋さんを営むおソノさんだと知るキキ。キキはオソノさんに気に入られ、ここの空き部屋に住んでいいと言われる。こうしてようやく住む場所が決まったキキ。

■サブプロット

キキ、仕事と友情と恋の始まり!?

・キキはおしゃぶりの件で宅急便屋さんをすることをひらめく(仕事)
・同世代の子たちのように「素敵な服を着たい」という年頃の悩みを抱えるキキ。キキがショーウィンドーの靴を羨ましく見ていると、トンボたちが現れる。トンボが「ほんとに黒い服着てるだろ?」と友人らにキキを紹介するが、キキは馬鹿にされたように感じる(恋)。トンボは心からキキを尊敬しているんだから、もどかしい。
・キキに初めての配達の依頼が入る。しかし途中風に煽られ、配達するプレゼントを落としてしまうキキ。
・カラスの巣にも突撃してしまい、カラスに反撃されるキキ。そこでキキが落としたぬいぐるみを拾ってくれた森に住む18歳のウルスラに出逢う(友情) 。※カラスに「綺麗な顔をしてるね」というウルスラ。社会ではカラスを煙たがる傾向があり、そんな扱いをしている社会へのアンチテーゼ?そういえば風の谷のナウシカでもそんな描写があったな。
・なんとか配達を終えたキキは達成感から「素敵な1日だったわ」と言うが、その表情がなんともいい。そしてセリフはないけど、キキを心配そうに待つオソノさんと主人はまるで家族。
・店番するキキ。綺麗な格好をしてデートする同世代、仕事が成功しているファッションデザイナーさんを見て羨ましくなる。
・再び配達の依頼が入る。トンボにパーティーに誘われ、パーティーに間に合うように配達を段取るキキ。二件目の依頼では、あるおばあちゃんが孫のパーティーに向けてニシンのパイを作るから届けてほしいと言う依頼だったが、オーブンが壊れてしまい、断念しようとしているおばあちゃん。そこでキキは薪のオーブンでニシンのパイをなんとか焼き上げるが……
・天気は生憎の大雨。やっとのことで孫にニシンのパイを配達するが、「私このパイ嫌いなのよね」と冷たくあしらわれるキキ。さらに誘われたパーティーに着ていく予定の服もずぶ濡れになってしまい、せっかく迎えにきてくれたトンボの後を追いかけることもせず……次の日。キキは発熱してしまう。そこでおソノは考え……

■お楽しみ

おソノさんがナイスパス!キキに素敵な恋の予感!?

キキにトンボの家にパンを届けてほしいと言うおソノさん。キキとトンボに会話が生まれ、そしてトンボの空飛ぶ夢に付き合わされるキキ。トンボが発明した自転車に二人乗りをするキキたちだが、失敗に終わり大爆笑する二人。一気に心の距離を縮めたと思いきや……

■ミッドポイント

トンボの友人が現れて、飛行船の中を見にいこうと言い出す。しかしその中にはニシンのパイを届けた時の孫がいて、その場から立ち去ってしまうキキ。

■迫り来る悪い奴ら

せっかく仲良くなったトンボを蔑ろにしてしまい、落胆模様のキキ。

■全てを失って

・ジジの言葉が聞こえなくなってしまい、自分の異変に気付くキキ。キキは魔法が弱まってしまっていると気付き、必死に箒に跨るが……箒が折れてしまう(箒は母からの贈り物)
・空を飛べなくなったことで宅急便を休むことになったキキ。唯一の自分の個性である魔法が思うように使えないことで落ちるとこまで落ちるキキ。

■心の暗闇

・街に繰り出したウルラスがキキの元へやってきた。ウルラスに小屋においでと連れ出されるキキ。ウルラスと語り合う中で、徐々に元気を取り戻していくキキ。(個人的にこのシーンが一番好き。「自分の絵を描かなきゃって」というセリフには痺れた)
・ニシンのパイのお届けを頼んでくれたおばあちゃんから再び依頼が入る。どうしてもキキにお願いしたいということで、キキが訪問すると……キキの絵が描かれたケーキ。それは前回のお礼だった。
・そんな折、テレビであるニュースが流れる。飛行船が風に煽られ、なんとトンボが巻き込まれている。その様子を目撃したキキは「私の友達!」と言って、慌てて助けにいく。
・街の人にデッキブラシを借り、必死の想いで空を飛ぼうとするキキ。

■第二ターニングポイント

・思うようにデッキブラシで空を飛べないキキだが、間一髪でトンボの落下を防ぐことができ、街中の人から大歓声を受けるキキ。
・弱まっていた魔法も取り戻すことができ、キキが一人前の魔女として人の命を救った出来事となる。これには街中の人たちのキキに対する見方も変わり、キキも魔法を取り戻し、自分の存在を肯定できた瞬間だった。

◾️フィナーレ

・キキがトンボを救ったことで感動している人々。
ニシンのおばあちゃん 、おソノさんとご主人。
おソノさんはまさかの陣痛が始まった模様。なんだか街が、人が、盛り上がっていることに気づいて、赤ちゃんが早く外の世界に出たくなったのかもしれない。ジジはキキの肩にのり、祝福モードの街。

◾️ファイナルイメージ

・キキから両親への手紙。

お父さん、お母さん、お元気ですか。私もジジもとても元気です。仕事の方もなんとか軌道に乗って、少し自信がついたみたい。落ち込むこともあるけれど、私、この町が好きです

「魔女の宅急便」より

そこには街の人々に受け入れながら、魔女として暮らすキキの姿があった。キキの格好を真似した子どもが街を歩いているシーンは、キキが子どもたちの憧れの対象になっていることを表現している。その様子はおそらく今では街で珍しくない光景。この子以外にもキキの真似をしている子たちがいるんだと思う。キキは今でもショーウインドーのキラキラした靴が気になっているけれど、そんなキキを羨望の眼差しで見る子どもたちがいるということを表す素敵なシーンだと思った。キラキラした服も靴もないけれど、今はそんな格好にすら自信を持ち始めているキキの成長がそこにあった。

<おわり>

大好物のパイナップルの詰め合わせを 食べて幸せに浸りたい。