見出し画像

easy poem「緑」

最後に教わったのは
黒で書かれた数種類の記号が
赤と緑の枠の中にあって
緑の枠の方がはっきり見えたら
度数が強すぎるということ
片目ずつ行い最後に両目で行う
それで赤と緑のバランスとる

これは眼鏡店における検眼の話である

父は分厚いレンズの眼鏡をかけていた
母は77歳の今も裸眼で視力は良い
13歳の頃に父の遺伝子が蠢きだし
赤と緑のバランスを測るようになった
他人の赤と緑のバランスを測ることもあった

遠くの緑をみなさい

眼科医はおまじないみたいに言った
遠くの林、遠くの森、森林浴
緑の木々をみる癖がついた
レンズ越しに
春の新緑は本当にこの色なのだろうか
夏の深緑は本当にこの色なのだろうか
秋の紅葉しない葉はなぜ緑のままなのだろうか
冬の落葉しない葉の最期は緑なのだろうか
緑の木々を疑う癖がついた

青信号は緑色だ
進め進めと急かしてくる

かもしれない運転を心がけなさい

教官はきっと疑い深い人間だった
人が飛び出してくるかもしれない
自転車が車線をはみだしてくるかもしれない
右折車が急発進するかもしれない
だから常に安全運転で法定速度は守る

私は疑い深い人間になった
だから時おりぼやけた裸眼で
木々を見上げるようにしている

#詩
#ポエム
#緑



この記事が参加している募集

私の作品紹介

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?