猫が大好きなんだとずっと思っていた。
「犬派?猫派?」と聞かれたら、「ネコ派」と即答する。
◯◯派で分けてしまうことを無粋に感じる人もいる。それでも私は犬より猫の方が好きだし、それをごまかすつもりも隠すつもりもない。
もともと猫が好きだったけれど、その中でも特別に好きな猫がいた。私の心の中には、その猫がずっと住みついている。
私の腕の中でだんだん硬く冷たくなっていったあの子のことは、きっと一生忘れない。何度も名前を呼んだことも、抱いた感触も、三日三晩泣き続けたあの日々も。
* * *
小学校からの帰り道で、猫を拾った。すでに子猫と呼べないサイズだったその猫は、灰色がかった毛並みが綺麗で、やけに人懐っこかった。「ノラ猫を連れて帰る」という経験は、その時が最初で最後だった。
すでに重たいその猫を抱えて帰った私は、「ミーユ」と名付けた。由来はよく覚えていない。たぶん、鳴き声から考えた名前だったんだと記憶している。
本来ならば、きちんと動物病院に連れていってワクチンを打ったり去勢手術をすべきなんだと思う。だけどその頃の私にそんな知識はなく、ただ可愛いからという理由で飼い始めた。
夜は家の中で寝かせ、昼間は外に出していた。猫用の小屋はこしらえたものの、猫というのは気まぐれな生き物で、決まった小屋にじっとしているものではない。外に放せば、帰ってくるかどうかもわからない。
それでもミーユは、いつも帰ってきてくれた。
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