見出し画像

受注率が劇的にアップする「現物主義」という戦略

このご時世、資料やサンプルは見てもらえない

これまでの「営業」といえば、訪問のアポをとって、資料やサンプルをお見せし、見積もりをとってから受注、というのが標準的なスタイルでした。

しかしこういう状況になり、そもそも訪問して対面で営業することが難しくなりました。特に新規のお客さんと距離を縮めることは難しくなった。

なかなか時間をとってもらえないですし、資料やサンプルすら見てもらえる可能性は低くなります。

「どうやって営業すればいいのだろう?」
「特に新規のお客さんをどうやって獲得すればいいのだろう?」

と悩まれている方もいらっしゃるかもしれません。

いきなり「完成品」を見せる

ぼくらは動画の制作会社ですが、おかげさまで今のところ受注に影響はありません。うちの受注率はそもそも高いのですが、これまでの数字をキープできています。

なぜそれが実現できているのか?

それは「最初の段階で完成品をお見せする」からです。

パワポによる資料説明ではなく、過去の事例をお見せするわけでもなく、サンプルでもない。お客さまのために、相手に合わせて商品をつくってしまうのです。

「お客さまはこういうものを求めてるんじゃないかな?」ということを事前に得られる情報から導き出して、具体的な商品を提示させていただくのです。

「もしかしたらイメージと違うかもしれないんですが、お客さまのためにつくってみたんで見てもらえますか?」と言うわけです。いきなり現物をつくって、お見せする。

これをぼくらは「現物主義」と呼んでいます。

完成品を前にすると「受注前提」になる

「現物」をお見せすることで、いいことはたくさんあります。

まず、受注率が上がるということです。

ふつうの営業方法では、そもそも提案の場まで行き着くのが大変です。さらに提案段階で、お客さまに具体的にイメージしてもらうことも難しい。「うーん、いまはそのサービスはいらないかな?「ちゃんとコストに見合うかな?」という思考になり「頼むか/頼まないか」でものすごく悩まれてしまうのです。

一方、ぼくらのように「現物」をお見せすると「頼む/頼まない」の段階を超えて、「ちょっとここがイメージと違いますね」「ここを修正してくれるとうれしいですね」というように「受注前提」で話をすることができるのです。

だいたい3〜5案くらいは現物をお持ちするので、どれかが刺さることが多いです。もちろん刺さらないこともありますが、それはそれでいいのです。「これじゃなかった」ということがわかることも収穫のひとつ。「だったら、どういうものがお好みですか?」という方向に話を持っていけるから、前に進んだことになります。

ニーズのあるお客さんを見つけることができる

「現物主義」がスゴいのは、潜在顧客を囲い込むことができることです。つまり「なにかしら動画の制作がしたい」とか「なにかしら販売促進がしたい」というニーズのあるお客さんを見つけることができる。

もし現物をお持ちして発注いただけなかったとしても、少しでも興味を持ってもらえたら、その理由は「欲しいものじゃなかった」というものである場合がほとんどです。ということは、そもそも「チラシをつくりたい」とか「広告を出したい」というニーズ自体はあるということ。

目的がそこにあるとわかれば、あとはお客さまの「OKライン」までこちらがクオリティを上げていけばいいだけなのです。よって、そこのコストは逆に先行して一気にとってしまう、という考え方なんです。

「現物主義」はコミュニケーションを加速させる

従来の営業法だと、仮に注文いただけても、完成後に「思ってたのと違う」というように突き返されることもあります。そこからのさらなるイメージのすり合わせ、修正対応は、金額的にも時間的にもかなりのコストになってしまいます。

現物主義も、もし失敗したらそこまでの労力が無駄になってしまうと思うかもしれませんが、現物があることでいきなり細かな修正にフォーカスしていけるので、大きくズレることはなくなります。結果、トータルのコミニュケーションコストは下がるのです。

ちなみに、この「現物主義」は社内でも大切にしている考え方です。「なるべく完成品に近い状態でコミュニケーションしようね」とつねに言っています。

会議でも「長々としたパワポではなくて、A4の紙1枚で持ってきてね」と言ったり、「ラフではなくて、実際のものをつくってみてから考えよう」と言ったりします。

なるべく完成品に近いもので話すことでコミュニケーションの効率はグッと上がるのです。

「現物主義」はベンチャーや無名の人にも有効

この考えを取り入れるようになったのは、ぼくが「社長.tv」というベンチャーにいたときです。

ベンチャーはそもそも知名度も信用もありません。大手や名の知れた企業なら、積み上げた信用や実績で最初の関門を突破できますが、ぼくたちにはなにもなかった。

そこで「最初から完成品を持っていく」という方法をとったのです。そうしないと話すらできなかった、というのが正しい言い方かもしれません。

現物主義は「何者でもない」人たちの大きな武器になるのです。

「自分ごと」にさせることで行動につながる

スティーブ・ジョブスは「人はカタチにして見せられるまで『自分は何が欲しいのか』わからない」と言っています。

「完成品を見せる」というのは、相手に「自分ごと化」してもらう効果があります。「あなたのためにつくってきましたよ」と言って、実際に現物を見せるわけですから、相手の関心・興味のレベルはグッと上がります。

たとえばアマゾンのレコメンドも「現物主義」と言えるでしょう。「この商品を買った人は、こんな商品も買っています」と言われると「自分に言われてるのかな?」と思わされます。もしそういう表現ではなく「売れ筋の商品」とかだったら、そこまで心は惹かれないはずです。

「パーソナライズ」「自分ごと」にすることが、今の時代では行動につながるのではないかなと考えています。

最近知ったのですが、「MEDULLA」というヘアケアのブランドがあります。いくつかの質問に答えていくと、最終的に自分のためにカスタマイズされたシャンプーとコンディショナーの画像が出てきて「これがあなたのための商品です」と提示される。これもうまいなあと思いました。

ただ「モノ」を買ってもらうのではなく、「あなたのために作られたモノ」を買ってもらう。それは「感動をともなう体験」になります。そうした自分ごとの「プロセス」によって人が動くようになってきていることを感じます。

情報のあふれる時代、「あなたのために」で特別になる

人間というのは「楽な選択」をしがちです。

ひと昔前、そこまでモノも情報もあふれてなかったときは、テレビや新聞が「無思考」の手助けをしていました。いま流行っているもの、時代的にキテるものはこれ、と提示してくれて、みんながそれを選びとっていました。

しかし情報やモノがあふれすぎている現代では、選択肢が多すぎて選びとれないのです。そんななかで「あなたのために」と提示すると「私のことを考えてくれている」という特別感が生まれ、選んでもらうことにつながります。

これは、ぼくらのような動画制作に限らず、アウトプットを求められる人なら共通して使える考え方だと思います。

たとえば、編集者やライターだったら「求められるだろうな」という記事を先に書いてしまう。記事のポートフォリオなどではなく、営業をかけたい相手や媒体に合わせたものを書いてしまう、といった作戦も考えられます。

もちろん、最初から現物を出してうまくいくとは限りません。しかし何度も繰り返していくことで、求められているものがだんだん見えてきて、精度も上がっていくはずです。

「どうすれば新規の顧客を開拓できるんだろう?」
「ぜんぜん話を聞いてくれない」
「何度提案しても通らない」

と考えている方がいたら、パワポをつくりこむのではなく、思い切って「現物主義」にシフトしてみてはいかがでしょうか?


よければツイッターもフォローお願いします!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?