見出し画像

【日記】87歳と82歳になってもね

(922文字)

20年以上前からお世話になっている大先輩がいる。
御歳87歳。
7年前から仙台を離れ、奥さんの希望で熱海の温泉付きのマンションで暮らしているが、毎年お彼岸の墓参りには仙台に帰ってくる。
その度に、某商店街の元理事長をはじめ、お世話になった人たちが集まり歓迎する。
仙台に戻ってくるのは、こうした仲間たちに会うのも大きな目的なので、奥さんは留守番という場合が多い。今回もお一人で仙台に帰ってきた。

昨晩は牛たんの店で歓迎会。
懐かしい話や、時代の変化、これからの商店街の方向性などの話で大いに盛り上がった。耳は遠くなったが思考ははっきりしている。

そして今日はお墓参り。自分の家を含め、親戚の家のお墓を3つの墓地で6ヶ所周らなければならない。
その運転手とお手伝いがボクの毎年のお役目だ。
大先輩が泊まっているホテルに11時にお迎えに上がり、仙台中心部の西にある市民墓地からお寺、そして仙台市の東隣にある多賀城市のお寺まで。
多賀城市のお寺の墓地は、長い階段を登った先にあり、不整脈がある大先輩は何度も休憩しながらなんとか墓参終了。
「もう今年で最後かな」
と昨年と同じことを言いながら、帰りに遅い昼食をとり、仙台の繁華街にある仲間の店へ。
少し休憩してから、すぐ近くの仙台三越で大先輩の奥さんが好きな笹かまや仙台銘菓をお土産に購入。
随分買いましたねと言うと、少し照れたように笑いながらこう言った。

「87歳と82歳になってもね、女房っていうのは可愛いもんなのよ」

ああ、いいなぁと思いましたよね。
ボクもこの気持ちは分かる。
山登りでちょっと遠出すると、必ず地元のお菓子などを嫁さんに買って帰った。
「太らせて食べるつもり?」
なんて言われたけど、それが目的だったらとっくに食べごろになっている、というのは言わなかったけど、やっぱり喜ぶ顔が見たいんだよね。
でも80歳を過ぎてまでその気持ちを持ち続けているか。
持ち続けていたとしても、こうやって人に言えるかなぁ。
いや、むしろ歳を取ったから言えるのか。
そんなことを考えながら、仕事があるのでと一足先に仲間の店を辞して帰った。
ボクは今、嫁さんと離れて暮らしているので、そういうことがなかなかできない。
少しだけ、寂しさを感じた帰り道だった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?