中央区の学童クラブ、2024年度の選考はどうだった?
今回は、2024年4月に向けた中央区の学童クラブの選考状況とその考察について書きます。これまでだと例年3月末に開催されている子ども子育て会議で明らかになっている情報について、現在行っている次年度予算の審議の中で資料として確認できたのでその内容についてです。
中央区の学童クラブの現状
23区でもっとも入りにくい区、中央区
まず、中央区の現状から。中央区は23区の中でも有数に学童クラブを利用しにくい区です。
以下のグラフは23区での学童クラブにおける1年生の割合。学童クラブの場合には一般的に学年が低いほど優先度が上がることから、1年生の割合が多いということは2年生以降が利用できていないということ、つまりニーズに対して定員が足りていないことを示しています。
これは2022年度のデータなのですが、見てのとおりで中央区は圧倒的に1年生の割合が多い。つまり、それ以外の学年が利用希望していても落ちているということです。
※ ちなみに、一般的に待機児童数のデータがこの場合に出されることが多いのですが2つの理由から使ってません。1つは、母数の規模によって深刻度の比較が困難であること(90万人の世田谷区と17万人の中央区を比較しても深刻度が分からない)。もう1つは、申し込んでいない層の考慮ができないこと(最初から諦めて申し込んでない場合は待機児童とならない)。
次年度に向けての改善点
そんなハードモードな中央区なのですが、やっと最近になって改善に取り組み始めています。1つは学校内学童クラブ(プレディプラス)の実現。これまでは児童館内での学童クラブしかなかったのですが、次年度からついに学校内にも学童クラブが設置されるように。これで定員の枠は大幅に増加。
もう1つは民間学童の誘致。公設の学童クラブとは別枠のような位置づけではあるものの、質を担保しつつ一般的な民間学童よりは安価に利用できる施設を誘致。2023年度に月島に1施設できて、24年度には晴海に1施設オープン。
これらによって、どの程度改善するのかというのが注目ポイント。
選考の結果はどうなった?
前置きはこの程度にして、それでは次年度に向けての選考の結果はどうなったのか。最近の予算特別委員会で公開されたのこちらの表。
1.全体の申込者数と内定者/未決定者数
まずは全体感から。内定者と未決定者の人数の推移。学校内学童クラブが今回追加されたこと、さらに民間学童も追加されたことによって、定員は大幅に増加。そして、未決定者数は271から223へと若干減少。
なお、報告の時点では2次募集の状況も共有され、最終的な着地については230名程度になる見込とのことでした。
2.施設ごとの内定者の割合
次に、施設ごとに見ていきます。まず、施設ごとの内定者と未決定者の割合。色分けはエリア。色の薄いところが内定者、濃いところが未決定者。なお、2月15日現在なので、若干の変動はあります。
見てのとおりで、地域ごとさらには施設ごとでかなりバラツキがあることが分かります。
京橋エリアでは築地児童館はほぼ全員入れている一方で、新川児童館の方は未決定者がやや多め。なお、新設の学校内学童である京橋築地は定員65に対して32で何と定員割れ。
日本橋エリアは、堀留町児童館と浜町児童館のどちらもが激戦。元々施設数が少ない上に定員も少ない、さらに今回のタイミングでは学校内学童もできない、ということで激戦にはなるは思ってましたが予想通り。
月島エリアは佃児童館のみ未決定が多くなってますが、ここ以外は他と比較するとマシな状況。学校内学童が3施設も設置された影響はあったようです。学校内学童については月島第一と豊海が京橋築地と同様に定員割れ。晴海フラッグ入居開始に向けて新設された晴海西のみ定員オーバーとなっています。
3.施設ごとの学年別の構成割合
今度は、内定者のうちでの学年別での構成割合。最初に書いたとおり、低学年、特に1年生の占める割合が困難度の指標になります。
全体として、1年生(青色)の割合が半分以上を占めているところが多いことが直感的に伝わるかと思います。特に酷いのは堀留町児童館で、定員全員が1年生で青一色。2年生(赤色)他は全部落ちたということです。同じく日本橋エリアの浜町児童館も1年生割合が多いです。
やや例外的な構成なのは定員割れになった月島第一で、3年生が大部分を占めています。これは、近隣の月島児童館と併願をしていて児童館の方には落ちた3年生たちがこっちに来たのではないかと思われます。
まとめ、今年度の結果との比較
これまで、直近で手に入れた最新の施設ごとの決定/未決定の情報を元に、今回の申込について整理してきました。今年度(2023年4月)との比較という意味では、下記のような点が挙げられるかと思います。
①については定員が大幅に増加したというのが大きな進歩で、その結果として利用できる学年がわずかですが上がっています。再掲ですが、区として補助を行っている民間学童も含めると定員は795から1,273へと大幅に増加。
この結果として、新川や月島など一部の学童クラブでは3年生が利用できるようになっています。
次に、②について。施設ごとの視点からすると、今年度の選考で特に厳しい結果だったのは勝どき児童館。これは2023年度のデータ。125名の定員のうちでほぼ全員が1年生で、2年生はゼロという結果。
一方で、今年度は他の施設と同等の学年割合程度には改善しています。これは近隣に学校内学童ができたことの影響でしょう(2023年度の結果を受けて、各家庭がそもそも別の選択肢を探した結果の可能性もありますが…)。
最後に③の日本橋エリアのさらなる難化。今年度も決して他と比べて入りやすいということでもなかったのですが、今回はさらに難化。これは、エリア内に学校内学童の設置もなし、民間学童の誘致もなしということである程度想定された結果ではあったものの予想通りに。
今後の課題は?
まだまだ足りないエリアは多々あるものの、今年度と比較すると全体として少しは改善したかなというのが今回の印象。一方で、まだまだ今後の課題は多いです。簡単に列挙します。
1.特認校への学校内学童(プレディプラス)の展開
今後も少しずつ学校内学童(プレディプラス)が増えていく計画になっているものの、現状でプレディを実施していない特認校(城東、泰明、常盤、阪本)についてはプレディプラスも「今後検討」という扱いになっています。
これらの地域の方、もしくは学校選択で選択されている方からこれらにもプレディプラスを!という声は何度も伺っています。根っことなるプレディ自体が存在しないということで場所等の問題があることは理解するものの、この早期実現すべきものです。
2.日本橋エリアの定員増加
2023年度もその傾向はあったものの、今回の2024年度でさらにはっきりしたのが日本橋エリアの厳しさ。繰り返しになりますが、元々施設数が少ない上に定員も少ない、さらに今回のタイミングでは学校内学童もできない、という状況。
2025年度に向けては久松小学校に学校内学童が設置予定であること、また、民間学童の誘致の対象エリアに日本橋地域も対象となったことから、状況の改善されることに期待したいところです。
なお、誘致については民間事業者が手を上げてくれるか次第という点、そして事業者が手を上げるにしても対象エリアには「日本橋地域または月島地域」となっていて必ずしも日本橋エリアが選択されるとは限らない点が懸念ではあります。
3.プレディプラスの質の担保
これはまだ運用がスタート時点では不透明ですが、外形的に見てプレディプラスにおいて質が担保されるのかという点に懸念を持たれている方も多いです。
1つのモノサシは面積。学校内で学童クラブの事業を行うというプレディプラスの導入にあたって新たな部屋が設置されたというわけではなく、その場所として設定されているのは元々プレディとして利用されていた部屋です。この場合、元々いたプレディ利用者と新たに追加される学童クラブとしての利用者が一斉に利用するようになるとすると、現状以上に混雑するということが想定されます。
元々のプレディの利用者が学童クラブの利用者へとスライドするということであれば実際に人が増えるということにはならないのかもですが、ちょっとこれは運用が始まってみないと何ともというところ。
また、学校内学童では学童クラブとしての枠の子とプレディとしての枠の子が一体的に活動するという体裁になっているのですが、それぞれの運用の根っこは今の運用のままなので、学童クラブだとおやつが15時、プレディだと17時以降といった両者で違いのある部分もあります。これらもスムーズに対応できるのかという点もやや懸念しています。
4.選考方法のアップデート
最後に、ややマニアックな話ですが選考方法のアップデートについて。
学童クラブの利用を希望される方は基本的に保育園の選考を経験されているかと思います。保育園の選考は、勤務状況などによって保育の必要性を数値化してそれが上になっている順から保育園が割り当てられるという仕組みです。
しかしながら、現状の学童クラブの選考方法はこれと少し違っていて、必ずしも点数の高い人が希望の場所に入れるとは限らないケースがあります。
この違いは、全ての申込者をまず順位付けをしてから割当を行う(一列方式)のか、それとも各施設ごとに申込者の順位付けをして割当を行うのか(並列方式)の違いで、前者が保育園の方式で後者が学童クラブの方式。
この違いによって合否が変わるケースを示したのが以下の表。
運用上の負荷や事務所掌の課題があるようですが、将来的には保育園と同様の一列方式がより公平な選考方法なのでこちらに切り替えていくべきでしょう。詳細はこっちの記事をご覧ください。
最後に
今回は、2024年4月に向けた中央区の学童クラブの選考状況とその考察について書いてきました。今回の予算委員会の審議や行政からの説明を見てみても、やっと真剣にこの問題に取り組み始め、学校内学童による定員の大幅増加という目に見えた結果が出たことは感慨深いことです。
普通に考えれば保育園の待機児童が話題になっていたタイミングで将来的に学童クラブのニーズが明白なわけで、なぜこのタイミングで整備の半ばなのかという点はやや納得しかねる部分ですが、今後の計画である程度は解消しそうなのでその進捗をひとまずは見守ろうと思っております。ただ、並行して今後の課題については突っ込んでいきます。
今後も当事者としてこの問題については取り扱っていきます。ご意見、ご要望などあれば、コメントでも良いですし以下フォームからもお気軽にお知らせください!!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?