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中央区の第3セクターである日本橋プラザの今後の契約、どうなる?

 「日本橋プラザ」という建物があります。これは中央区が民間事業者とともに株式会社を作って運営しているビルで、いわゆる第3セクター。今回は、この施設のそもそものところと、今後について掘り下げます。


どういう問題?

そもそも日本橋プラザとは?

 この施設は、元々は中央区の中学校(紅葉川中学校)があった場所にその跡地の活用としてどういう経緯か「ビル建築やろうぜ!」となって、1985年から運営されているものです。いわゆる貸しビルで、民間企業のテナントが入っている他、ホールや会議室などもあります。

日本橋プラザのテナント

 この事業の目的は、「収益を長期的に区に還元すること」。元々中学校だった場所の活用施策として、東京駅に近いという立地を活かして貸しビルを運営して収益を上げ、それによって教育や子育て支援の充実しよう、ということです。

 区の関与としては2点。1つは建物が建っている土地を貸しているということ。土地の所有者はあくまで区所有のままということです。もう1つは運営している株式会社の株主であるということ。全体の55%の株を区として保有しています。

 1つめの関与の部分で、区には毎年「土地貸付収入」が入ってきてます。2022年度決算での実績で、6.5億円

令和4年度中央区各会計決算より

 2つめの部分としては「株式配当金」が入ってきています。こちらは1650万円

令和4年度中央区各会計決算より

何が問題なの?

 この部分だけ見ると、ちゃんと会社としての収益を上げて、区にも貢献してくれているので良い話だねというように感じます。しかしながら、問題なのは「稼いでいるか否か」ではなくて、「稼げるだけ稼いでいるか」という点です。

 そのひとつの根拠として考えているのがこちらの土地貸付料の推移。

 先ほど6.5億円/年ということで書いておりましたが、これは最近の話で元々は10億円以上を支払ってくれていたのです。それが諸々の経緯の中で、現状では6.5億円据え置きとなっています。

 これは日本橋プラザの支払いの余裕がないという事情を考慮したもので、過去には「減額」というディスカウントをしつつ、現在では契約変更を行って6.5億円据え置きのプランとなっています。この経緯についてはいつかまた書きますが今回は触れません。


 また、経営体制もこれで良いのかという部分があります。こちらが元々の発端の問題意識で、そもそものところで社長が前の区長であったり、さらには取締役として区議会議長や副区長などが並んでいたりします。

https://twitter.com/genki_takahashi/status/1586663903701786624

 報酬があるのかどうかという点については、現職の方々は無報酬であることは過去の一般質問で確認済み。しかしながら、この事業の目的はあくまで収益をあげること。貸しビルとして最大限に経営努力をしていただくにあたり、この体制が最善であるのかという点は極めて疑わしいところ。

今回取り上げたこと

 今回、予算特別委員会での質問として取り上げたのは今後の土地貸付料について。現状だと6.5億円を土地の貸付料として中央区は歳入を得ているわけですが、これが将来的に減るのではないかということが明らかになり、その今後の考え方はどうするのかというのが聞きたいポイント。

 そもそも現状の契約がどうなってるかのところから掘り下げます。

現在の土地貸付料の考え方

 日本橋プラザ株式会社の土地貸付料である6.5億円という数字は「権利金相当額」と「地代相当額」で構成されています。この「権利金相当額」はその名のとおり権利金に当たるものということで、物件を借りるときの礼金みたいなもの。本来は契約当初に払うものらしいですが、それを分割で支払っています。

 もう一方の「地代相当額」は土地代。これは公示価格などを考慮して設定されたもの。

 この2つがどういうロジックになっているのかというと、まず6.5億円という年あたりの支払額は固定。その上で、そこから「地代相当額」を差引いた部分を「権利金相当額」として支払っていくという仕組み。地代というのは土地の価格によって算定されるものなので、毎年上がったり下がったりするものですが、支払額は固定。イメージとしてはこんな感じ。

日本橋プラザの土地貸付料のイメージ

 これは、日本橋プラザ側が安定して支払い可能な形で支払ってもらうという契約になっているため。直近の数字では、だいたい権利金相当額が約5億円、地代相当額が約1.5億円となってます。

 この権利金相当額は毎年払える分を少しずつ払っていくということで、遅くとも現在の契約期間(50年!)が満了する2036年までには支払い終わることになるかと思います。

いつまでこの土地貸付料をもらえる?

 今後の課題は、この契約期間の後。現在の契約期間が満了する2036年までには、遅くともこの期間までには権利金部分は払い終わることになります。

 そうすると、何も考えずに今の契約が続行ということになると単純にこの権利金部分の支払いがなくなり、そうすると5億円/年の権利金相当額がなくなって地代相当額のみ(変動はあるものの現状だと1.5億円程度)と、区の収入は大きく減ってしまうことになるのではと気付いたのでした。

日本橋プラザの土地貸付料の推移(想定)

 この5億円程度が中央区に支払われないということは、それはまるっと日本橋プラザ株式会社の利益が5億円増えるということになります。

 あくまで相手方とそういう契約を結んでいるのだから仕方ないのではないかという考えもあるかと思いますが、一方で中央区はその相手方である日本橋プラザ株式会社の55%の株を持つ最大株主でもあります。この点で、区としては今後も日本橋プラザが区に対して安定した収入をもたらすことに最大限努力をさせるべきところと考えます。


 こんな感じの背景があり、契約期間満了後におけるこの土地貸付料についての考え方、その後の日本橋プラザとの契約についてはどうなるのかについて確認してみたのでした。

中央区の考えは?

 この問いに対する中央区の回答としてはざっと下記のとおり。

・認識のとおり、権利金相当額部分は少しずつ返済していて、契約期間が満了する2036年度までには払い終わる見込み
・当初の考えのとおり、ビルの賃貸業を行いながらその貸付収入を長期的に区の財源に充てていくという目的があるので、日本橋プラザと協議しながら検討していく

 要するに、想定どおり権利金部分が今後なくなるというのはやはり事実。そして、それ以降について現状としてははっきりとした考えはないとのこと。

答弁への考察

中央区の考え方への見解

 この中央区の回答は想定どおりでした。なんと言っても契約が満了するまでまだ12年もありますので対応がはっきりしていないのは想定内。

 今回この件を委員会の場で取り上げたのは何かしらの解決策を求めるというよりは、区長をはじめとした区役所の幹部の方々、そして議会の面々に対して改めてこの件について問題提起することでした。直前になってドサクサに現行契約がそのまま継続されるなどということがないように、というクサビでもあります。

今後の対応

 一旦問題提起をしたところなので、今後も少し間を開けつつ状況について確認していこうと考えております。

 文中に少し触れましたが、この日本橋プラザの土地貸付収入については、過去に減額をしていたという経緯があります。この詳細は改めて書きますが、ざっくり言うと本来の契約では10億円もらわければいけないところ、相手方の支払いが困難という事情を斟酌してそれを7.5億円に減らしてあげるようなことを過去にやってたのです。これは要するに、区として本来得られたはずの2.5億円の歳入をみすみす手放していたということです。

 もちろん当時は当時の経済事情があるので現在の価値観だけで判断されるべきではないにせよ、支払い延期ではなく減額という判断は納得しかねるところ。このような中央区にとって不利益なことが今後も行われないとは限らず、さらには金額規模としても大きいので注目すべき点だと考えております。


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