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本をつくるとは、「次」がない仕事なんだ 【校了5分後】

「編集者にとってはこれから続く担当作の『1冊目』だけど、著者さんにとっては『一生に1冊』かもしれないから」

7ヶ月前、編集者として初めて企画した本が世に出たときに、そんなことを書いていた。

あぁ、最初からそうだったんだなと思って。
今回も、変わらずにそういう気持ちでつくりました。

本をつくるとは、「次」がない仕事なんだ

編集担当を務めた2冊目(翻訳書を含めると3冊目)、鎌倉投信の代表・鎌田恭幸氏による『社会をよくする投資入門』を、先ほど校了した。

校了日に、noteを書く。印刷所さんに「校了です」と送ったばかりなので、まだドキドキしているくらいだ。

今朝、鎌倉投信さんやNewsPicksのメルマガ・SNSでも発信をしていただいたところ、速報では43万位から3ケタアップの435位まで上昇しているよう。すでにポチってくれた皆様ありがとうございます。

43万位って逆に聞いたことない

今回は、これまでお手伝いさせてもらった本や、初めての編集担当作のおかげで、「2冊目のわりに」途中までは色々なことがわりとスムーズに回せたと思っていた。そもそも著者の鎌田さんは文章を書き慣れていて上手なので、方向性が見えたら強かった。

でももちろん、編集側は100%の物事がうまく運んだわけではない。
執筆の手戻りをさせてしまったこともあるし、発売日も遅らせる判断をとった。デザイナーさんにも待ってもらったり修正をしてもらったり、迷惑をかけた。タイトルに納得がいかないという声ももらった。本業で毎日お疲れの鎌田さんに(なんせ、社長なのだ)、毎週毎晩、加筆・修正をお願いした。
何度もタイトルやコピーを迷って逡巡するわたしに、社内で喝ももらった(やさしいやつ)。

「次に生かして」という言葉ももらう。もちろん、生かせる反省は生かす。
だけど、ほんとの意味で「次」はない。わたしはそう思う。
書き残したことがあるときに、いい本にはならないと思う。だから著者さんには後悔のないように書いてほしい。だから同じテーマで、同じ著者で、同じ編集で、本をつくることはほとんどないと思う。それにもちろん、読者との出会いも一回きりかもしれない。

今回は、著者の鎌田さんにとっても2冊目の本。
だけど、この本にきっとたくさんの思いもこもっていて、執筆に時間もかかっている。
鎌倉投信が最初に注目されてからも15年間、愚直に投資信託を続けていて、お客さんも2万人を超えた(いまではわたしもその一人だ)。そもそも鎌田さんの最初のキャリア20年の金融業界でのモヤモヤがなければ、鎌倉投信は生まれていない。
だから勝手ながら、執筆期間だけではなく鎌田さんの人生が詰まっていると思っている。

著者・鎌田さんとの出会い

わたしは2年前まで、編集者ではなかった。
新卒でベンチャー企業に入った。そこは鎌倉投信の投資先だった。

同期が鎌倉投信を教えてくれて、入社してすぐの4月か5月に、一緒に鎌倉の本社へ鎌田さんの説明を聞きに行った。そのときわたしは、投資のことも投資信託のことも全然よくわかっていなかった。

そんなわたしなのに、 IR(投資家向け広報)担当に配属された。鎌倉投信の投資先だったから、「投資家」としてプラント見学にいらした鎌田さんに会い、ある冬ご案内や雑務を担当した。

プラント見学からしばらくして、会社に自分宛のハガキが届いた。「鎌倉投信の鎌田社長」からの御礼のハガキだった。IR面談の対話相手でもなく、ただの案内役だったわたしに。

社会人になって初めてのハガキで、今でも忘れられない。捨ててないから実家のどこかにある。

そうやって、丁寧に投資先と向き合う運用会社なのだということがわかった。

ファンドの運用会社とは思えない門構え

投資の役割はお金を増やすことだけではない

これから新NISA制度がはじまるぞ、という2023年の5月に、「モヤモヤ」を抱えた鎌田さんとお話をした。もう、1年前。
「投資となると誰もが、リターンや手数料、コストの話しかしていない。それでいいのか?」
そんなモヤモヤだった。

投資だけが、「画一的な価値観」のままだ。
お金だけが判断軸になっているなんて、年収で就職先を選んだり、コスパだけで買い物をするみたいなもの。なるほどたしかに。

投資だけが、昭和の価値観のままだ。
とかなんとか、それをコピーにできたら楽だと思う。
でも、お金は大事だし、不安だし、自分さえ安心できればいい。
だから多くの人にとって、「投資=お金を増やすもの」だったとしてもしょうがないと思う。

じゃあ、社会をよくする投資ってなんなんだよ?

端的に言えば、社会に「新しい価値を生む」投資。
日々顧客やビジネスと向き合っている人は「当たり前じゃん」と思うかもしれないけど、その反対は、「お金を増やすことだけが目的」の投資。
金融市場は、超高速で売買して価格差でお金を稼いだり、信用で前借りしたお金でお金を増やしたり、と手法ばかりが発達してきた。
ついでに言えば、「とりあえずS&P500」「とりあえずTOPIX」と指数連動の投資信託に投資することは、この社会全体が経済成長をし続けることを期待するのと同じことだ。経済成長がすべて悪いわけではないが、気づかないうちに、「投資=お金の流れ」がどこかに「無理をかける」社会をつくっている。


大量のゲラを溶解ボックスに捨てながら、「この紙はリサイクルされるんだろうか燃やされるんだろうか」ということが気になるくらいのわたしなので(調べたらちゃんと古紙になるよう)、やっぱり自分が投資するお金の行き先はちゃんと知りたい。

少しでもそうやって、「投資したお金の行き先」を気にする人が増えたらいいな、と思ってこの本が仕上がりました。

校了前、最後の打ち合わせは雨でした

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もう少し知りたいと思ってもらえたら、とっても嬉しい。

こんな人におすすめ

・「とりあえずインデックス」でNISAを始めた
そもそも投資とは「お金をどう使うことなのか」学びたい
・資産形成するうえで、選択肢を広げたい
・日頃から、「社会にとっていい選択をしたい」と思っている

この本を読んでわかること

・「社会をよくする投資」とは、お金だけでなく「価値」を増やす投資
・お金の動きは「欲求の総和」である
・株価上昇は「みんなの共通目的」になりやすい
・リターンの源泉は「一人ひとりの仕事」である
・インデックス投資とは、GDPが上がり続ける世界を期待すること
・金融市場は「お金を増やす」ための手法を発達させてきた
・ESG投資では「ペーパーテストの優等生」が評価される
「ソーシャル証券取引市場」の可能性
・投資成功のカギは「先入観を外す」「予測しない」「投資観をもつ」
・「顔の見える投資」は、転職や出会いにもつながる?!
・サイボウズやヘラルボニーの「価値づくり」

目次

第1章 「社会をよくする投資」とは何か
第2章 リターンの大元は「事業」である
第3章 経済の海と金融クジラ
第4章 「欲望」が集まる金融市場の構造
第5章 投資の「新しい選択肢」
第6章 「社会をよくする投資」の実践
最終章 投資の先にどんな「10年後」を描くか


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