見出し画像

武司、夢の国へ行く 2

熊鍋を食べた、というとだいたい

「熊、おいしかった?」

と聞かれます。確かに、鹿や猪は食べる機会あります。ちょっと山のほうへ行けば「鹿肉燻製」とか旅館でも「牡丹鍋」出してるとこあるし。しかし、熊はまあないです。どんな味?って思うでしょう。武司もよくそれを聞かれていたようですが、そのたびに少し困惑しているのがよく分かりました。前回書いたように「熊を味わいに行っている」のではないですからね。

---------------

画像1

【念願の熊肉との対面に向かう武司】

画像2

【こんな雪のなかいるわけのない熊の姿を探して送迎の車のフロントを凝視する二人】

--------------

いわゆるマタギの里と言われている比立内や阿仁マタギは森吉山の南側ですが「杣温泉旅館」は森吉山の北側にあります。阿仁前田の駅から車で約30分強。窓から見える景色は白い世界。宿の料理はいろいろ選べるけれど、今日は全員が熊鍋を頼んでいるとのこと。コロナにも関わらず、お客さんは各地から来ているとのことでしたが、食堂のテーブルはコロナ対策ですべて正面の舞台を向くように配置されており、正面にはどでかいテレビもあるので結果、全員がテレビを見ながら熊鍋をつつくわけです。若干のの間抜けさは否めません。それでも地方の宿は精一杯の工夫でがんばっています。私たちも旅人も団結して協力。

画像3

父が狩猟をしていたので、毎冬、これでもかというくらい猪鹿は食べていた私ですが、熊の肉と言うのは初めて。聞けばかなり煮込むとか。今は冬ですから、前年の秋に取った熊を冷凍貯蔵しておき、それを提供するわけです。また、部位もすべていっしょくたになっているので、ローストか、もも肉とかそういったのもありません。すべてを煮込んで柔らかくして醤油仕立ての鍋になります。

もし、これが狩猟者なら、獲ってきたその日に食べることができるわけですよね。そうなると、やっぱり各部位で食べられるし、内臓だって食べられる。それを考えると私たちが食べたのはやっぱり多少は観光用の調理で、真の熊の味というのは狩猟者とその家族しか食べることができないのだと思います。そういう意味では熊の本当の味なんてやっぱりちょっと行って宿で食べたくらいじゃ分からない。私たちは、東北の山の不思議ほんのを少しだけ感じるのがせいぜいですが、それでも十分価値があったと思います。

冷たい山の空気を吸って、地球の熱から生まれる温泉に浸り、同じ山で暮らす獣を食べる。都会のビルの中で熊を食べるのとはまるで違う感覚だと思います。自分の中の五感を最大限引き出すには現地に行くに限ります。「知っている」ということと「感じたこと」はまるで違いますからね。

さて、そんな杣温泉旅館のお父さん、帰りの車の中でいろいろ話をしてくれました。以下、私のノートから少し。

・今まで来た中で一番面白かった芸能人は柳沢慎吾。
・熊の脂は薬だが女は残しがち。
・熊と会った時、目を逸らすのは本当にマズい。かつて熊を飼っていた時檻の前で妻に呼ばれたので振り向いたら、その時檻のなかから熊の手が出てきた。飼っている熊でさえこうだから、野生の熊に会ったらぜったい目を逸らしたらダメ。
・ブナグリやドングリを食べた熊はうまい。

駅に着いたら、乗るはずだった列車がコロナの影響により減便となっていることが判明。「えっ!肘折まで行くの!」と、驚いた秋田縦貫鉄道、阿仁前田駅の駅長さんは列車が来るまでの10分、すごいスピードで調べてくれ、なんとか乗り継ぎのめどが立った瞬間ホームに列車が入ってきて滑り込み乗車。トラベルはトラブル。最近は何につけても問題や間違いのないようにと、親切丁寧なサービスがもてはやされますが、そもそも人間自体が問題を内包していますから、肝心なのは「問題が発生したときに何ができるか」のほうが大事だなーと、思わずにいられません。駅長さん、武司は無事肘折へ行くことができましたよ。

画像4

ふふ

画像6


ありがとうございます。サポートいただいたら嬉しいです。お店でたくさんサトナカ試食してください!