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企画室【身体性の先を見る】シモン・ステン=アナーセン

2019年9月2日に下北沢ハーフ・ムーン・ホールにて行われるコンサート「身体の先を見る」に関連した、ちょっとしたコラム。ゆきちか続編です。

企画室【どんなコンサート?】
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企画室【身体性の先を見る】ユルク・フレイ

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わたなべ:
シモンの「Study for String Instrument」って、色んなバージョンがあるんだよね。私が最初知ったのは、ヴァイオリンのKarin Hellqvistが弾いているバージョンだったんだけど。

森下:わたしはトロンボーンのスティーブ・メノッティ(Staphen Menotti)とチェロのエレン・ファロフィールド(Ellen Fallowfield)のアレンジ・ヴァージョンで知ったの。2013年か14年だったと思う。スティーブは師匠のマイク・スボヴォダ(Mike Sbovoda)の影響だと思うけど、果敢にいろんな曲をアレンジしてトロンボーンのレパートリーにするのが見てて面白くも怖くもある(笑)。

わたなべ:こういうバージョンもあるみたい。


わたなべ:こう考えると、作品って一つの形で線引くんじゃなくて、一つのタイトルを持った総合体としての音楽っていう感じだよね。それ、結構いつも思うことではあるんだけどさ、インタープレテーションによって違う、それぞれの花を集めた花束みたいな。

森下:総合体の音楽?っていうのはどういうこと?

わたなべ:普通、一つの作品の編成って決まってるじゃない。「〇〇~バイオリンのための」とか「〇〇~ピアノのための」とかさ。でも、この作品はそうじゃない。Youtubeで探すと、同じタイトルでも全然違う編成のものが出てくるでしょ。でも、それ全部ひっくるめて、同じ作品の境界内にあるものなんだよね、総合的に見て一つの作品っていうことでしょ?

森下:それは今回揉めに揉めている(笑)、作曲とは何か、の話じゃない?周りにはスコラダチューラでもピッチを完全には指定しない人も多いし、わたしもインディタミナシー (不確定性) の要素はほぼ必ず曲に入れるから違和感ない。逆に、完全なものがつくれると信じてる作曲家のほうがちょっと苦手かも... 。

わたなべ:完全なものが作れてるって思ってる人、いるいる!それはそれで、「その人の完全」が何なのか、聞いてみたい気もする!それに、完全なものが綻んでいくの、わたしは結構好み。作曲中にボツになったアイディアってあるじゃない、わたし、あれって、作品に付帯した一種のパラレルワールドなんじゃないかなって思ってるんだよね。一つの作品って、数十枚の紙ペラじゃなくて、幹から枝分かれした木から森になっていくみたいに、もっと立体的なんじゃないかなって。

森下:ゆきこちゃんから見てシモンはどう思う?とにかくここ数年、すごい人気じゃない、特に若い男の子の演奏家が熱狂してる印象。本人も気楽というか、とにかく、どこいっても音楽祭終わりにバーとかで会うイメージ(笑)シアターピースも面白かったなー。

わたなべ:彼は今でこそスターなんだけど、下積み時代が長かったんだって。理解されない時期があって、今があるんだよね。私が最初に作品を見たのは、2011年に書かれた「History of My instrument」で、グラーツのImpulsアカデミーでレクチャーを聞いたんだよね。

その当時からもう凄く売れっ子で、そこら中で名前を見て。ダルムシュタットで見た「Black Box」も良くできた作品だったよね。先生としても凄く柔軟で、指導も評判が良くて、もう非の打ち所がない(笑)フォロワーも多いけど、やっぱり本家の凄さって、どれを聞いても、シモンなんだよね。濃い。

森下:うーん下積みっていうかあれでしょバーテンやってたとかの話でしょ?確か1976年生まれだよね、アアロン・キャシディと同じ。三十代前半でスターになってたんだったら別に良くない?(笑)これだからEU圏の人は!!

関連作品:シモン・ステン=アナーセン「Study for String Instrument」

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次回8月18日は、森下周子の新作について。お楽しみに。
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森下・わたなべのふたりが講師をつとめるProject PPPの三日間のコンポジションアカデミーは2019年は9月2〜4日に開催予定。オンナ作曲家の部屋vol.2、稲森安太己によるゲストレクチャー、Vln&Vcコンサート、グループディスカッションなど。

9月2日(月)、下北沢ハーフ・ムーン・ホールにて行われるオープニングコンサート「身体の先を見る」では、中山加琳のバイオリンと、北嶋愛季のチェロで、アーロン・キャシディ、ユルク・フレイ、リザ・リム、シモン・ステン=アナーセン、そして森下周子の新作をお届けします。

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