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2024年1月23日の日韓作曲家コンサートに向けてリハーサルが始まっています。

日韓作曲家に未来があるのか

一週間後の1月23日にキャビキュリの新年コンサートがあります。4名の作曲家を韓国からお呼びし、日韓の学生さんの作品も演奏します。

今回はキャビキュリメンバーの作品と同世代の韓国の作曲家、 Eunsung Kimさん、Seongmin Jiさん、SukJu Naさん、日本からは、東京音大で学ぶ渡邉香乃さん、芸大で学ぶ 中瀬絢音 さんの作品、そして韓国からソウル大学で学ぶ20歳の学生さん、シン·ジェウォンさん(Jaewon Shin)の作品をプログラミングしました。

留学というと、行って勉強するところまでは見えているのですが、その場に留まるのか、はたまた帰国するのか、その後仕事があるのか、どうやって人生を設計するのか、その辺りはあまり話されることが少ないように思います。

自分がマジョリティでいられる場所から離れて、マイノリティになる体験は、わたしは必要な経験だと思っているのですが、❶母国での学び❷異国での生活❸また母国に戻る の三つ目のフェーズで、精神的に、もしくは音楽的にどんな変化があるのか、私は興味があります。

正直なところ残念ながら両国共に、留学先から帰国して私たちに残されているスペースというのは多くありません。留学先でどんな経験をしてきたか、どんな学びがあったか、それを母国に帰って還元できる場所というのは、日本も韓国も殆どないのが現状です。仕事自体がないのは世界各国共通かもしれませんが、異国ではもちろんのこと、母国でも苦しい戦いを強いられています(韓国人の作曲家たちと会うと、その話題で持ちきりです)。そして、留学を終えた、私たちの年代の多くは所帯を持ったり子供が出来たり、経済活動をせざるを得ない状況の中で、多くの作曲家が「書きたい音」ではなく、「書くことを期待されている音」に思考がシフトしていきます。

私は留学先で学んだこと、異国で感じた違和感をなかったことにしないで、書きたい音、聞きたい音にも蓋をせずに、誰かに与えられた任務を超えて一個人の表現として私たち一人一人が様々な属性に左右されることなく、書きたいことを書くことができたら、今のアジアの音楽シーンが大きく変わると思っています。少なくとも、私は今回韓国から呼ぶ作曲家に対して韓国的な要素も西洋的な見せる技術も全く求めていないし、非常に似た経験を持つ同志として、純粋に彼らが今書きたいものを、そのままの形で聞きたいと思っています。

西洋で学んできた私たちにとっての、かつての目指してきた道は、欧米の大きなフェスティバルから委嘱が来ることであったり、これまでの名だたる作曲家たちのような華々しい経歴を掲げることであったりしたわけだけど、大きなパラダイムシフトが起きている今、私たちが本来到達しなければいけない未来はもっと別の世界の中にある気もしています。

隣国同士で生活する、とても似たような環境下にある私たちが、共同で今の社会の中で目指したい道のようなものを模索することが出来たら、それは単なる日韓親睦会を超えた関係性を築くものになるんだろうと思います。そして、このコンサートで少しでもその片鱗が見えれば、これをやる価値がきっとあるんだろうと思います。

長くなりました。1月23日、ティアラこうとう 小ホールです。ぜひみなさんお越しいただければ幸いです。

Cabinet of Curiosities 2024 Korea ×Japan

本公演では、ドイツ語圏で学んだ後に母国で活動を続ける韓国と日本の中堅世代作曲家5名の作品に加え、両国で学ぶ若手作曲家3名の作品を演奏します。世界全体が緊迫し、国同士の信頼関係が希薄に感じられる中、音楽による言語を共有し相互理解しながら、共に新たなシーンづくりを行う新世代の日韓作曲家の音楽をお楽しみください。

日程:2024年1月23日(火)19:00開演(18:30開場)

Cabinet of Curiosities 2024 
Korea × Japan Project
会場:  ティアラこうとう 小ホール

キム・ウンソン(1984):音の散歩(2016)
Eunsung Kim: Klangwanderung for Violin [Vn Solo]

シン・ジェウォン(2003):道に迷った子供のための霧の迷路(2023)
Jaewon Shin: The Foggy Maze for a Lost Child [B-Cl Solo]

ジ・ソンミン(1983):いくつかの単純さの境界線(新作初演)
Seongmin Ji: some of the borderline of simplicity [B-Fl, B-Cl, Vn, Vc]

ナ・ソクジュ(1981):燃焼(新作初演)
SukJu Na: incineration for flute, violin and violoncello (2023) [Fl, Vn, Vc]

中瀬 絢音(1999):インヴィジブル・ライツ バスフルートとバスクラリネットのための (2021)
Ayane Nakase: Invisible Lights for Bass Flute and Bass Clarinet [B-Fl, B-Cl]

森 紀明(1979):新作初演
Noriaki Mori: New work [Fl, Vn]

渡邉 香乃(2001):明るい木(2022-23)
Kano Watanabe: Bright Tree [Fl, Cl, Vc]

渡辺 裕紀子(1983): 失われたメロディー(改訂版初演)
Yukiko Watanabe: Die Fehlende Melodie [Cl, Sax, Vc]

[チケット料金] 一般:3,000円/学生:2,000円
*学生券をご購入の方は、公演当日学生証など年齢を確認できるものをご提示ください。

[演奏] 齋藤 志野(フルート)、岩瀬 龍太(クラリネット)、森 紀明(サクソフォン)、松岡 麻衣子(ヴァイオリン)、下島 万乃(チェロ)
申込フォームURL 

https://forms.gle/jnuD64V5qTBe7uQv5

もしくは以下メールアドレス(E-Mail: cabi.curi.coc@gmail.com)までお申込みください。

主催:一般社団法人Cabinet of Curiosities
助成:公益財団法人朝日新聞文化財団
お問合せ: Cabinet of Curiosities
E-Mail: cabi.curi.coc@gmail.com
会場アクセス: 東京都江東区住吉2-28-36(都営地下鉄新宿線・東京メトロ半蔵門線 「住吉」駅 A4出口より徒歩4分)
URL: https://www.facebook.com/cabi.curi


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