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渡辺愛×山根明季子×桑原ゆうで語る~その➄

※本記事は、2018年8月28日都内で行われた「海外留学フェア (PPP Project)」の一貫として開催された「女性中堅作曲家サミット・グループA」の書き起こしです。パネリストとの合議による加筆修正が含まれます。(編集・わたなべゆきこ&森下周子)

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渡辺愛×山根明季子×桑原ゆうで語る~その④

ー(森下周子、以下森下)山根さんはいかがですか?

(山根明季子、以下山根)自分も大学で教えたりするんですけど、(子供がいる以上)無理のない範囲でしかできないですよね。

(山根)先ほど森下さんがおっしゃっていたマッチョイズムの話に戻ると、日本にとって西洋音楽というのはもともと明治期に一斉に取り入れた輸入の音楽であって、また資本主義的に見ても、効率とはほど遠い別の軸にあるものだから、儲かるものでもないですよね。そうすると、どこか権威に認められなきゃ活動が難しいっていう構造になっているところがあったり。

ー(森下)ちょっと意地悪な質問に聞こえるかもしれませんが、これまでにいろいろな賞や委嘱をいただいてらっしゃいますよね、素晴らしいご活躍をされていて。その反面ご自身の始まりは、既製の価値観に対する違和感だったり、そういう現実との乖離なわけじゃないですか。そういうのは、どういう・・・。

(山根)わたしは地方の庶民の出身で、当時は周りに仲間も少なくて、勉強もしたいし、とにかく機会や出会いが欲しいというのが大きかったです。頂いた機会を通して得られた経験にとても感謝しています。

(山根)自分としては、なかなかそこにダイレクトにアクセスし難いような「小さな種」だったとしても、小さいところで良いので複数で運営できるところを作って、いつもそこで話せたり、音を提示していけるような形を作ることができたらなって思うんです。無理のない範囲で、持続可能な場所を作ること。個々人の感覚を掘り下げていったりだとか、そういう活動をしていきたいっていう夢はあります。

ー(森下)それは大学に所属してとかではなく、個人的に?

(山根)そうですね。経済的には色々考えなければいけませんけど、そこはなんとか実現したい。

ー(わたなべゆきこ、以下わたなべ)そういうの必要ですよね。

ー(森下)そうか。でもたしかに、音大に行ってコンクールを取ることが目標っていうのは、アーティストの本分から外れているような気もしますね。

(山根)地に足をつけて、価値を生み出すことや、育てていくことも、もっと大切にできたらいいなあと思います。海外で良いとされているもの・価値・評価の枠組みのなかで、強くあることも素晴らしいですけど、戦うだけじゃないのかなとも思います。逆輸入が多かったりっていうのもありますね。

ー(わたなべ)その割に日本から見た「海外の価値観」は、本場ともズレが生じていて、ガラパゴス化しているような印象もあります。


ー(森下)あの、あとで質問しようと思っていたんですけど、プロフィールに何を書いたらいいのか、いつも迷うんです。海外で、英語やドイツ語のパンフレットが読めない・読めても価値が分からないっていうところから始まったんですけど(笑)

(山根)評価を並べていくら証明されたかっていう書き方は、他のジャンルの方から見て独特な世界だと言われたりしますね。 

ー(森下)そうですね、内側の人にはつたわるんだけど、輪の外の人にはつたわらない。といいつつ結局書くんですけど(笑)誰に何を伝えるために書くのか、プログラムノートにしても、いつも悩んでますね。

(⑥につづきます)
渡辺愛×山根明季子×桑原ゆうで語る~その⑥

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