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オープンDの音色を追って 30

(約5分で読めます)
 前回の記事をマガジン「邦楽 記事まとめ」に入れていただきました。
 再度ありがとうございます。
 これまでのGAROの記事のセルフまとめは、マガジン「GARO」にあります。よろしくお願いいたします。

 秋分とはよく言ったもので、少しだけ涼しいですね。
 昨日秋分の日、仕事の帰りに夜道を歩いていると、花火の音がしました。
 コロナの影響でずれ込んだ夏祭りが行われていたのです。
 ビルの間から一瞬だけ金色の打ち上げ花火が見えました。
 マークの曲『冬の花火』ならぬ『秋の花火』でした。

 これまで、ボーカルがラジオや雑誌で話したことの中には「意外」と思える情報が多くありました。
 多くの才能ある人たちが、有名になる前にGAROと関わっていたのです。

 ラジオでボーカルが回想していた1970年代の曲たちがすごいです。
 その後ずっと日本の音楽界に影響を与え続ける人たちが次々に登場します。

1972年1月 よしだたくろう『結婚しようよ』
1972年2月 RCサクセション『ぼくの好きな先生』
1972年6月 GARO『美しすぎて』
       発売後、B面『学生街の喫茶店』の人気が高まり、11月頃A面
                       とB面が入れ替わる。1973年2月にチャートの一位を記録。
1973年4月 チューリップ『心の旅』
       時間をかけて売れ、9月に一位を記録。
1973年9月 かぐや姫『神田川』
       百万枚を超える大ヒットだったが、歌詞に商標名(クレパス)
       が入っていたためNHKで歌うことができず、紅白出場を見送
       る。のちに1992年の紅白歌合戦で南こうせつがオリジナル歌詞
       のまま歌った。
1973年11月 井上陽水『氷の世界』
       すでに『夢の中へ』『心もよう』のシングルヒットがあり、こ
       のアルバムは1975年8月に日本レコード史上初のLP販売百万枚
       突破を記録した。
1975年9月 アリス『今はもう誰も』
1979年12月 オフコース『さよなら』
       小田和正はトミーと仲が良かったそうですね。

 GAROの73年関西ツアーの前座はアリスだったそうです。ボーカルは「キンちゃんのリズムパターンが変わっていて印象に残った」と言っています。
 過去にテイチク株式会社でカラオケを担当していた私の印象は、アリスとしては知らなくて、谷村新司=『忘れていいの』の人。カラオケではデュエット曲は人気なので、セットものには必ずと言っていいほど入れていました。
 堀内孝雄=『はぐれ刑事純情派』の歌の人。『はぐれ刑事純情派』主演の藤田まことはテイチクの所属でした。

 そんな感じで70年代が半ばを迎え。
 アルバム『吟遊詩人』が発表されます。
 1975年6月25日発売。
 全曲にわたって作詞:阿久悠、編曲:松任谷正隆というコンセプトアルバムです。
 松任谷正隆は、荒井由実のレコーディングに参加して少し経った頃で、これから有名になるところでした。
 アルバムは、シングルとして5月に出ていた『一本の煙草』から始まります。

シングル盤『一本の煙草』


 続く『アドベンチャー』は過酷な歌詞をポップに仕上げたトミーのナンバー。
 そして次の『個人的メッセージ』はコーラスアレンジが山下達郎です。
 コーラスに参加しているのはマーク、トミー、プロデューサーのミッキー・カーティス、ディレクターの有賀恒夫(ボーカルは「ディレクター」と言っていましたが、LPのクレジットではプロデューサー・アシスタントとなっています)。
 山下達郎やシュガー・ベイブのメンバーは入っていません。
 それどころか、ボーカルも入っていないじゃありませんか。
「風邪をひいていて声が出なかったから」だそうです。
 なのでボーカルがやるはずだったパートを「有賀さん」が歌っているとか。
 コーラスは一人ずつ録るのではなく、全員でいっぺんに歌う。その方が早いし、合う。とボーカルは言います。
 サラッと言いますが、たいへんなことでは?
 だって誰かがトチったら全員でまたやり直しですよ?
 これまたテイチク時代にディレクターがよく言っていたことですが「スタジオ代、テープ代がバカにならない(だからリテイクを出したくない)」。
 実力があるからこそ「いっぺんに歌った方が早い」になるんですよね……。
 ちなみに今はデジタル時代なので「テープ代」の心配はなくなりました。
 今や音もコピーやカット&ペーストができるんですよね。アニメのダビングに立ち会っていると、あまりにも自在に音を操る録音調整の手並みにビックリします。
 オープンリールの時代には、テープのどこに何の音が入っているかの目印に付箋状の紙を挟んでいて、うっかり巻き戻したりすると室内に紙吹雪が舞う事態になったと聞きます。

 ボーカル作曲の『悲歌(えれじい)』に入っている女声コーラスは大貫妙子(シュガー・ベイブ)、吉田美奈子。

 シュガー・ベイブ関連では、エレキギターで伊藤銀次が参加しています。

 ベースは宇野もんど名義ではない細野晴臣です。

 そして、ちょうどこのアルバムが出た頃、GAROには終わりが見えてきます。
 トミーがGAROを脱けると申し出たのです。
 もちろん周囲は反対しますが、トミーの決心は固く、解散をふまえて次のアルバム『三叉路』の制作がスタートしたのでした。

(つづく)
(文中敬称略)

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