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ちひろ描く儚い横顔

としての一葉といえば鏑木清方のイメージだったが、これはいわさきちひろ描く「たけくらべ」の美登利みどり、おきゃんで勝気な横顔のなかに宿る、決して届かぬ恋の想いを抱いては、意中の信如しんにょを眼差す言い知れぬ悲しみが見事に描かれ、淡く儚い色彩の滲みがさらに美しく美登利を縁取り、作中「水仙一輪の造り花の淋しく清き姿」そのままである。

とぼとぼと歩む信如の後かげ、いつまでも、いつまでも、いつまでも見送るに…(十一章)

あるいはわたしたちもまた、人知れずこうした面差しで好きな人の遠のく背中を見つめたのではなかろうか。



一瞬現れてはすぐにも消えていく儚い万華鏡のよう

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