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虫の居所、今何処

手相が薄い。生命線らしきものが見えない。

他の人と比べてあまりに薄くて驚かれたけれど、他の人の手相の濃さにこちらも驚いた事もある。

色々調べてみると、当てはまるなぁと妙に感心するが、きちんと勉強した訳ではないから、素人がああだこうだとは言えない。

学生の頃、友人と毎年神社の祭りに出掛けて行った。かなり大きな祭りで、そこでは手相占いが出店されていたので毎年友達と見てもらっていた。

「消化器系に気を付けなさい」と毎年のように結果が書かれる。(実際に見て貰えるのと、機械で判定された用紙が渡される)

大当たりである。最近は胃痛腹痛ばかりだが、学生の頃から二十代前半は胃腸炎によくなっていた。

二十代半ば頃には、鶏肉や生食を一切食べていないのに旅行先で私だけがカンピロバクターに罹り、帰宅後高熱を出してあの時初めて体温が40℃を超えた。

神経性の胃痛と腹痛がついて回る。親戚の作家が書いた本の批評というか、雑感的なものを書いている時も最近胃痛を抱えながら原稿に向かっている。文士でも無いのになんなんだ。

空腹時、食後、どちらも胃痛腹痛が起こる。
睡眠導入剤を空腹状態で飲むと、気持ち悪くなって眠いのに吐きそうな、もたれるような、兎角胃がおかしくなってしまうので、スープを流し込んでから飲んでいる。これはいいのか、悪いのか、眠れるのならどうだっていい。何某かの数値に問題が現れた時に考えよう。

胃薬は処方されているが、強力なものらしいから、あまり多様しないようにと医者から言われている。
これで、胃を診てもらっても何も見つからないのだ。何かしらあるだろと、毎度毎度思うが、伽藍としたものだ。

漫然と、諦念を持って日々を消化しているつもりが、何故こうも消化不良を起こしているのか。

こうして無味乾燥にしている割には、余りにも酷いことがあれば苦情を言い、それでも誠意が無い時はこんな私でも、正面切って怒るのだ。
先日、そういう一件があり、あまりに他人事のような対応に久々に怒った。

開口一番、言い訳。その後、自分がしたことじゃ無いとでも言いたげに謝る。
かなり重要な件であったから流石にその時点で内心キレてしまう。それでも、何度も耐えた。最後の最後にまた雑な対応をするから、「そういうことされると困る」と、怒気を込めて告げた。

しかし、糠に釘とはこのことか、と、思うような対応に、これ以上言えば私の方がチンピラやら悪質クレーマーやらになるだろうと思ってバカバカしくて諦めた。もうソイツを一切無視して要件だけを済ませて出て行った。

何故通じると思ったのか、そういう自分を愚かに思って余計に疲労する。

抜いた刀はそのままだったが、辻斬りに走らない私は理性的だと思う。

その後、久々の感情の爆発に疲れ切って寝込んだ。
それから、精神的に参ってしまい、心がざわつき具合が悪くなってしまう始末。

こんな貧弱な精神で、果たして私に刀を持つ資格はあっただろうか。

どこかで書いたか忘れたが、私は自分が出来ることを他人が出来ないことを信じられないのだ。そういう考え方が危険であるということは頭では分かっているのだが、私如きが出来て何故他人が出来ないのか、腑に落ちない。

謝罪の仕方は社会人になったら、とっとと身に付けておいた方がいい防衛術だ。私は他人からの指摘が恐ろしくて、その防衛術はとっとと身につけた。
マナーというのは、畢竟、社会人の防衛術なのだ。

新人社会人の時点で、
「相手がもう何も言えない謝り方出来るよね。」
「あの面倒な人と仕事出来るなら誰とでも上手くやれるよね。」
等と、言われていた。

別に自慢するつもりはない。
何故なら私のしたことは大体の社会人マナー本を読めば、ちゃんと書いてある。
私は、その通りにしただけだ。

相手方の検討外れな謝り方や、しどろもどろになるのは許容出来る。言い訳癖があったとして社内の人間なら諦められる。外部でもそうしてるのかと思うと恐ろしくなるが。

しかし、一応客だった私の指摘に対して他人事のように、自分は悪く無い、知らぬ存ぜぬ、そういう態度の輩がのうのうと仕事らしきものをしているのは解せなかった。
私だって言いたか無いからせめて最初に簡単でいいから謝ってくれと願いたいぐらいだ。それが駄目だったら最後に一言謝ってくれと。

昔から「何処でもやっていける」と言われていた私だから、「ここでしか生きられない」という人間はなんとなく分かる。

しかしながら何処でもやっていける所為で、病気になったとは皮肉な話だ。だから自慢になりゃしない。人にも勧めない。

(普段から気を遣って、割り切れていない人間は必要以上に自己啓発本は読まない方がいいと要らん助言をここに記す。)

そいつとまた顔を合わせなければならない。
利用している、とある施設に居て、必ず顔を合わせなければならない。どうしても、其処に行かねばならない用事があるのだ…そうでないのならもう二度と行きたか無い…。
そう思うと、胃痛が始まる。

そこまで怒り、気に病むことかと、自分でも不思議だったが、過去の勤め先で私にパワハラをしていた先輩と同じ臭いがした所為だと気付き合点がいった。

近頃、昔遭った理不尽のフラッシュバックが起こる出来事と遭遇してしまう。
十年も前のことだと言うのに、癒えていないらしい。上書きのために走り続けて、再び私は倒れてしまった。もうこのループから抜けたいと言うのに、前述したように、私は雇用される才能しかない。

要は器用貧乏なのだ。このつまらん言葉に集約され、私の手相が薄いことに自嘲する。関係ないかもしれないが。

責められようが、どこ吹く風、自分は悪くないと思ってる奴の方が長生きするだろうな、そう思いながら、次回そいつと顔を合わせることを再び憂鬱に思って、ここに愚痴愚痴と書いている。

お分かり頂けだろうか、謝罪一つで救われる心があるのだ。そして、自分の身も守れる。

胃には何もいないが、虫の居所が悪くなるところを見ると、何かしら居るらしい。私の感情の肩代わりしてくれる胃腸の何某かに労りの言葉を送りたい。

しかし、見つからない。

今何処……そう言う他無いか。

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