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おふざけSS

IFストーリーというか、完全にふざけて書いたSSです。内容は日和さんと正也が「キスしないと出られない部屋」に突っ込まれた話。
なんのこっちゃ!ってなるかと思いますが、診断メーカーに出てきたんだもん!
ゆるーいラブコメとして、どうかお楽しみください(震




真っ白な部屋の中に一つの扉。
そして、扉の上にでかでかとかけられた看板。

『キスしないと出られない部屋』

目を覚ました時にはそれが堂々とあり、寝ぼけた思考では上手く内容が頭に入らない。
それは隣の人物も同じであったようで、お互い顔を見合わせ、二人でその看板の内容を読み上げた。

「キスしないと」
「出られない部屋」

腕を組んで読み上げる日和の隣で正也が言葉の続きを口にする。
そして二人で再び視線が合った瞬間、二人揃って顔が急に熱を持つ感覚を覚えた。

(えっ……き、キス!?まさか、正也とですか…!?)
(全然展開が追いつけないんだけど……ひ、日和とキスをしろってこと…??)

文化祭で全校生徒の前でキスをしたことがある。
それでも翌日にはその件をネタにおちょくられたし、まだまだ恥ずかしがっている恋愛幼稚園児の日和。
対して、文化祭で全校生徒の前でキスをしたことがある。
でもそれは日和が他人から告白されたり、日和自身がまだまだ恋愛ごとには疎く心配だったから行っただけの正也。
二人の距離はそれから程々には近付いたものの、まだまだ甘い雰囲気を出すのは難しい。
日和はちらりと正也に視線を向ける。
高身長で長い腕と足、その先ではごつごつとした手があり、今や大人っぽさのある成長を遂げている。
でもその表情はそっぽを向いて見にくいながらも照れているらしく、少し頬が赤くなっている様子が見えて……日和は恥ずかしくなって、再び正也を視界に入れないようにする。
一方の正也も、ちらりと日和に視線を向ける。
出会った頃と比べれば少し大人っぽくなり、見せる表情は増えてころころと変わるようになった。
今は明らかに照れた様子で、そんな姿が可愛らしくもあり、長年待ち続けた姿だと思うと……正也は恥ずかしくなって、再び日和を視界に入れないようにする。
それから、互いに動けないまま時間だけが経った。

こんなもの、どうやっても指示されてできるものではない。
この部屋は誰も居なければ監視されている気配もない。
それでも、部屋の鍵だけはちゃんとかかっていて、脅迫を受けている気分にすらなる。
日和の心の中には沸々と、言い表せない怒りが湧いてきた。

どうしてこんなことに。
頭を悩ませる正也はこの部屋に入ることになった経緯を探る。
しかしどうしてこの部屋に巻き込まれたのか分からない。
しかも、日和と共に。
そんな日和は次第に表情が暗くなっていき、不気味な空気感を抱えている。
正也の心の中には次第になんとかせねばという焦りが湧いてきた。

そして。

「正也、私この部屋を作った人を探します!」
「日和、もしかしたら妖が原因かもしれないから待ってて」

再び顔を合わせ、二人が同時に声を重ねる。
ばちっ、と再び目が合って、二人揃って「っ…!」と引き攣った声にならない声を上げた。

「あっ、妖…?そ、それはなんというか……欲望の塊…?みたいな、ですね…?あっ、あの、でも、そういうことなら…正也に任せようと思います……」
「そっ、あの、人為的な可能性も確かにあるし……ご、ごめん。もう少し慎重になるべきなのかも……」

声を合わせた時にははっきりと話していた二人も、次第に頬を染めて萎縮していく。
そうして部屋の中は再び静まり返った。


それから数刻、二人は無言のまま部屋の中をうろうろしている。
どこかに怪しいものはないか、出入り口となる扉とかけられた鍵、妖の気配を探ったり抜け道がないか等。
この場に誰かが居ようものなら、『そのくらいの行動力があるならさっさとキスして出ろ』と言われそうな雰囲気すらある。
しかしどれだけ部屋の中をぐるぐるしても、大した収穫はない。
日和は困った表情を見せて正也に問いかけた。

「あの、正也……やっぱり出られそうな部屋は、あの扉だけのようです……」
「妖の気配もないみたい。となるとやっぱり……」
「……」
「……」

日和と正也は互いに見つめ合いながら、無言になる。
何度も頬に熱を持っては冷めてを繰り返したが、再び赤くなって……二人で固まる。
それからやっと距離が縮まって……――


***
「――っ!!……ん?……んっ??」

がばりと布団から飛び出すように正也は起きた。
やけに熱を持った頬と下半身、先程まで見ていた夢が頭の中を巡っては呻きたくなる。

(どうしてあんな夢見たんだ?っていうか日和まで巻き込んで、いや、それよりも……)

正也は大きくため息を吐きたくなった。
それは夢の中の自分があまりにも不甲斐なさ過ぎて。
いつか日和を困らせてしまうのでは、とすら思うくらい。
正也は今日一日、早朝から頭を抱え、ため息を幾度も溢すこととなる……。


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