ss小説

こぼれる。【SS】あじさいシリーズ/由佳と千歳シリーズ

まるで息をするように、彼女は彼女に恋をした。

 

 

「失礼します…」

 

昼前、校庭からは体育の授業に勤しむ生徒たちの声が遠くで聞こえている。
思春期の煩わしさとざわめきからほんの一瞬だけ、それらと自分とを隔離してくれる場所が保健室。
その保健室のドアをゆっくり空ける少女がいた。

樫木あおい。

校庭に面した大きな窓にはオフホワイトのカーテンがかけられている。室内に踏み出す歩調に合わ

もっとみる

この世界に産まれて

産まれてから1度も生に感謝をしたことがない。

私は迫害をされて生きてきた。
石を投げられたこともあった。

ただ1度も死のうと思わなかった理由は、
死と隣り合わせだったからだと思う。

確信が無いのは答えがない疑問であり、
私自身が興味のない話題であるからだ。

もっとみる

オカネ、お金、オモイカネ

「『お金が、欲しいです。』みんな、そう言うじゃないですか。」

「ええ、まあ確かに。実際、自分もほしいですよ」

「そうですよね。でも、真に考えたらお金そのものが欲しいわけではないんですよね、当たり前ですけど。物質的に考えたら只の紙とか小さなコインですよアレ」

「まあ、美術的価値を認めて欲しがる人もいますけど……大抵はそうではありませんよね」

「わたし、紙幣の価値というか、作り方にその通貨を使

もっとみる

(SS小説)犬

犬を轢き殺してしまった。

犬は突然飛び出して来たのだった。

私は犬種については全くの無知である。詳しく説明出来ないのだが、焦げ茶の中型犬であった。

この犬は誰なのか。

もう夕方である。

この犬をどうしようか途方に暮れた。倒れて動かなくなった犬を触りたく無かったので、少し悩んだが、放置して帰路に着いた。

犬を轢いたことで頭がいっぱいだった。それは何も考えていない時と同じで、車を降りて自宅

もっとみる

【300字SS】演者はどっち?

300字SS のお題に挑戦しました。『演じる』です。

----------

 君の考えは残念ながらお見通しなんだ。その伏せられた瞳の奥で、これなら同情をひけると考えているんだろう?
 君は想いを触れ合わせていると信じていた相手にふられたことに胸を痛めて、他にもいい人はいるから元気を出して、私はあなたの味方だからと言いたいはずだ。前回もその前もそうだった。
 実はこちらの用意した舞台だと知ったら

もっとみる

感情の共有

まだ離れたくないな、と思ってしまった。
 相手からすればただのわがままだ。しかも二人きりで出掛けたのはこれが初めて。それなのに求めすぎじゃないだろうか。

「どうかしたの?」

 口数が減っていたらしい。慌てて作り笑いを返して、本当に今日は楽しかったと改めて感想を伝えた。
 お世辞抜きに、ただ楽しかった。この人と一緒にいるととても心地いいし、多分「ピースがかちっと嵌まる」感覚はこのことを言うんだろ

もっとみる

SSカードメーカーを使って書いてみました。