〜だっせん〜ももたろうを追いかけたい ⑨ 桃太郎を2つの視点で見る #055
岡山の桃太郎について調べて9回目。前回は岡山桃太郎の元になった「吉備津彦命と温羅伝説」についてお話しました。
お話に入る前に、伝説、昔話、民話…など“伝承話ワード”について整理したいと思います。
1.伝承話ワードを整理します
これらを簡単に説明します。
民話…長い年月の中で伝承されてきた話。
神話…宇宙、人類、文化等の始まりを説く神々の話。『古事記』『日本書紀』など。
記紀…国家を統治するために編纂されたもの。
民間…記紀が各地に伝えられたもの。
伝説…家や村、木、石、淵などの事物に結び付けられ語られたもの。
昔話…架空の人物や場所を登場させ、時代を特定しない空想的な話。
本格昔話…人間が主人公。富や幸の獲得など、主人公の一生や成長過程の話。
動物昔話…動物、植物が言葉を交わし人間社会を風刺しているような話。
笑い話…笑わせることを目的としない話。
形式譚…昔話をせがむ子どもをウンザリさせる短い話。
世間話…怪談、うわさ話、狐や狸に化かされる話など。
今回は桃太郎を伝説と昔話、この2つの視点で見ていきたいと思います。
※伝説については、前回の記事に詳しく書いてありますので、良かったらお読みください。
2.伝説と昔話の視点
岡山には、①伝説を元にしたもの(鬼ノ城、吉備津彦神社etc…)、②昔話を元にしたもの(きびだんご、マスコットキャラetc…)があります。
①伝説を元にしたもの(詳しくはこちら)
②昔話を元にしたもの(詳しくはこちら)
※岡山県マスコットの「うらっち」は伝説に登場する「温羅(鬼)」。
岡山の桃太郎は、伝説と昔話がうまく調和し、私たちのご当地自慢として存在感を放っています。
3.伝説と昔話の共通点と相違点
これを検討することは、「岡山と桃太郎の関わりを探るひとつの手段」になると思います。
✴︎鬼退治は共通する大きな部分
✴︎温羅(鬼)について①
伝説『吉備津宮縁起』では、吉備津彦が温羅の首をはね、串刺しにても、土に埋めても呻き声が鳴り止まず、骨を吉備津神社のお釜殿の竈の下に埋めます。その後、温羅の霊が吉備津彦命の夢枕に出てくるのですが、それが吉凶を占う「鳴釜神事」となっています。
伝説『吉備津彦神社縁起』では、吉備津彦命は、命乞いをした温羅を助け、吉備国を治めさせます。
→伝説では、温羅を勧善懲悪にせず、敗者の意思も明確に存在しています。
一方、昔話では、鬼は勧善懲悪の存在です。
✴︎鬼のすみかについて①
伝説では、「鬼ノ城」が鬼の居城。
昔話では、海の向こうの「鬼ヶ島」とされています。
鬼ノ城は、現実的には7世紀後半の山城です。
鬼ヶ島は、香川県高松市女木町にあります。
✴︎温羅(鬼)について②
とても興味深い記述があったので紹介します。キーワードは「朝鮮半島と製鉄」。
製鉄技術は朝鮮半島からもたらされましたが、異国の人たちは、屈強で言葉も違い、すぐ住民に馴染むことはなかったでしょう。巨大な燃え盛る溶鉱炉の前に立つかれらは真っ赤な赤鬼のような形相だったかもしれません。
鬼を「温羅(うら)」と呼ぶことにも、朝鮮半島が関係している可能性があります。岡山の備中地方では陽の当たらない場所のことを「陰地(おんじ)」と言い、韓国語でもほぼ同じ意味で「운지(ウンジ)」と言います。
「裏(うら)」はジメジメとした忌み嫌う場所、「陰(おん)」は方角的にも鬼門。「温羅」がオンラ→ウラ(裏)になったかもしれないそうです。
✴︎ 鬼のすみかについて②
昔話の桃太郎は、室町時代に成立したと考えられています。室町時代の日本は、足利義満が明と勘合貿易を開始するなど、外国との貿易が再び盛んになる時代でした。
鬼のすみかを海の向こうにし、海上ルートで攻めるというを設定したことは、何か関係があるのかもしれません。
✴︎まとめ
桃太郎の類似話は世界にあります。これらの話が、海外とのつながりの中で、時代に合わせ変容し、伝承されてきたのだと考えられます。
※他にも多くの説があるのですが、私の記事ではここまでにします。また機会があれば、調べてみたいと思います。
読んでくださりありがとうございます。
桃太郎に関して、様々な方面から見てきましたが、まだ大きな疑問が残っています。それは、いつ、どのようにして現代のような「岡山県=桃太郎」になったのか…。
4.次回のこと、ミニおまけ
次回は最終回。前述の疑問について & 10回に渡り読んでくださったみなさんへ感謝の気持ちを込めて桃太郎のピアノ演奏をお送りしたいと思います♬♬
よろしくお願いします。
【ミニおまけ】
職場で、向日葵と撫子の種を植えました。今後の記事の中で、成長過程を紹介できたら良いなと思います。
プランターは、玄関に並べました。芽が出ますように…。
実は、私は花や野菜を育てるのあまり得意じゃないのです。きっと愛が足りない。
【参考文献】
『決定版 日本の民話辞典』日本民話の会編 講談社 2002
『桃太郎は今日も元気だ』おかやま桃太郎研究会編 岡山デジタルミュージアム 2005
『岡山桃太郎吉備津彦命の鬼退治』市川俊介 岡山リビング社 1988
『桃太郎は吉備国に実在した』福武一郎 倉敷出版社 昭和61年
『吉備津彦と温羅』阿村玲子 夏目省吾
『キビツヒコと温羅退治』吉備津神社 2010
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