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肥料袋のようなあいがた

冬の風物詩ともいえる、白鳥さんたちが今年も我が家の近くにやってきてくれた。

昔は、2階の自分の部屋から見えるのは、奥にあるはかしょ(墓所)と田んぼと堤防だけだった。
そんな村はずれにあるような家だったため、さほど街灯もなく、お盆の8月13日は、墓所に訪れた皆々様が残したろうそくの火が夜中まで燃えまくり、火の玉がゆらゆら動いているようにしかみえず、この日ばかりは暑くても窓をしめて幽霊にどこかに連れていかれないように、布団をかぶって寝ていた記憶がある。

そんな町はずれにあった我が家はいつのまにか、家の裏には各種病院、スーパー、カフェ、蔦屋まででき、一面田んぼだったところは住宅街となり、墓所も田んぼも堤防も見えなくなった。

さらに、こんなに土地がありあまっているのに、3階建ての家が建ち、朝日とともに目覚めていた快適な部屋は家と家の隙間から、季節によってラッキーに朝日がみえるうちになってしまった。ちなみに、駅前にタワマンができたようでしきりにテレビで宣伝しているのにもびびった。

すっかり都会的な雰囲気になった我が家周辺だが、そんな都会風をものともせず、毎年やってきてくれるのがじいちゃん流でいう「あいがたたち」

あいがたとは、あんたたちとか群れとなっている集団のことをいう秋田弁だが、群れてやってくる白鳥をみては

「あいがた、今年もようやってけだな~(白鳥さんよ~今年もよく来てくれた)」

と白鳥を見つけては目を細めて眺めていた。

昔は障害物も街頭もなく、一面田んぼで飛来し放題だったが、今は住宅街や学校の間に田んぼがある程度に縮小されたエリアに、かれこれ40年はやってきているように思う。

もう少し先に、大規模区画になってしまったが、広々として飛来しやすい田んぼエリアがあるにも関わらず、この狭苦しい場所にやってくる。

年末年始の帰省時は、白鳥パトロールに繰り出す。驚かさないようにそ~っと遠くから見つめる。今年も早速、白鳥さんたちに会いに行くぞと散歩し始めた瞬間、猛吹雪。体の周りを渦巻くように吹き付ける猛吹雪の中、白鳥スポットにいくと、白い肥料袋のようなものがごろんごろんとおいてある。

白鳥がいる場合、白いころんとしたボディーの先に細い首、くちばしがあって、お!いたいた!となるのだが、吹雪のせいもあって、肥料袋にしか見えない。

しかし、この真冬に肥料袋を置く必要があるのか。あまり近づくとびっくりして、逃げてしまう危険性はあるものの、もう少し近くで見られるスポットにいき、白鳥か肥料袋かどうしても確かめたかった。

すると、吹雪も少し収まったからか、肥料袋から細長いものがピコピコ出て来てるじゃないか!

かじかんだ手でスマホをもち、最大ズームにしてパチリ。

おお!やはりあいがただったか。

それにしても、障害物もなにもない田んぼの真ん中で吹雪から身を守るために、首を体に埋もれさせ、まるで肥料袋のようにコロンコロンしたあいがたたちがとてもかわいらしかった。

あいがたたちは3月上旬ころまで滞在する。

「あいがたたちがやってくるあの田んぼもいつか売られちゃうのかな」

といったら、近所のおばさんが

「あそこの田んぼ持っている人知っているから、売却情報もらったら声かけるわ」

あいがたたちのために稼がねばならなくなった2024年。

ちなみに晴れた日はみな首をのびのびさせて気持ちよさげだった。お近づきになりたいのをぐっとこらえ超望遠にて。


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