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無意識の欠片

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無意識の欠片を拾い集めて、言葉にする試み。 大切な人のすべてを受け入れるために、わたしはわたしのすべてを受け入れたいから。
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記事一覧

生けるものを愛おしむ(無意識の欠片#14)

今から思えば、あの瞬間だった。 生まれたばかりの息子を胸に抱いて、「彼は大切な存在なんだ…

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思い込みごと愛せるか(無意識の欠片#13)

わたしたちは大なり小なり思い込みのなかで生きている。 しつこい思い込みほど、かつての自分…

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並べてしまったらその瞬間、石ころになる(無意識の欠片#12)

やりたいことがわからない。 そう感じて久しい。 5年後、10年後といった大きな流れももちろん…

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同じ高さで(無意識の欠片#11)

卒乳についてのコミックエッセイを読んでいたら、ふいに泣けてきた。 搾乳しても20mLほどしか…

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あの日を認めたい(無意識の欠片#10)

たしか10歳の冬だった。 わたしはピアノコンクールに参加して、何の賞もいただけなかった。 こ…

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物語という奇跡(無意識の欠片#9)

小説を読まなくなった。 感情に飲まれるのがしんどくなったから。 物語の中の人物の不安にも焦…

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愛情の花束(無意識の欠片#8)

西加奈子さんの「通天閣」という小説を読んだ。 大阪の下町の人間味の強いどろどろとした世界のなかで、一筋の光となるのは「愛する」ことなのだと感じた。 「愛する」ことは、「生きよう」とすること。 そして、「好き」を伝えることは、「生きて」と伝えること。 自分と似た道を歩く人にしか、心を開いてこなかった。 違う道を歩く人に思慕の念を抱いたとしても、拒絶されると最初から決め込んでいた。 中学生の頃、成績や進学先を羨ましがられて、距離を置かれた記憶。 紙くずの飛び交うほどほどに荒

欠片は分裂する(無意識の欠片#7)

時折、ちらりと見せたくなる。 かつての自分が手にした肩書きを。 その話をするときだけは、母…

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成長の物語を塗り重ねる(無意識の欠片#6)

「最近、モロー反射へったよね」 夫に言われて驚いた。そういえば、しばらく見ていない。 モ…

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その本を手に取った理由(無意識の欠片#5)

本との出会いはいつだって、偶然に満ちている。 わたしがそういう集め方をするからだけど。 T…

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無重力な笑顔(無意識の欠片#4)

お昼寝から目覚めて、泣き始めた息子を抱き上げる。 生後4ヶ月にして、体重は8kgほど。成長曲…

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自分を否定する発作(無意識の欠片#3)

母はわたしの幸せを願っていない。 そう思ったことが何度もある。 そのせいか、今でもちょっと…

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ぬくもりを思い出した日(無意識の欠片#2)

物心ついてから、誰かに抱きしめられたのは、あれが初めてだった。 地下鉄梅田駅の改札前。 …

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優等生の名残(無意識の欠片#1)

「わからない」ことが不快だ。間違えることと同じぐらい、「わかっていない」と人に思われることを恐れている。それは優等生であることに居場所を見出した、小学校1年生のわたしの名残。 幼稚園の頃、いつだって言葉にならない欲望を抱えていた。もっと大人に注目されたい。特別扱いされたい。度のきつい眼鏡をかけていて、ひょろりと背が高く、声の小さな女の子。たくさんの元気な子たちであふれる幼稚園で、決して目立たないわたしは、大人の寵愛に飢えていた。 小学校にあがったとき、ルールが変わったのを