【掌編小説】小聡明い

「この女子アナ、ホントにあざといわ。絶対、カメラのないところでは口が悪いタイプ。あんたはこんな女にはなっちゃダメだからね」
「……」
    返事がないことが気に食わなかったのか母親は一瞬だけテレビから視線を外し、娘の方に目をやった。
「あんたスマホばっかりいじってたらバカんなるよ。そろそろ寝たら?」
    娘はスマートフォンを見つめたままこう返した。
「……あざといっていうのはママみたいな人のことをいうんだね」
「はぁ?」
    娘のスマートフォンの画面に表示された検索結果によれば、「あざとい」という言葉の本来の意味は、小ずるい、あくどい、図々しく押しが強い、といったものらしい。
「それ、どういう意味?」
「ううん、何でもない。もう寝るね」
    娘はそう言うと母親を残してリビングから出ていった。
    どうやら娘は母親と違ってただただ聡明なようだ。

















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