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酒呑童子説話の研究

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酒呑童子の中世説話について考えることをとおして、見せかけのおおいをとりはらった人間の姿を知る。https://wisdommingle.com/category/research… もっと読む
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2020年10月の記事一覧

「植槻八幡神社本 春日赤童子像」(奈良国立博物館所蔵(寄託))の模写

「植槻八幡神社本 春日赤童子像」 (絹本著色春日赤童子画像) (筆者: 清賢太輔公) (奈良国立博物館所蔵(寄託)) の模写 〔画中の文字 (旧字体)〕 晝夜各三変 擁護修學侶 龍華三會中 當見佛聞法 〔画中の文字 (新字体)〕 昼夜各三変 擁護修学侶 龍華三会中 当見仏聞法 (参参考文献: 古筆学研究所(編集) (1995年) 『古筆学のあゆみ (古筆学叢林 ; 第5巻)』, 八木書店, 214ページ.) (参考情報) 酒天童子(酒呑童子)と護法童子の類似性 h

神の音「乱声(らんじょう)」によって、カオスからコスモスへと変転・生成する

 若宮祭にも参勤する南都楽所の楽人であった狛近真(こまちかざね)による『教訓抄』巻一は、この乱声(らんじょう)を説いて次のように言う。 抑(そもそも)、神祇(じんぎ)先霊を祭る時、乱声(らんじょう)を発し神霊を驚かすは、天地を撥(はら)ひ王業を陳(の)ぶる古例たり。但(ただ)し、神は非礼を稟(う)けず、仍(すなわ)ち、五音七音の外、夷狄(いてき)の音を聞かざる故、正花の音(こえ)を以て乱声(らんじょう)を奏(そう)し、天下に和を致し、神分(じんぶん)となす。 続いて五

飯室谷の飯櫃童子霊石と、不動堂と、魔王堂と、慈忍和尚廟

比叡山延暦寺の横川地区(よかわ地区)の南東のふもとちかくにある、飯室谷(いいむろだに)の地区には、「飯櫃童子霊石」(ぼんきどうじ霊石)と呼ばれる岩があります。 飯室谷(いいむろだに)という名称は、飯櫃童子(ぼんきどうじ)が仙人の姿になって、慈覚大師円仁(じかくだいし・えんにん)に食事を提供したという伝説に由来します。 飯室谷は、比叡山延暦寺の回峰行(回峯行)の3つの流派のうちの、恵光坊流の回峰行の本拠地でもあります。 ちなみに、比叡山延暦寺の回峰行(回峯行)の3つの

葛川護法尊(護法童子)と、栂尾高山寺の護法神像と、春日赤童子と、制吒迦童子と、酒呑童子とのつながり

酒天童子(酒呑童子)と護法童子の類似性 現存最古の酒天童子(酒呑童子)の伝説(説話)が描かれている、香取本『大江山絵詞』(かとりぼん・おおえやまえことば)という絵巻物があります。 ぼくはいま、その絵巻物に描かれている酒天童子(酒呑童子)の伝説について研究しています。 その過程で、天野文雄さんの「「酒天童子」考」という論文に出会いました。その論文のなかの下記の文章のなかには、「酒天童子(酒呑童子)の姿と、葛川明王院の碑伝(ひで)に描かれた護法童子の姿が、よく似ている」と