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ハンドトラッキングはVRビジネスの可能性を広げるか

先週12/11よりVRデバイスOculus Questがバージョン12.0に更新された。今回の目玉はハンドトラッキング機能の追加だ。

これまでOculus Questは専用コントローラを両手に持たないと操作することができなかった。しかし新機能によって本体付属の外部カメラで手・指の動きがトレースされるようになり、何も持たず手ぶらで操作できるようになったのだ。

機能自体はごくシンプルだが、VR世界に「自分の手がある」(ように見える)というインパクトは絶大。動きを見ているだけで楽しくて、セルフじゃんけんを延々と続けてしまう。
はじめて3Dマリオが動かしたときのような、ゲームと自分の距離がまた一歩近づいたかのような不思議な感覚を覚えた。


この機能が活かされるのはどんな分野だろうか。――ゲーム方面よりもむしろビジネス活用を一気に促進される起爆剤になるように思えて仕方がない。
そう思ったきっかけは、先日参加した「VR/AR/MR ビジネスEXPO2019 TOKYO」だ。

不動産業界(新居の内覧)や、飲食業界(店内オペレーションの教育)など幅広い分野での活用事例が紹介されており、数年前にはちょっとしたゲームアプリだけだった展示会がここまで活用分野に広がりを見せるようになったのかと感動させられた。

ビジネス活用の具体例として、実際に試した安全教育とVRの組み合わせを紹介しよう。「はしご上での作業には危険がつきもの」という教育資料に載っていたら読み流してしまいそうな内容がVRで体験できるという。

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VRデバイスをかぶるとそこは倉庫の中。在庫整理が目的だ。はしごを登り、右手にはバーコードリーダーを装備。
音声ガイドに従って正面から左、右と指定のダンボール箱のバーコードに機械をかざしていく。すると1箱分遠いダンボールのバーコードもチェックするよう指示がきた。
ガイドの言うことだからと手を伸ばすと……、ガラガラッとはしごが転倒し、そのまま落下。大惨事を起こしてしまった。

あくまでVR世界での話だが、あまりの恐怖体験に「自分ごと」にしか思えなかった。きっと教育効果は絶大に違いない。


けれどもそこで同時に感じたのは、一般ユーザーが体験するうえでの壁だ。ビジネスとして活用するということは、普段ゲームを遊ばない人たちを当然相手にしなくてはいけない。

VRデバイスという不格好な代物はもちろん、コントローラ1つとっても大きな障害だ。コントローラを握って、たくさんあるボタンの位置を一から確認するという作業は億劫だし、普段ゲームをやらない人にとってはなおさらだ。
先日VR体験会を自ら開催したときも、この億劫さはコントローラを握るプレーヤーからはもちろん、ボタン位置を教える私自身さえも強く感じた。
どれだけ教育効果が高いと言われようと、導入する企業も、それを体験するユーザーも、コントローラを握ると聞いた時点で自分と関係ないものというレッテルを貼ってしまうかもしれない。


しかしそこにきて登場したのが、ハンドトラッキングである。

ボタンの感触やコントローラの振動がないのでしばらくゲームアプリでの活用は限定的なものとなるだろうが、ビジネス活用なら話は違う。コントローラが必要ないというだけで、一般ユーザーとの距離がグッと近づく。
来年の「VR EXPO」にはコントローラがなくなっているかもしれない。

ハンドトラッキングの登場は、いつかくる一人一台VRの時代をも予感させる大きな一歩だ。

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