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PMBOK第7版 - 第6版からの主な変更点

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(本記事は2021年10月に書いています)

世界中のプロジェクトマネージャが参考にしている(?)といわれるPMBOKですが、
今年、大幅に改訂されて第7版になりました。

日本語版は10月までリリースされないようなので、英語版を取り寄せてちょっとづつ読み始めています。
あまりに第6版からの変更内容が多く、ちょっと途方に暮れています。
これまで作った研修資料も、大幅に修正しないとまずそう。
とはいえ、すごくわかりやすく、かつ実践的になっているので、この改訂は良かったと思います。
何歳になっても学び直しが必要ですね。

ということで、今回は、現時点で私が把握できている、第6版から第7版への主な変更点についてまとめてみたいと思います。

おことわり:
・本資料は、執筆時点(2021-10-04)の最新情報に基づいて作成しています。
・内容には十分注意をして作成しておりますが、記述に誤りがあったり、今後変更が発生する可能性があります。
・特に、PMP試験を受験しようと考えておられる方は、必ず最新の情報をPMIから入手するようお願いいたします。
・文中の日本語は、英語版の原文を著者が独自に翻訳したものであり、今後PMIから出版される公式日本語版とは訳が異なる可能性があります。

PMBOKの変遷

まず、1996年に初版がリリースされてからの、PMBOK の変遷を確認しておきましょう。以下からわかるとおり、これまでおよそ4年ごとに改訂されてきました。
「知識エリア」と「プロセス群」のマトリックスが完成されたのが2004年にリリースされた第3版。
その後、小修正を繰り返しながら現在に至ります。

1996年 初版
2000年 第2版
2004年 第3版

        - 9つの知識エリアと5つのプロセス群
2008年 第4版
        - 2プロセス追加、2プロセス削除、2プロセス統合
2013年1月 第5版
        - ステークホルダー・マネジメント追加(10の知識エリア)
        - 5プロセス追加
2017年9月 第6版
        - アジャイル開発に関する記述追加
        - 3プロセス追加、1プロセス削除

そして、今回2021年にリリースされたのが第7版です。
これまでにない、とても大きな変更だと言えると思います。

PMBOK 第7版のリリース状況

この第7版ですが、リリース状況は以下のような感じ。

2021年7月:
        - 英語版PDF(370ページ)が PMI のサイトで公開中
        - 英語版書籍は8月から Amazon で購入可能
        - 定価 US$99.00
        - 内容は PDF と同一
        - Kindle版もあり
2021年10月:
        - 日本語版PDFがリリースされる予定
2021年11月:
        - 日本語版の書籍が発売される予定

本日(2021年10月4日)時点で、まだ日本語版の PDF はリリースされていないようです。
(2021年10月7日追記: ちょうど10月4日にPMI日本支部の方から日本語版PDFが公開されていたようです)

第6版から第7版への変更ポイント

以下、私が第7版の英語版を読んで感じた、主な変更ポイントを上げてみます。

1. 「プロセス重視」から「原理・原則重視」へ
2. 「インプット・ツールと技法・アウトプット(ITTO)」の記述が無くなる
3. 「成果物」から「価値(価値提供)」に焦点が移った

        - “Value is the ultimate indicator of project success.”
        - 世界中のプロマネは、これまで以上に「価値提供」を求められている
4. 「10の知識エリア」「5つのプロセス群」のマトリックスが無くなる
5. 「12の原則」と「8つのパフォーマンスドメイン」が新たに登場

個人的な感想も入れつつ簡単にまとめると、
・プロセス文書を作ることが目的になってしまっていないか?
・「本当に役に立つ」プロマネになろう!
・世の中の変化やプロジェクトの多様性に対応しよう!

というようなことでしょうか。
もっと世の中に価値を提供できるプロマネになろう、という気概をドキュメント全体から感じます。とても良い傾向だと思います。

第7版の全体構成

これまで述べてきたように、第7版では、「知識エリア」x「プロセス群」、というマトリックスから、以下の形に全体の構成が大きく変わりました。

(図は PMBOK 第7版 1.2 RELATIONSHIP OF THE PMBOK GUIDE AND THE STANDARD FOR PROJECT MANAGENEMT より引用)

図1

上の図のように、
「8つの業務領域(Project Performance Domains)」に対し、
「12の原則(Principles of Project Management)」がその行動指針を与える
という構成になっています。

プロジェクト・マネジメント標準(12個の原則)

以下は、前半の「プロジェクト・マネジメント標準(The Standard for Project Management)」の章立てになります。

1. はじめに
2. 価値提供のためのシステム

        - 価値を創る、組織ガバナンス体制、…
3. プロジェクト・マネジメントの原則
        3.1 勤勉・敬意・優しさを持った世話役であれ
        3.2 協力的なプロジェクトチームの環境を作る
        3.3 ステークホルダーとの効果的な連携
        3.4 バリュー(価値)にフォーカスする
        3.5 システムの相互作用を認識・評価し、対応する
        3.6 リーダーシップを発揮する
        3.7 文脈に適したテーラリング
        3.8 プロセスと成果物に品質を組み込む
        3.9 複雑さを乗り越える
        3.10 リスク対応の最適化
        3.11 順応性と復元力を手に入れる
        3.12 想定される未来を達成するための変革を行う

これら、3.1 〜 3.12 が「12の原則」
プロジェクトマネジメントを実践していく上で重要な、12個の"Principles(原理、原則、主義、方針)" がまとめられています。

どれもとても興味深い内容です。
今後少しずつ、これらの原則について実体験を交えながら解説していきたいと思っています。

プロジェクト・マネジメント知識体系(8つのパフォーマンス・ドメイン)

そして、以下は、後半の「プロジェクト・マネジメント知識体系(PMBOK Guide)」の章立てです。
(実際はこの後に Appendix が続きますが、ここでは割愛します)

1. はじめに
        - PMBOK Guideの構成、「PMBOK Guide(このページ)」 と「プロジェクト・マネジメント標準(前ページ)」との関係、…
2. プロジェクト・パフォーマンス・ドメイン
        2.1 ステークホルダー
        2.2 チーム
        2.3 開発アプローチとライフサイクル
        2.4 計画
        2.5 プロジェクト作業
        2.6 デリバリー
        2.7 測定
        2.8 不確実性
3. テーラリング
4. モデル、メソッド、ツール(Artifacts)

2.1 〜 2.8 が「8つの業務領域」
どれもプロマネなら馴染み深い言葉が並んでいるのではないかと思います。

PMP試験への影響

最後に、PMP試験<https://www.pmi-japan.org/pmp_license/>への影響についてちょっと書いておこうと思います。
これまでの PMBOK 改訂と PMP 試験への内容反映のタイミングからの推測になりますが、
2022年1月〜2月頃から、PMBOK第7版に対応した内容で出題されるようになるのではないかと予想します。
ということで、これまで第6版の内容で勉強してきた方は、早めに申し込んで2021年中に受験してしまった方が無難なように思います。

一方、いい機会ですので、第7版ベースで学習を進め、試験内容が第7版対応に切り替わった後で試験を受けるという考え方もあるかと思います。
個人的には第7版の方が読んでいて楽しいですし、第6版までに書かれていた細かいITTOの内容(このプロセスのインプットはどれか、など)は覚えなくて良くなる可能性があるかもしれません。

もちろん、PMBOK全体が大きく改訂されてしまったため、出題の傾向が大きく変わってしまい、試験の切り替え直後は合格しにくくなってしまうというリスクもあるかもしれません。
このあたりは受験生それぞれが自分に合った戦略を選ぶ必要がありますね。

まとめ。

(1) 2021年7月に、PMBOK第7版(英語版)が公開されました。日本語版は3ヶ月ほど遅れて2021年10月に公開される予定です。

(2) 第7版では、第6版にあった「10の知識エリア」「5つのプロセス群」がなくなり、「12の原則」と「8つのパフォーマンスドメイン」が登場しました。第7版では、「プロセスそのもの」よりも、「原理・原則」を重視することで、現代のような変化の激しい状況においても、きちんと「価値(VALUE)」を提供できるプロマネになることが期待されているように思います。

(3) PMP試験には、2022年始めくらいからPMBOK第7版の内容が反映されるように予想します。これから受験される方は、どのように対応するか自分にあった戦略を立てることが必要になりそうです。

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(ここに書かれている内容はいずれも筆者の経験に基づくものではありますが、特定の会社・組織・個人を指しているものではありません。)

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