ICOは、地方公共団体の新しい資金調達法になるか?


 岡山県西粟倉村は、ICO(イニシャル・コイン・オファリング)による資金調達を行なうと発表した。
 同村は、岡山県の最北東端に位置し、兵庫県や鳥取県の県境に接している。面積の約95%が山林で、2018 年5 月1 日現在、人口が1,470 人、598 世帯が暮らしている。

 ICOとは、つぎのようなものだ。
 ブロックチェーンを用いて行う事業を将来実施する。それが提供するサービスを利用するためには、そのシステムの中だけで用いることができる特殊なコインが必要とされる(「トークン」と呼ぶ)。そのトークンをサービスの開始以前に売り出して、開発資金を調達するのだ。
 投資家にとっては、将来そのサービスが使われることになれば、トークンの価値が値上がりするだろうから、いまそれを購入することで利益を期待できる。

 ICOは、これまでベンチャー企業の資金調達手段であったIPO(Initial Public Offering:新規株式公開)に代替する資金調達手段になる可能性がある。
 IPOでは、信用力が低いと、必要な資金が調達できなかったり、利回りが高くなってしまう。
 ICOなら、集めた資金に配当などを支払う必要はない。投資側から見ても、少額から購入でき、購入したトークンを転売できる。

 海外では、国や地方公共団体によるICOは、数多く計画されているし、すでに実施されたものもある。
 2018年2月に、ベネズエラペトロ(Petro)と呼ばれる仮想通貨のICOを行なった。この仮想通貨は、同国の石油などを担保としたものだ。初日に7億3500万ドル相当を集め、話題になった。
 また、世界有数のIT国家であるエストニアでは、エストコイ(Estcoins)と呼ばれる仮想通貨の発行してICOを行なう構想を持っている。
 さらに、スペインからの独立問題がくすぶるカタルーニャが、独自の仮想通貨のICOを検討しているとの報道もある。また、イラントルコが検討中との報道もある。

 地方公共団体レベルのICO計画もある。アメリカ、カリフォルニア州バークレー市は、ICOによる資金調達を行う予定だ(Initial Community Offeringと呼ばれている)。調達した資金は、学校、橋梁、道路の建設などのインフラ整備や、住宅建設などに充てられる。
 韓国のソウル市は、独自の仮想通貨「エスコイン」発行によるICOを検討している報道されている。

 西粟倉村の場合、調達した資金は、事業開発などを行い、持続可能な地域づくりを展開していくという。
 このトークンは、Nishi Awakura Coin(NAC)と呼ばれる。その保有者は、西粟倉村で立ち上げる事業に投票することができる。

 ICOは、地方公共団体の新しい資金調達法になる可能性を秘めている。ふるさと納税よりずっと健全な方法だ。

 ただし、その実施は、簡単なことではない。なぜなら、これは寄付集めではないからだ。
 また、打ち出の小づちが登場したわけでもない

 この資金調達法を長続きさせるためには、投資者に経済的利益を与える必要がある。
 トークン(コイン)が値上がりすれば利益が得られるというが、トークンは自動的に値上がりするわけではない
 値上がりするには、そのトークンが必要とされる事業が収益をあげなければならない

 したがって、どんな事業を行なうのかどうすればそれが収益を挙げられるかを考えなければならない。例えば、新しいタイプのリゾートサービスを提供することなどが考えられるが、その計画が十分に具体的なものでなければならない。
 これがポイントである。それがなければ成功しない。

 また、規制がかかる可能性がある。
 エストコインのICOに対しては、ECB(欧州中央銀行)のドラギ総裁が、「ユーロ圏の各国は独自に通貨を作り出すことはできない」とし、ユーロ圏の通貨はあくまでもユーロであると明言した。

 日本で地方公共団体がICO を行なおうとしても、地方債の代替手段であるとして、総務省や財務省から問題視されるかもしれない。


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野口悠紀雄

経済最前線

日本経済最前線、世界経済最前線、AI(人工知能)、ブロックチェーン、仮想通貨、フィンテック
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