IT時代の「超」整理法:検索を制するものは知を制する

◇GREP検索を用いていた時代
 IT時代になって、扱う情報は紙情報ではなく、ディジタル情報(電子的な情報)になってました。ディジタル情報を扱う場合に重要なのは、検索のテクニックです。
 検索のテクニックとしては、まずウェブにある資料のどのように検索するかという問題があります。これについては、『超「超」整理法』(講談社、2008年)で書きました。 以下では、自分が作った資料やドキュメントの検索について考えたいと思います。

 『「超」整理法』(中公新書、1993年)を書いていた頃に用いていたのは、GREPという検索アプリです。これは、複数の文書を横断して検索してくれるアプリで、極めて便利でした。これによって検索をする時期が、かなり続きました。
 ところが、文書の数が多くなってきて、これでは収拾がつかなくなってきました。
 GREP検索の大きな問題は、1つの単語しか検索キーワードとできず、「and検索」ができないことでした。このため、十分な絞り込み検索できなかったのです。そこで、捜索するファイルの範囲を限定することになりますが、限定してもあまりに多くの対象がヒットしてしまうのです。
 その後、Googleが「デスクトップ検索」というサービスの提供を始めました。私も暫く使っていたのですが、あまり使い心地は良くありませんでした。このサービスは、2011年に中止されています。

◇Gmailをアーカイブにする
 その後いつの頃からか、私の基本的なアーカイブはGmailの送受信記録になっていきました。
 Gmailは日常的な事務連絡に使っていますし、その他のメールが大量に入ってきます。このため、一見したところ文書のアーカイブには適してないように思われます。
 しかし、私の場合、Gmailには、アーカイブとして極めて大きな利点があったのです。それは、すべての原稿がGmailの記録に残されているということです。しかも、「記録に残す」という特別の操作をしなくても、自動的に残されているのです。なぜなら、私が書いた原稿は、すべて出版社にGmailで送信されているからです。
 つまり、私の「電子オフィス」は自動的にできていたことになります。私はあるときにこのことを明確に意識して、驚嘆しました。そして、その感激を『クラウド「超」仕事法』(講談社、2011年)に書きました。

◇見事に雑音を排除できた
 ところで、上に述べたように、Gmailには、日常的な事務連絡や「お知らせ」「広告」の類のメールが大量に入っています。とくに問題なのは、ウエブ記事の宣伝メールで、そこには、私が原稿で使っているのと同じ単語が大量に入っているのです(例えば、金融緩和だとか、ITだとか仮想通貨だとか)。これらは、私が原稿を引き出す際に、きわめて迷惑な雑音になります。「金融緩和」などというキーワードで検索しても、あまりに大量の宣伝メールがヒットしてしまって、私の原稿のメールを見つけ出すことができないのです。

 私の原稿だけを送信するアカウントを作ろうとも思ったのですが、それも面倒でした。また、こうすると、「ポケット1つ原則」を破ることにもなります。
 ところがこの問題は、ある検索の方法を見つけ出したことによって解決されました。
ディジタル時代の「超」整理法」 で書いたように、原稿中のキーワード(例えば「金融緩和」)と、送り先出版社の編集者の名、そして「原稿」という言葉を検索語にすれば、きわめて強力な絞り込みができることが分かったのです。
 とりわけ重要なのは「原稿」という言葉で、これによって宣伝記事等をほぼ完全に排除できました。

 「原稿」という言葉は、後から検索するために付け加えたものではありません。それまでの習慣で、送り状に「原稿をお送りします」と必ず書いていたために、自動的にメールについていたのです。送り状をつけていたのは、習慣に過ぎません。しかし、結果的にはこの言葉によってきわめて多くの雑音を排除することが可能になりました。そして、Gmailの記録を極めて貴重なアーカイブに変身させることができたのです。
 これがなければ、Gmailは単なる事務連絡の手段でしかなかったでしょう。

 なお、メールの記録を検索するのに、タグは役立ちません。また、メールをスレッドにされると検索の効率が低下します。検索をするとそのスレッドを指定してするので、その中のどこにあるかわからないからです。

 ところで、PCに残っている記録は、検索が面倒なので、後になってからはあまり使いません。
 ただし、作業している間は使っているので、ファイルを取り出すために、その並べ方は重要な問題です。これについては、「ディジタル時代の「超」整理法」 で書きました。ウィンドウズOSのデフォルトで「名前順」という全く役に立たない順序になっているのは、MTF(Move to Front)の考え(「「超」整理法の思想」)から言って、大きな問題です。

◇「捨てる」のは、事実上不可能な作業になった
 ここで、「捨てることから、検索することへ」という大転換が起きたのです。

 「いらないものは捨てましょう」という「ノウハウ」は、無意味なものだと言いました。そこで言ったのは、「何が要らないかが容易に判別できない」ということです。
 実は、理由はそれだけではありません。AI時代になると、捨てるのが簡単なことではなくなってきたのです。
 それは、極めて大量の情報が生産されるからです。上で述べたGmailのことを思い出してください。私のGmail受信記録には、宣伝メールのような形で、すでに大量の雑音が入ってしまっています。これらは明らかに捨てるべきものなのですが、これらを捨てることができるでしょうか?
 どんな方法でやるにしても、大変な作業になるに違いありません。それに、仮に削除できたとしても、それによって検索の効率が飛躍的に向上するわけではありません。せいぜい期待できるのは、検索した結果の画面に関係のないメールが大量に表示されて嫌な気持ちになるのを軽減できる程度です。そんなことのために時間を使ってはいられません。

 紙情報の時代には、不要なものが残っていると保存場所がなくなってしまうので、しようがなく「不要なものを捨てる」作業をやっていたのですが、AI時代には、保存のための容量の制約が、事実上なくなりました。この面から見ても、捨てることの意義は低下したのです。

 ただし、「不要と分かっているものを捨てないでため込んでおく」というのは人間の本能に反することなので、決して容易ではありません。私もその本能を完全に克服したとは言えません。
 「捨てる努力をやめて、検索を容易にすることに努力する」というのは、AI時代における整理に関して、大変重要なことです。このテーマについては、機会を改めて述べたいと思います。

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野口悠紀雄

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