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「超」整理日記(第805号):営業自粛要請と補償はセットか?

◆ 営業自粛要請と補償はセットか
  緊急事態宣言期間が延長されようとしています。
 問題は、予想していたとおり、長期戦になりました。

 本稿執筆時点では、営業自粛の範囲がどのようになるのか分りませんが、完全に解除されることはないでしょう。
 
 これについて 「営業自粛要請と補償はセットだ」と言う考え方が主張されています
 これまでも言われてきましたが、延長にともない、ますます重要な問題になります。

 これは、極めて難しい問題です、以下で、これにつき考えることにしましょう。

◆ 公共の福祉の下での自由
 まず第一に、営業の自由といっても、どんな場合にも無制限の自由が認められているわけではありません。
 憲法第13条は、「公共の福祉に反しない限り」という制約を加えています。

 いまコロナウィルスの感染を抑制するのが、公共の福祉の観点から要請されるのは明らかです。
 もし、どんな事業も自由にできるということになれば、感染が拡大し、その事業さえもできなくなってしまうでしょう。
 したがって、営業の自由に一定の制約が課されることは、社会全体の立場からだけでなく、その事業の立場から見ても合理的なことです。

 そして、憲法第29条は、「財産権の範囲は法律で定める」としています。
 いまの場合には、感染症対策の特別措置法がそれを定めているということになります。

◆ 法律論で言えることには、広範な合意がある 
 法律論で言えるのは、ここまででしょう。
 まとめて言えば次のとおりです。

 公共の福祉のために、政府や自治体が営業自粛を求めることがある。
 ただし、それによって生じる損害に政府が全く関与しなくてよいわけではない。

 逆に、営業自粛要請と補償が完全にセットでなくてはならないという理由もない。
 
 負担を分かち合わなければならないのは当然だ。だから、自粛も必要だが、政府による手当も必要だ、ということです。
 ここまでは、多くの人が認めるでしょう。

 実際、政府は何もやっていないわけではなく、10万円の一律給付金や持続化給付金などの政策を行っています。
 ただし、それらが十分でないのも明らかです。

◆ 問題は、「どれだけの自粛が必要か?」
 以上は基本的考えしか明らかにしていません。
 実際に問題となるのは、「どれだけの自粛が必要か?」です。

 これは、法律論では答えられない問題です。
 原理原則論や理念でなく、計算が必要です。
 どの程度の自粛を求めればどの程度の効果があるか?などの計算が必要なのです。
 いま国会で行われている議論では、このプロセスが抜けています。
 そして原則のぶつけ合いしかなされていません。これは不毛な議論です。

 もちろん、立場によって政策の評価は異なるでしょうから、民主的な討論の結果、合意を求めていくことが必要です。
 客観的なデータに基づく政策評価の上で、民主的な討論でどこまで合意を形成できるかが問われているのです。

とくに難しいのは、「どの範囲に、どの程度」
 経済的に損害を受けているのは、直接に営業自粛の対象になっている事業者だけではありません。それに関連する業者も大きな損害を受けています。

 これは政府が指摘していることなのですが、政府は、「だから補償ができない」と結論しています。
 しかし、これは、おかしな論理です。これでは、「問題が難しいから対処できません」ということになっていまいます。自らの能力のなさを露呈することになってしまうのです。

 政府は30 万円給付金撤回で、哲学のなさを露呈しました。
 いまの論理も説得力を欠いています。 



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